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Parallel Frontier  作者: 双晴 捺鬼(ふたば なつき)
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第4章 知力の果てに

兄鬼が言った。「1フロアクリアだ。残り49……長い戦いになるな」千歳は兄鬼を見て、小さく笑った。「でも、みんなでなら大丈夫だよ」クローネは静かに杖を下ろし、ルミナは満足げにガンをホルスターに戻した。2フロアから48フロアまでの道のりは、知力と精神の極限試練だった。各フロアはテーマごとに分かれ、謎解きを解かないと次の階段が現れない。戦闘も避けられない——謎を解く過程で召喚されるガーディアンや、時間制限内に解けないと出現するエネミーが容赦なく襲いかかる。2~10フロアは「論理とパズル」の領域。鏡の部屋で光を反射させて道を開くフロア、巨大なチェス盤で駒を動かしてチェックメイトしなければ進まないフロア、古代文字の碑文を解読して正しい扉を選ぶフロア。間違えると毒ガスや落とし穴、召喚されるゴーレム型モンスターが襲ってくる。11~20フロアは「数学と幾何」の領域。複雑な数式を解いて鍵を生成したり、立体パズルを回転させて正しい形に合わせたり。時間制限が厳しく、遅れると影のようなアサシン型モンスターが無音で迫る。21~30フロアは「言葉と物語」の領域。神話や寓話を題材にした長文の謎、嘘つきと正直者がいる村の論理パズル、詩の一節から隠された意味を読み解くもの。解けないと幻惑系のモンスターが現れ、味方同士を攻撃させる幻覚を仕掛けてくる。31~40フロアは「記憶と観察」の領域。一度だけ見せられる複雑な図形を完全に再現したり、短い時間で部屋の細部を記憶して後で再現したり。失敗すると過去のトラウマを再現する精神攻撃モンスターが出現し、プレイヤーの動きを封じる。41~47フロアは、それまでの総復習のような複合フロア。複数の謎が連鎖し、戦闘も激しさを増す。グループのHPは減り続け、ポーションも底をつき始めていた。千歳の着物はあちこち裂け、兄鬼の肩には傷が残る。クローネの魔力も限界に近く、ルミナのガンもオーバーヒート気味。それでも、互いに声をかけ合い、知恵を絞り、なんとか進んだ。そして、48フロアに到達した時——突然、壁が開き、広々とした休憩エリアが現れた。黒曜石の壁に囲まれた円形の部屋。中央に泉のような回復スポット、周囲にベンチと簡易ベッド。システムメッセージが優しく響く。【休憩エリア到達。HP/MP全回復。48時間滞在可能。】グループは一瞬呆然とし、それから安堵の吐息を漏らした。誰もが床に座り込み、またはベンチに倒れ込んだ。千歳は兄鬼の隣に座り、肩を寄せた。「……疲れた……」兄鬼は鬼面を外し、苦笑い。「ああ。でも、ここまで来れたのはみんなのおかげだ」クローネは静かに泉で魔力を回復しながら言った。「残り2フロア……ボスフロアでしょうね」ルミナはベンチに腰掛け、穏やかに微笑んだ。「少し休んでから行きましょう。まだ時間はあるわ」生存者たちは互いにポーションを分け合い、傷を癒やし、簡単な食事を取った。仮想世界とはいえ、疲労感は現実と同じように体を蝕んでいた。千歳は兄鬼を見て、小さく呟いた。「兄鬼……次のフロア、怖いけど……一緒にいてくれてよかった」兄鬼は千歳の頭を軽く撫でた。「ああ。俺もだ」休憩エリアの柔らかな光の中、生存者たちは短い休息を取った。十分に回復した後、グループは再び階段を上った。49フロアは、意外にも何もなかった。ただの長い螺旋階段。壁に刻まれた古い文字がぼんやりと光るだけで、モンスターも謎解きも一切なし。「トラップか……?」