プロローグ「来世でまた、あなたに」
豊かに生い茂った木々が並び、まるでトンネルのようにアーチを描く。
美しく整えられた石畳の道には、木々の隙間から陽の光が差し込み、ぽつりぽつりと美しい光の雫がゆらめき降り注いでいる。
木々が大きく揺らぎ、突如刺すような強い閃光が瞬く間に視界を光の世界に染めあげた。
周囲の音までも瞬時に奪っていく。
「え……」
次の瞬間。
大きな声と、悲鳴。
白い光は粉々に散って、美しい緑が風に揺れている。重くなっていく身体。ヒヤリと冷たいお腹。
気がつけば赤く染まっていた石畳。
喉が裂けるほど大きな声を震わせて駆け寄ってくる誰か。
痛い、寒い。
指先からこぼれ落ちていくように、熱が逃げていく。
瞼が重く、一生懸命開けたいのに力が入らない。
靄がかかったような、磨りガラス越しの世界でぎゅうと私を包み込む誰か。
綺麗な金の髪や、綺麗な指先が赤く汚れるのも気にせずに懸命に何かを叫び、泣き喚いてる。
鼻を掠める、石鹸の香り……この匂いは。
彼だ。私の、私だけの大切な——騎士。
どんな声をしているのだろう。
聞こえない、なにも……何も聞こえない。
顔に熱いものが落ちてきて、頬を伝うのがわかった。
ああ、瞼がどうにも重すぎてこの暖かさの正体を追いかけることはできそうにない。
あと少しで彼の顔が見えそうなのに。
何も、もう……見えない。
「……来世こそ、必ず貴女を——」
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