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01

 三千大千世界の中に魔界というものがある。魔力という混沌の力で形作られた、光が一つもない漆黒で、物質のない世界だ。


 延々と時を刻むだけの暗黙は時の流れという変化を受け、やがて小さな光が生まれた。




 それが悪魔の始まりらしい。




 悪魔というのはとても雑な生命体だ。種族というには烏滸がましいほど、共通点がなかった。意思を持った魔力の塊が、悪魔と定義されている。大雑把すぎる。


 魔界に発生した意思の塊は暗黒空間に満ちる魔力を糧にすぐに進化する。その時点で個性が生まれ、後は他の悪魔を食らって独自の進化形態を突き進むのだ。




 俺も実際にそうやって成長してきた。


 黒塗りの機械的なフィルムをした凡そ生命体に見えないような姿の俺も、定義上は立派な悪魔と言える。


 まぁ周囲からは異端だの異形だのと呼ばれているので、自分がマジョリティじゃないのはよく知っている。




 他者と違うという点で言えば大抵の悪魔が魔界の中に、星と呼ばれる自信の領域を作る。それは過ごしやすい空間という意味もあるが、外敵に対しても有利に働く悪魔にとっての要塞だ。


 俺はそれを作っていない。だからその事を揶揄して放蕩と呼ばれたりしていた。


 別に自分の星を作る行為を否定する訳じゃないが、俺個人として大して意味のない行為だと思っている。




 何故かって、簡単に壊れるからだ。


 俺の周りを通り、星として構成されていた魔力が残滓となって暗黒空間へと回帰していっている。


 あえて壊そうと思った訳じゃない。戦いの最中に攻撃の余波で勝手に壊れるほど脆いのだ、星とは。




「また派手にやりましたねぇ」




 滅びゆく星を見ながら黄昏ていたら声を掛けられた。内臓してる超高性能センサーで捉えていた知り合いだった。俺の背後にシーツを上から幾枚も被せたお化けのような奴がいる。




「グレイシアか。久しぶりだな、十周期ぶりくらい?」


「百周期です」


「そんなに?何か変わった?」


「特に変化はないですねー。そちらこそどうでした?長旅は」




 この百周期の間、俺は故郷から別の地方へ旅に出ていた。それで分かったのは魔界は回りきれないほど広いという事、そしてどこも停滞しているという事だ。




 悪魔は魔力を吸収して成長する。魔界にいれば生きているだけで成長するものの速度はゆっくりだ。一番効率がいいのは魔力の塊、つまり悪魔を食う事だが下級、上級、魔王、魔神と大きくカテゴライズした中で魔神に近づくほど状況が膠着していた。


 今、この辺りを縄張りにしている悪魔のトップである魔神は




 悪魔王アトロシウス。


 終焉竜カルマゴグ。


 腐界のオルレアン。




 の三柱だ。


 どれも弱小時代を勝ち抜き下積みを重ねた強者で、どいつもこいつも一大勢力を築き上げていてタイマンならともかく多勢に無勢では勝ち目が見えない。


 しかもこいつら俺が生まれる前から牽制しあっていて千年以上状況が変わっていなかった。




 それじゃあつまらないという事で他所の土地にヒントを求めて旅立ったものの、膠着は必然とばかりにどこもかしこも似たり寄ったりな形に落ち着いていた。


 何の成果も得られませんでした。




「全然ダメ」




 酷い所だと魔神が結託して出る杭を打ってる所もあった。生存競争とはいえ、世知辛い事だ。




「なんだかんだここが一番混沌とし易いのかもしれない。天使がいるし」




 天使は天界に住み、魔力に対して特効を持つ天力を扱う精神生命体だ。悪魔にとって天敵である。同格であれば絶対に勝てない、じゃんけんみたいな理不尽だった。




「天使って他の地域にはいなかったんだよな」


「それはそうでしょうね。でしたらやはりここでやりますか?」


「そうするか。幸い上は仲悪いし都合がいいからな」




 100年無駄にした。とは思わない事にする。どうせ時間で死ぬことはない身の上だ。




「それではこれより神殺しによる下克上プログラムを発動する!」


「わー」




 俺の宣言と共に、崩壊していた星が花火のように爆発した。

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