0007 水壁の使い方
フランさんと結ばれた後、僕たちは朝ごはんを食べて今後のことについて話し合った。僕はもう少ししたら旅に出る。
だからフランさんを連れて行くかどうか話し合ったのだ。
話し合いの結果、フランさんにはこの街に残ってもらうことになった。
今の僕の強さではフランさんをきっと守りきれない。もっとt強くなったら迎えに行くということで話はまとまった。
そんなわけで僕はもっと強くならなきゃいけない。
だから今日も平原で訓練をすることにした。
平原に着き、スキルの実験の準備をする。
今日実験するのは水壁だ。この前手に入れてからまだよくわかっていないスキルだが、すでにいろんな可能性を感じている。
実験する前にとりあえずスキルを発動してみる。
「水壁」
唱えると前回同様、目の前に大きな水の壁ができた。
このスキルでわかっているのは、衝撃を受けると硬くなって衝撃を通さなくなるが、普通に壁の中には入れる、通り抜け可能ということだ。
そんなわけで早速実験を始める。
最初に試すのは、どのぐらいの衝撃なら防げるのか、という実験だ。
水に思いっきり衝撃が加わると硬くなるということなのだから、衝撃が加わったところから波のように水の壁全体に衝撃が伝わり、水が硬くなると考えられる。
それなら衝撃が加わる面積が小さければ小さいほど、伝わる波の大きさが小さくなり防げる衝撃が小さくなるのではないか、と思ったわけだ。
簡単にいうと、ハンマーよりも、剣で刺したり矢で撃っている方が壁を貫通しやすいのではということだ。
そもそもこの水壁を使う場面は遠距離攻撃やハンマーなどの衝撃系攻撃を防ぐためのものだと思うから、剣の差し攻撃には用いないと考えて今回は矢で試してみる。
水壁を使い水の壁を目の前に出し、僕は少し離れたところから水の壁に向かって矢を放つ。
この実験のために弓と矢を購入してきた。
とはいえ、弓なんてあまり使ったことがない。とにかく、力一杯水の壁に打つことを意識して、矢を放った。
そこそこ上手くいき、矢はまっすぐ水の壁に向かって飛んでいく。
矢が水の壁にぶつかると、水の壁の中へと矢が進み、水の壁の中で矢が勢いを失い底へと沈んでいく。
やっぱり水の壁にぶつかる面積が小さいほど防ぐ性能は弱くなるみたいだ。
一応、矢は水の壁の中で止まっているが素人の矢で中まで入っているんだから実戦の時は貫通してくると思った方がいいだろう。
確認のためにハンマーで水の壁を思いっきり叩く。
ハンマーは水の壁に弾き返され、手から離れて飛んでいった。
うん、このスキルは衝撃系の攻撃と魔法遠距離攻撃を防ぐために使えそうだ。
魔法なら接触面積がどうしても大きくなるから、かなり強い魔法を撃たれない限りは防げそうだ。
もう一つ実験しようと準備をする。
もう一つの実験というのは、水の壁だったら水の魔法をぶつけたらどうなるのかというものだ。
水に勢いの強い水をぶつけたら、水がぶつかって弾けるのか、それとも水の壁に合体するのか、貫通するのか。
どれもありえるため、やってみないとわからない。
そんなわけでさっきの水の壁に向かって水撃を放つ。
「水撃」
放った水撃は勢いよく水の壁へと向かっていき、水の壁の中へと入っていった。
バーン
何が起こったのかわからなかったが、水の壁の奥にあった木が倒れた。
木へと近づくと木は折れ、折れた部分が水で濡れていた。
「そうか、水の壁を通ると水撃の威力は上がるのか」
どうやら水の壁の中へと入った水撃は、水の壁の水を取り込んで威力を上げてこの木を折ったらしい。
相手の水系統の攻撃には増幅してしまうから、防御には使えない。
それよりも水の壁を通り抜けた水撃は威力が上がるということの方が大きい。水撃以外の攻撃でも水系の攻撃なら威力を上げれる可能性が高い。
防御というよりも攻撃面で強そうなスキルということがわかった。
これだけでこの実験をした意味はあった。
早速使ってみるかと近くにいたフットラビットに向けて、水壁と水撃を合わせた攻撃、強化水撃をぶつける。
強化水撃は近くにいたフットラビットまでも巻き込み、一撃で3体を葬った。
さらに放った先にあったはずの草はなくなり、地面がむき出しになっている。
「こりゃやばいな…」
きちんとコントロールできるようにしようと、強化水撃の練習をすることにした。
練習を始めてから、3時間が経過した。
ひたすら強化水撃を放ち続け、色々と新しくわかったことがある。
1つ目は、水壁は壁を作る場所をある程度選べるということだ。
頭の中でここにおきたいとイメージしてスキルを使うと、10m範囲の場所ならどこでも壁を作れるようだった。もし、複数壁を作れるようになったら囲んだりもできそうだ。まあ、普通に通り抜けれるんだが。
2つ目は、水の壁のサイズは自由自在ということだ。
これが正直一番衝撃だ。水の壁は地面に接して出すだけじゃなく、空中にも作ることができるのは知っていたが、そのサイズを変えられるとは思わなかった。
サイズがどこまで自由自在なのかというと、5m×2mを最大として0.3m×0.3mまで小さくすることができる。最小サイズなら手のひらに乗るレベルの小さなものだ。
当たり前といえば当たり前だが、大きい方が防げる面積が広い。
でもどうやら、大きい方は防げる衝撃が小さくなるようだった。
まあ、衝撃を受けた部分から端まで波がたどり着くのに時間がかかるのだからそりゃそうなのだが。
逆に最小サイズの水壁なら、大抵の衝撃は防げるみたいだった。指で通り抜けることもできない。その代わり小さいから当たらないんだろうけど。
試しにやってみようと、水撃を最小サイズの水壁に向かって放ったら、水撃が壁にぶつかって弾き飛んだ。攻撃に使うという意味では普通ぐらいのサイズの水壁を使うのが良さそうだ。
大きいほど衝撃に弱く、小さいほど衝撃に強い。
普通より少し小さくしただけで水撃が貫通しにくくなった。
いずれ最小サイズの水壁を通る水撃を打てるようになったら、とんでもない威力になっているんだろう。
いつの間にか日は沈もうとしている。
今日はフットラビットを3体しか倒していない。
換金するのは明日でいいか、と家へと帰った。




