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12話

「今日もキミはなにもしないつもりかい?」


 闘技場から数キロ離れたビルの屋上。地上ではそれほどでもない風が、死の気配を纏って吹き荒ぶ。その中で、ひとりのコートを着た少年が笑う。視線の先にははっきりと。今日のメインである人物達が見えている。


 話しかけられたのは少女。黒い制服に身を包み、パラペットに腰掛けながら、同じ方向に目を向けている。当然、彼女にも四人と一名の審判は確認できている。


「必要ない、と言われてしまってね。やれやれ、相手にも申し訳ないと思ってはいるんだよ、これでも」


 黒髪が揺れる。言葉には諦めの色が混じっていた。一応、反論は弱めにはした。つもり。でも決定権は委ねているから。それに従っただけ。無駄な争いはあまり好まない。


 いつも通り。とはいえ、彼らが『龍の夜』に呼ばれることなどほとんどないから。いつも、と言っていいのか少年にはわからないでいる。


「なるほど。だけど、勝負の世界に『絶対』はない、そうだろ? シシー・リーフェンシュタール」


「そうだね。だから一応、彼には伝えているんだけどね。ケンカするのもよくないだろうから、彼に任せてるよ」


 シシー、と呼ばれた少女は、今死地にいる仲間を気にかけた。もし彼が死んでしまったら。きっときっと悲しむだろう。一週間は食事も喉を通らないかもしれない。でも「いらない」と言われたから二つ返事で「わかった」と返した。あっさりと。


「勝率はどれくらい? エイリーク、かなり残忍なチームで相当やると思うけど」


 その名前は少年も知っていた。『龍の夜』で対戦した相手は、例外なく全員死んでいる、ということ。中々対戦カードを組むことがある意味で難しい。ただ、龍の死体を量産する点では企業からは重宝されてもいる。


 自軍と相手の戦力。それを冷静に。分析して。シシーは指先を動かす。


「まぁ……こちらの九九パーセント勝利、というところかな。なにもなければ、だが」


 この先の流れ。全て見える。そのように物事が進むのならば、なにも心配などいらない。

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