兄鬼が警戒しながら刀を構えるが、何も起こらない。クローネが静かに言った。「最後のフロアへの前哨……精神を休ませてから本番に臨ませる、ということかしら」千歳は少し不安げに兄鬼の袖を掴んだ。「……なんか、逆に怖い」全員が緊張を保ったまま、ゆっくりと階段を上りきる。そして、50フロア——最上階。広大な円形闘技場のような空間。中央に、巨大な鉄色の牙を剥き出しにした四足の獣型モンスターが鎮座していた。体長15メートルを超える鋼鉄の体躯、牙は剣のように鋭く、背中には鉄の棘が無数に生えている。名前は——The Iron Fang (ジ・アイアン・ファング / 鉄牙の覇獣)深智の黒曜塔の最終守護者。知力の塔のボスでありながら、純粋な力と耐久力で圧倒する存在。通常の戦法——謎解きで弱点を突く、状態異常で動きを封じる——は一切通用しない。鉄の体は魔法を弾き、物理攻撃もほとんど通らない。グループが散開し、戦闘開始。兄鬼が先陣を切り、長い刀で突進。しかし、Iron Fangの爪の一撃で吹き飛ばされる。捺鬼の二刀連撃も、鉄の皮膚を浅く削るだけ。クローネの氷魔法は弾かれ、ルミナの重力砲弾も装甲で受け止められる。Iron Fangの咆哮が部屋を震わせ、棘を飛ばす範囲攻撃でグループのHPが一気に削られる。「このままじゃ全滅だ……!」兄鬼が歯を食いしばる。捺鬼の鬼装も発動したが、紅蓮の炎すらIron Fangの鉄体を溶かせない。時間切れで解除され、千歳は膝をついた。グループは追い詰められ、半数が戦闘不能に近い状態。その時、重装の巨漢アバターが前に出た。名前はガント。タンク職のトッププレイヤー。二つ名「不動の鉄壁」。巨盾と重槍を構え、スキルを発動させた。「Taunt Skill — 『不滅の咆哮 (ふめつのほうこう / Indomitable Roar)』!!」Iron Fangの視線がガントに集中。巨体がタンクに向かって突進し、牙を剥く。ガントは盾で受け止め、足を踏ん張って耐える。地面がひび割れ、衝撃波が広がるが、ガントは一歩も引かない。「今だ! 隙を作った!」Iron Fangの背中が完全に無防備になった。兄鬼と捺鬼が同時に飛び込む。兄鬼の長い刀が首筋を、捺鬼の二刀が逆鱗らしき部分を深く斬りつける。ルミナとクローネが遠距離から支援射撃と氷魔法で追撃。Iron FangのHPゲージが初めて大幅に減る。しかし、まだ倒れない。Iron Fangが体を捻り、ガントを振り払おうとする。ガントは重槍を構え、最後のスキルを叫んだ。「Pierce Skill — 『絶鉄の穿孔 (ぜってつのせんこう / Absolute Iron Piercer)』!!」槍がIron Fangの胸の核を直撃。鉄の装甲を貫き、内部を突き刺す。Iron Fangが最後の咆哮を上げ、巨躯が崩れ落ちた。【The Iron Fang 討伐】【深智の黒曜塔 踏破】部屋中央に、光の柱が現れる。塔のクリア報酬——本来ならオリジナルアビリティが得られる場所。しかし、ゼロ・リセットの介入により、何かが変わっているはずだ。グループは息を吐き、互いに肩を叩き合った。ガントが巨盾を下ろし、疲れた笑みを浮かべた。「……やったな、みんな」千歳は兄鬼を見て、ほっとした笑顔を見せた。「兄鬼……クリアしたよ」兄鬼も頷き、千歳の肩を抱いた。「ああ。お前たちのおかげだ」クローネとルミナも静かに微笑む。だが、喜びは束の間。光の柱から、赤いウィンドウが展開された。ゼロ・リセットの次のメッセージが、待っているに違いない。深智の黒曜塔——最初の試練は終わった。残り四つの塔、そして神座エテルノヴァ。生存者たちの戦いは、まだ続く。



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