9話
そう吐き捨てた瞬間、どこからともなく若い女性がその場に現れた。
「まぁまぁ。『龍の血脈』同士、できるだけまぁ、派手にお願いしますよ。あ、進行を務めますアストリッドと申します。よろしく」
まるでカジノのディーラーのような服装をした、アストリッドと名乗ったその女性は、その場の空気など我関せずといった様子で全員と握手。にこやかな笑顔は、異質といえるほどに邪気がない。本人も楽しんで今、ここにいる。
「……」
相変わらずリンドグレンは言葉を発さずに、全体を睨むのみ。もし変な真似をされたら。首を刎ねるつもりだったが、それもない様子。
ひとつ咳払いし、アストリッドは自身の役割に移っていく。
「じゃ、確認です。合図はこの闘技場のある市、カーロヴァのコインを投げます。地面についたら開始ってことで。勝利条件は相手チームの戦意喪失、もしくは死亡。できれば後者でお願いします。死体は高く売れますんで」
怖い言葉を、これまた屈託なく言い切った。むしろ、その状況を想像して興奮までする。一番近くでそれが見れる今の仕事。自分に合っている。
長寿である龍の子孫。血の濃さによっては二百年も生きる場合もあるという。『龍の夜』は各地で行われているが、死ぬまでやるケースはそれほど多くない。だからこそ、その死体というものは。もし発生した場合、活きのいいまま死んだ龍は、このあとのオークションで法外な値段がつく。
この闘争に参加できるほどの濃度をもつ者達は、条約で保護されており、血液から肉の一片まで企業で活用することは不可能。ただ死体は別であり、有効活用することはむしろ推奨されている。薬や軍事など、様々な方面において数十年単位で研究を進めるためである。
独占、寡占することにより、他社を上回る。そこからいつしか『龍の夜』で死んだ龍のみを活用可能、とする国際法まで出来上がった。濃度ギリギリではなく、より濃いものを求め、日夜目を光らせている。
そして今夜。特に高い地位にある一匹が舞い降りることになったわけで。




