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0009 水の神殿

バスから見える景色はとても綺麗だ。

日光で水がキラキラと光っていて、湖の魚が水路を優雅に泳いでいる。

そしてこの水の色に合わせるように町の建物の色も全体的に青い。どこをみても青ばかりだ。

顔に当たる冷たい風もとても気持ちよく、快適に進めている。


進んでいくにつれて、神殿が視界を大きく占めるようになっていく。

近づくまでわからなかったが、この神殿とんでもなく大きい。きっとこの神殿だけで町の10分の1は占めているだろう。

そもそもこの街がとても広い。それこそ遠くから見たらこの神殿が大きく見えないほどだ。


少しすると、近くに建物などがなく、すべての水路の行き着く先である大きな水の広場にたどり着いた。そしてこの広場に面しているのが神殿だ。


バスから降り、神殿を改めて見る。

大きな柱で構成された建物でいかにも神殿という見た目だった。大きな入り口の柱に手で触れると、ひんやりとしていてツルツルしている。

神殿は全体的に大理石でできていて、隅々まで綺麗にされている。


神殿の中を見ると多くの観光客で賑わっている。

神殿の奥にはこの神殿で祀られている水神の像があった。

何か惹かれるものがあり、近づこうと神殿の中に入る。観光客の間を通って像の前まで向かう。


像の前までたどり着いた時、自分が何に惹かれていたのかを理解した。


「この石、加護と似たような力を感じる…」


水神の像が持っている杖についている大きな石、青く光り輝いているその石を見た時体の中の何かが反応した。

反応したそれが加護と同じ力を持っているものだということは、瞬時に理解できた。


「この石が気になるのですか?」


石をまじまじと見ていると、後ろからこの神殿で働いている人だろう女性が話しかけてきた。ここで勤めている人なら、この石について詳しく知っている可能性が高い。聞いてみるか。


「はい。この石はどんな石なんですか?」

「この石は500万年前、この湖ができた時に水神様が作られたものと伝えられています。この石があるおかげでそれ以降この地で、水系統のスキルの成長が早くなり、この地に住む人の中で水系統のスキルを授かる人が多くなったとされているのです。それらのこの街への貢献から、私たちは神石と呼んでいます」


話を聞いて納得する。

この街が水の街と言われている理由は、湖の上にあるだけじゃなかったんだ。

この街は水神が作った街なんだ。


きっとここの街なら加護についてわかる。そう確信し、早速尋ねてみる。


「加護についてお聞きしたいんですが…」


加護、という言葉を聞いて女性の表情がぴたりと固まる。

そしてまるできてはいけないものを見たかのような恐ろしい顔で僕のことを見る。


「わかりました。ついてきてください」


女性に連れられて神殿のさらに奥へと向かう。

さっき一番奥に感じていた水神の像があった場所は、全然奥ではなかった。

像の近くになった扉から奥へ行くと、そこから先にあったのは神殿と同じ場所とは思えないほど綺麗な中庭と池だった。


「すごい…綺麗だ」


中庭と池に見とれているうちにも、女性はどんどん奥へと進んでいく。

後ろ姿から早く来い、という圧を感じたので急いでついていく。


しばらく進むと大きな噴水のある大広間につき、そこには玉座のような綺麗な青色の椅子があった。


「ここでしばらく待っていてください」

「はい」


女性がどこかへと走っていき、大広間には僕一人だけになった。


大広間をあらためて見渡す。この大広間は全体的に青色で作られていて、水が至る所から流れ出て真ん中にある噴水へとつながっている。

大広間の壁は水が滝のようにどこも流れていて、水の壁というような感じだ。


噴水へと近づき、噴水の中を覗き込む。

噴水の水はキラキラと輝いていて、水路の水と同じような輝きを見せていた。


この街に流れている水は本当に綺麗だ。どのぐらい美味しんだろうか。

試しに噴水の水を飲んでみようかと手を入れようとしたその時だった。


「お待たせしてしまってごめんなさいね」

「うわっ!」


後ろから突然声をかけられびっくりしてしまい、噴水の中に落ちてしまった。

体は水でびしょびしょになり、噴水の周りの床にも水が飛び散った。


声をかけてきた人は優しそうなお婆さんで、噴水に落ちた僕を見てふふふというように笑っている。それに対して隣にいる僕を連れてきた女性は、面倒ごとを増やしやがってというふうにコチラを見てくる。


替えの服とタオルを用意してもらい、着替え終わると再びおばあさんに話しかけられた。


「あなた、加護について知りたいんですって?」

「はい、加護のことをもっとよく知りたくて」

「あら、そう。あなたどこで加護を知ったの?」

「え?」


お婆さんに聞かれて、あることに気づく。

よく考えれば加護なんて言葉は手に入れるまで聞いたこともなかった。もしかしたら、神殿の人たちしか知らない神様に密接に関係したものだったのか?


その予想を裏付けるように僕を連れてきた女性が、僕を睨みつけている。

そうか。この人が加護という言葉を聞いて表情を変えたのは、そういうことだったのか。それなら納得だ。


「あなた、加護を持っているわね?」

「えっ、こんな奴が持っているというのですか…?」


お婆さんはどうやらわかっているみたいだ。

それにしてもこの女性はさっきから僕に失礼じゃないか?


「はい。僕は水神の加護というのを持っています。なので加護についてもっと知りたいんです。教えていただけませんか?」

「本当に持ってるんだ…」


女性が僕の話を聞いて目を見開いて驚く。

本当に失礼だな、この人。


「いいでしょう。その前にどのようなものなのか、教えていただけませんか?私たちもよくわかっていないことが多いのです」

「どういうことです?」

「加護というものを授かった人は今までにあなたを含めて2人にしかいないからです」


加護というものがそれほど貴重なものだということを知らなかった。

これからはあまり人に言わない方がいいな。


それからお婆さんに加護について僕がわかっていることを全て伝えた。


「なるほど。私たちが知らないことばかりですね。そうすると私がお教えできるのは1つだけですね」


そう言ってお婆さんは一冊の本を僕に見せる。

その本は「聖書」というような見た目の本だった。


お婆さんは僕にその聖書の中の1ページを見せた。

そのページに書かれていたのは、加護についてのことだった。


「加護は信仰する心でどこまでも強くなる…これ、本当ですか?」


ページの中に大きく太字でそう書かれていた。

信仰している心で加護はどこまでも強くなれる。だとするなら、加護を複数個持つのは良くないのではないだろうか。


やっぱりもう経験値返納しない方がいいのか?


『返納はしてほしいし、加護の複数所持も問題ないです。それと信仰で強くなるのは本当ですよ』


頭の中に直接、何かが語りかけてきた。


『やっぱり具現化した方がいいですね』


頭の中で何者かがそういうと共に、大広間の玉座が眩しい光を放った。

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