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11話

 しかしトゥルッカは四でいいと言う。


「無駄に解放したくないんだ。あと、一分以内に勝負がつかなかったらこっちの負けでいい。そっちに有利な追加だ。文句ないだろ」


 人数的にも。解放率的にも。他にあれば。いいよ。


「理由を聞いていいかい? それ次第だ」


 ラグナルは冷静に問う。もちろん相手がいいならそれでいいのだが、あまりにも。あまりにもナメられている。自分達は『エイリーク』。少なくとも。危険な生物の群れであることは間違いない。


 まるで台本にでも書かれていたかのように、スラスラとトゥルッカは答える。


「簡単だ。それ以上やるとここ一帯が更地になる。それは困るだろ?」


「つまりはあれか、てめーは最初から手を抜いてやる、って言ってんのか」


 ウールヴルは腕組みをし、必死に怒りを堪える。血走った目でギロっと睨んだ。


 その視線にもトゥルッカは淡々と。


「そうだ。それ以外にあるか? そっちも死にたくないだろ。俺もこれ以上侵蝕のスピードを早めたくない」


 つまり。雑魚に余計なリスクは負いたくない。そういうこと。節約。省エネ。


 ギリギリまで我慢していたウールヴルだが、一歩前に出ながら怒りを噴出させる。


「てめッ——」


「オーケーオーケー。わかった、気を使ってもらって悪いね。いい勝負にしよう。それと審判さん、こっちも追加で」


 それを制したのはラグナル。さらに提案を上乗せ。そっちが許されるなら。こっちもいいだろう?


 なんだか盛り上がってきている。アストリッドもちょっとワクワク。


「はい、なんでしょ」


 龍の中でも。頂点に君臨する存在。その筆頭候補。彼の仕合を任されているだけで末代まで誇れる。かもしれない。


 ふぅ、と一瞬だけ思考したラグナル。迷い、はない。


「十二パーセント、といったけど二十五パーセントまで引き上げる。さっさと終わらせたほうがいいみたいだし」


「——おい」


 その発言。爆発寸前だったウールヴルですら。ドクン、と心臓が跳ねた。危険。ということはわかっているはず。チームで最も冷静で沈着な男だから。だからこそ。そこまでしないと、と判断したということに。それをやってしまうと、こっちも危険だということに。


 うーん、とアストリッドは顔色を窺う。


「そうなると、終了後の投薬の値段もハネ上がりますけど。いいんですか?」


 単純に倍、ということではない。数倍、数十倍かもしれない。それだけ抑制には金や技術の結晶が必要だということ。


 龍化を抑える薬。闘争のあとには必ず必要になってくる。そのまま放置してしまえば、時間経過と共に完全に龍になってしまうから。そうなると。どうなるかわからないが、少なくとも本人の自我はなくなり、死んだものとして進んでいく。


 そんなことはラグナルにもわかっている。だが、問題は。ない。


「この子を殺せばお釣りがくる。それで払うさ」


「……かまわねぇよ、殺す」


 一瞬躊躇したウールヴルだったが、後ろ向きな考えは捨てた。勝てば。殺せば生き残れる。シンプルに世界を構築してみた。


 リンドグレンはただひと言。


「問題ない」


 それだけ。いつものように。今までのように。なにも問題はない。やる。殺る。変わりない。


 殺気、は感じる。だがそれすらもトゥルッカには心地よい、程度のもので。


「こっちも。それでいい。早く終わらせる」


 キミがここにくるまで。待ち続けるから。







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