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0002 神の気まぐれ

フェートが経験値返納の特典として水神の加護を手に入れた頃、神界では…。


「喜んでくれてるみたいじゃな。これなら加護を与えた意味があったんじゃないかのう?」

「そうですね、次はあなたの番ですよ。きちんと準備しておいた方がいいと思いますよ」

「そうじゃなぁ、どんな加護にしようかのう」


土神と水神の2人が話しているのは、今まで「経験値返納」のスキルを手に入れてた人間の中で最も経験値を返納してくれた子の話だ。


今まで「経験値返納」を手に入れた人間は精神を病み引きこもる、親に恥晒しだと言われて殺されてしまう、みたいに経験値を返納する以前に経験値を得られなかった。


そもそも経験値というのは、私たち神が経験値というものを頑張りに応じて渡し、その経験値を使ってそれぞれの神からスキルをもらうという人間と神の間の通貨のようなものだ。


そして「経験値返納」のスキルというのは元々、前の代の主神が遊びで作ってしまったものだ。このスキルは他のスキルとは違い、スキルツリーが作られていなく効果は頑張った褒美である経験値を神に返納するというスキル所持者からすれば、なんの得もないスキルだ。いや徳はあるか。


そんなギャグを思いついている場合ではないのだった。


その「経験値返納」のスキルについて前の代の主神が引退する時に話し合われた。

まあ、前の主神が引退するきっかけになったのが、このスキルなのだが。

全ての神が集められる神界会議が久しぶりに開かれ、そこでこのスキルについて色々と決められた。


一、このスキルを削除することはできないため現主神を神界から追放する

一、このスキルを手に入れた者は魂に祝福を入れて、次の人生で強いスキルが手にいれられるようにする

一、もしこのスキルで多くの経験値を返納する者が現れた場合は、一定の経験値返納ごとに神から加護を与えることとする

一、与える加護は強力すぎるものではないこと

一、与える加護にはスキルツリーを設け、スキルを経験値にて獲得できるようにすること


この5つの決まりが新しく「経験値返納」について決められた。

最後の項目は経験値をスキルツリーに使って返納してもらえなくなるから、一人の神で加護が終わるような気がするのだが、それならそれで経験値はこちらに返ってくるので問題ないというわけだ。


そもそも経験値をなんの得もなく返納し続けるような人はスキルを手に入れるのではなく返納し続けるのでは、という我々の予想でもあるのだ。


そしてとうとう今日経験値返納が1000を超えた人間が現れた。

そのため、神の中から水の女神である水神が選ばれ加護を与えることになった。スキルツリーは基本水系のスキルのものとと似たり寄ったりらしいが、せっかくだからと専用のスキルを入れたらしい。


「わしの出番が来るのかはわからんがな。まぁこやつならやるかもしれんか。ハッハハッハッハッ!」

「土神の次はあなたですよ、契約神」


そう言って水神がこちらを向く。


彼女のいう通り、土神の次は私が加護を与える番だ。

とは言っても水神のスキルツリーを全開放するためには、経験値が10万くらい必要らしい。そして土神が加護を与える返納量まであと9000、私の場合は99000ある。


私が加護を与えるより、確実に水神のスキルツリーを解放してる方が手っ取り早く強くなれる。だからきっと私のところまで経験値が返納されることはないだろう。


「契約神や、あやつなら10万ぐらい返納しかねんぞ。きちんと準備はしておけよ。いざという時に大変になるからな」

「流石にこないのではないですか?」

「いや、あやつならやれるぞ。何せ1000年の逸材だからな」

「そう、ですね。私も作っておきます」

「それがいいと思います。私なんか急いで準備しましたから、凝ったスキルを差し上げられませんでしたの。もっといいスキルを作れたかもしれないというのに」


水神の言っていることが現実になったら大変なことになるが、言いたいことはとてもわかる。


前の代の主神がこのスキルを作ってから、下界では1000年という時間が経っている。1000年間の中でこのスキルが与えられたのは100人ぐらい。その中の99人は経験値を返納してくれなかった。だが、この子はたった1人経験値を毎日返納し続け1000という経験値を返納したのだ。


だから、神たちの間でこの子は「1000年の逸材」と呼ばれている。

普通のスキルを授かっていれば、きっと今頃大成しているだろう。

その分、これから楽しく過ごしてほしいと思うのは仕方がないことだと思う。


「それでは土神、水神、私は先に失礼します。早速作ってきます」

「そうか、わしもそろそろ完成させんと不味そうじゃしな。わしも失礼するぞ」

「私はこの子の様子を観察していますね。何かあったら修正しないといけませんし。まあ多分大丈夫だとは思うのですけど」


観察するという水神を残して、私は土神と部屋にもどる。


「契約神はどのぐらいのボリュームの加護とスキルツリーを作るんじゃ?わしは水神の1.5倍ぐらいにしようと思っているんじゃが」

「えっ、同じではなく増やすのですか?同じでも相当大変だと思いますが」

「せっかくじゃからな。一つのスキルツリーでできる限りいろんなスキルを手に入れさせてあげたいからのう」


土神が1.5倍のボリュームで作るとするならば、必要経験値量は15万。同じようにするとすれば私の場合は22万ぐらいということ。


水神と比べると2倍ぐらいのものを作る必要があるということになる。

それはなかなか厳しいものがあった。


ただでさえ私の管轄内のスキルは少ない。

新しいスキルを作ることはすでに確定している。とはいえその作るスキルをもっと増やすのは流石に辛いものがある。


「私は自分のペースであげたいものを詰める感じにしていくので、どうなるかはまだ…」

「まあ、それが一番じゃな。ゆっくりやる方がいいことには変わりないからのう。わしの場合はもうあまり時間がないから急がなくてはだがのう」


あの会議から作り始めていた土神でさえ、今ギリギリと言っている。

私もかなり力を入れて取り組む必要がありそうだな。


「それでは土神、お互い頑張りましょう」

「ああ、頑張るんじゃぞ」


土神と別れ部屋に戻った私は、早速スキルの一覧を開いて作業に取り掛かった。

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