第五話 会議
横文字いっぱいですが、サルブール卿とサルグミーヌ卿を覚えればOKです。
サルブール城に、レディング、ニドゥルヴィエ、アンランの領主とその騎士団が集結した。その三人の領主たちは、元より新しきアルジャン女公ジュリー支持を表明していたので、当然と言えば当然であった。
そのような中で、中立を保っていたランガット領主からサルブール卿宛に書簡が届いた。
早馬でやってきたその書簡には、“新アルジャン女公ジュリー・ド・ブルゴーニュを支持する”と書いてあった。
ランガットを始めとし、新アルジャン公にユーリアを支持する者が今後増えるかもしれない、とサルブール卿ミッシェル・ド・サルブールは思った。
サルブール卿は円卓にサルグミーヌ卿、ハンバッハを始めとするユーリア支持の領主たち、新アルジャン女公ユーリア、ユラン伯を集めた。
「――サルブールにて、敵を迎え撃ちます」
サルブール卿がそう言うと、サルグミーヌ卿も領主たちも、おお、と感嘆の声を出した。
「……持ちこたえられますか?」
ユーリアが問うと、サルブール卿は「もちろんでございます」と答えた。
「では、サルブール卿を信じます」
ユーリアは澄み切った美しい声で言った。
その美しい声には、初老の男たちを鼓舞する力があった。
「サルブール卿たちに一つお願いが」
ユーリアが続けて言った。
「何でございましょう?」
サルブール卿が言うと、ユーリアは比類なき紫色の瞳をサルブール卿たちに向けた。
「噂を流して欲しいのです。――リュクサン公妃の裏にレグザゴン王国がある、と」
サルブール卿は、ユーリアの言葉を聞いて、茶色の目を見開いた。サルブール卿は大人びているが、嫁入り前である新アルジャン女公を幼さが残る少女の如く扱っていた。
――裏工作を考えるほどの乙女だとは。
サルブール卿は虚を突かれた思いをした。
「レグザゴン王国が裏に、でございますか」
サルグミーヌ卿が感心したように言うと、ユーリアは「このことはサルグミーヌ卿も考えついているようなことかと」と言って、謙遜した。
「いえ、お若くしてそのようなことを考えつかれたこと、感心しております」
更にサルグミーヌ卿に言われ、ユーリアは紫色の瞳を瞬かせた。
「誰か、目立ちにくい騎士にでも紛れさせましょう」
ユラン伯が言った。
「その件につきましては、お任せください」
サルブール卿がそのように言うと、ユーリアは「では、頼みましたよ」と言った。
ユーリアの紫色の瞳は揺るぎなかった。
次の課題が決まった支配者たちは満足げな沈黙をしていたが、その沈黙をサルブール卿の騎士が勢いよく入室したことで、破られた。
「サルブール卿!」
「どうした、ルブベルよ」
ルブベルと呼ばれた騎士は、息を切らせながら言った。
「ナンシーに送っていた斥候の者が早馬で戻ってまいりました! リュクサン公の兵がサルブールへ向かっております!」
支配者たちは目を合わせた。ついに来たか、とサルブール卿は思った。
ナンシーからサルブールまで軍隊の移動であれば、五日はかかる。斥候は早馬を使って移動するため、その日のうちに辿り着く。
リュクサン公の軍隊がサルブールに到着するまであと四日である。
サルブール卿はランガット軍が早く辿り着くことを願った。




