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第二十五話 合流と出発

 夜の暗闇の中、ランタンを灯した馬車が止まった。

 ユラン伯は馬車から降りてくる人影が己の妻であることを確認すると、ゆっくり近づいた。


 ユラン伯夫人アンヌ・ド・サルグミーヌは近づいてくる人影が夫であることに気付くと、小さく息を飲んだ。そして、次の瞬間には走り寄り、その胸に飛び込んでいた。


「あなた! 神様……感謝いたします」


 アンヌは、もう会えぬかもしれぬことを覚悟していた。だが、夫と再び会うことができ、歓喜した。アンヌの目から涙が零れた。

 ユラン伯は胸に飛び込んできた夫人をしっかりと腕で抱き留めた。


「アンヌ、無事で何よりだ」

「子どもたちも無事です。ユルシュルさんに助けてもらいました」

「そうか、ユルシュルには礼を言わなければ」

「ええ、無事に再会できて嬉しゅうございます」


 言葉を交わす二人を包む空気は、再会の喜びに満ち溢れていた。

 だが、それを破るように、ユラン伯の後方にある馬車から、涼やかで美しい声が届いた。


「――二人とも、再会を喜び合っているところ悪いが、もう行かなければなりません」


 それは、新しきアルジャン公の声だった。


「――ユラン伯夫人、そなたには苦労を掛けます」


 その言葉にアンヌは一礼し、澄んだ声で答えた。


「殿下、とんでもございません。夫と過ごす機会をくださり、心より感謝申し上げます」


 アンヌの心からの声に、ユーリアは少し虚を突かれた様子で、しばし黙っていたが、「道中は、三週間は掛かります。困ったことがあったら、すぐに言ってください」と言った。


 アンヌは、深く頭を下げた。ユラン伯とユラン伯夫人は、お互い腕を離しあった。ユラン伯はアンヌから腕を離す際、名残惜しむかのように、アンヌの額にそっと唇を落とした。

 アンヌは視線をそらさず、その温もりを胸に刻むかのように夫を見つめ返すも、元いた馬車へ戻った。


 ユラン伯はユーリアのいる馬車の扉を開け、馬車の座席に腰かけた。その時、馬車が軋む音がした。

 ユーリアはユラン伯の動作と馬車の軋む音を静かに見守っていたが、やがて口を開いた。


「こちらの馬車へ戻ってきてよかったのですか?」

「はい、こちらで良いのです」

「職務熱心なのは感心ですが、家族と過ごさなくて良いのですか」


 ユーリアの紫色の瞳がランタンの灯りで煌めいて見えた。


「この旅で家族と過ごす機会が増えましょう。しかし、今は貴女様のお側を離れるわけにはいきません」


 ユラン伯がそう答えるのを、ユーリアは黙って聞いていた。彼女はただ目を瞬かせただけだった。


 本来、ユーリアの側にいるべきナタリーは、アンジェリクと共に側仕え用に用意した馬車にいた。


 この旅の始まりで発覚したのは、ナタリーが乗り物酔いをしやすい体質だということだった。


 ユーリアの乗る馬車には、ユーリアとユラン伯だけが乗車している。

 ユラン伯は御者に出発するように伝えた。


 出発した馬車の揺れはそれなりに激しく、これからの旅路が平坦でないことを静かに物語っていた。

この時代、

家族愛<<<<<<<騎士道的な愛

であると共に、

主君によく仕えることは家族を守ることに繋がりました。

ユラン伯がユーリアのそばにいることは正しいことなのです。

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