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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

癇癪令嬢は王となる

作者: あるい

 とある国に我儘で有名な侯爵令嬢が居た。気に入らないことがあれば喚き散らし、暴れ回った。

 怒り狂った自分を抑えきれなかったのだ。


 彼女を諭すべき親は、母親は彼女を産んで直ぐに亡くなり、父親は虚しさを埋める様に職務に没頭した。

このため彼女は欲しいと言ったもの思われるものは与えられ、放置された。


 人々は彼女を「癇癪令嬢」と揶揄する様になった。

 

 しかしある時、彼女は王太子の将来の妻、妃として選ばれた。人々は王太子に同情したが、彼女は婚約者として選ばれてからは淑やかに振る舞う様になった。責任ある立場に選ばれて、自分を律することが出来る様になり人々はそんな彼女を見て手のひらを返し、「高貴な令嬢」として口々に褒めそやした。


 だが、学園に「聖女」に選ばれてと言う少女が入って来てから、変わった。


 今までに会った令嬢達には無い無邪気さと純真無垢さに王子は魅了された。

 王子は聖女と付き合い恋仲になった・・・様だった。人々はこの美しい恋人達を祝福し見守った。

 これをみて令嬢の癇癪が蘇ったのは言うまでも無い話だ。

 彼女は聖女に詰め寄り襲いかかった。王子が駆け付けなければ聖女は傷つけられて居ただろう。

 彼女は癇癪の発作の後、気を失い眠り続けた。

 王子は彼女が目覚める前に婚約を破棄した。

 

 そして目覚めた時彼女は彼女では無かった・・・


「お父様・・・」

「何だ、今忙しいのだが・・・ああ、学園の誰ぞを辞めさせたいとかメイドが言うこと聞かないとかなら後で校長とメイド長に言っておく、お前の我儘で私を煩わせるな。」

「・・・そんな事ではありません」

「なら何か欲しいものか?執事が無駄遣いが多すぎると言っていたぞ、煩わせるな。」

「・・そんな事ではありません」

「じゃあ何なのだ!」

「当主の地位を私にください!」

「いきなり何を言って居るのだ!」

「だってそっちの方が手っ取り早いんですもの。・・・色々と」

「お前なんぞが務まるか!さっさと出ていけ!」

「いいえ、いただきますわ!それに私のこと今まで散々無視して来たくせに私の何を知って居るのですか?」

「何をする!!!!って・・・お前は誰だ?何ものだ?娘をどうしたんだ?」

「・・・ふーん分かったのか?親だからかな?まあ遅いけどなあ!」

「うわああああ!!!!!!!!やめろおおおおおお!!!!!!!!」


 彼女は父である侯爵が急死し、女侯爵として就任した。人々は彼女の変貌ぶりに驚いたが、「どうせまた癇癪を起こすだろう」と冷ややかなものであった。

 若き侯爵として彼女は強引な手段で先進的な政策を次々と打ち出し成功させた。反抗するものは居たが、彼女が設立した親衛隊によって処分された。そして政策により領地が豊かになっていくうちにその声は小さくなって行った。

 

 この時この国には疫病が流行り、大量の死者が出た。

 人々は「聖女」に助けを求めたが、その聖女は表に出てこない。

 こんな噂が広まった。聖女は王家に隠されて居る。閉じ込めその「癒しと浄化の力」を独占して居ると

 疫病は王家が聖女を「独占」しているから起こったのだと。

 

 人々は病身を引きずり王宮に詰め寄り「聖女を出せ!」「薬を寄越せ!」「水を寄越せ!」「疫病を治めろ!」と口々に叫び王家を引き摺り出した。そして国王夫妻を処刑したのだった。


「貴様ああ!!よくも父上と母上を!!!」

「あら、殿下お久しぶりですね。陛下の処刑以来ですね。」

「貴様の!貴様の!せいだろうが!!!貴様が民を唆して処刑させたんだろうが!!!」

「あらあ〜あれは国王夫妻が疫病で国が大変なのに国外逃亡しようとしたからですわ。」

「抜け抜けと!!聖女はどうした!!!!この国の重要な存在だぞ!」

「聖女様は今聖堂国に居られますわ。なんでもこの国での扱いがお気に召さなかった様ですわ。」

「貴様が!貴様が!貴様が!聖女を虐げたからだろうが!!!!」

「あら聖女様は殿下達にお近づきにはなりたく無かったとおしゃっておりましたわ。なんでも周囲から『殿下に取り入ろうとする嫌らしい女』『身分を弁えない女』とか言われて嫌がらせを受けていたと」

「貴様がやらせたんだろうが!!!!」

「それが全く関係無い方々だそうですわ。」

「言ってくれれば!私が守ったのに!!!!」

「あら、殿下に守られるのが一緒にいるのが嫌だそうですわ。付き纏われて、勉強も、遊びも、仕事も何もできなかったんですって。

 それに恋人同士だと思われるのも嫌だったそうですわ。周囲の方々にそう思われて、二人きりにさせられるのが嫌だと!貞操の危機を何度も感じたそうですわ。」

「なっ!!!!!んで!!!」

「この国の王太子である殿下に平民で有る彼女が逆らえる訳無いじゃ無いですか。『神殿での仕事が有って』『勉強が終わっていなくて』とか言っても付き纏ったと、御学友や神官の方からの証言も有りますわ。ご自分の立場をわきまえた行動をといつも言われて居るじゃないですか?」

「私は!私なりに!彼女を!この国を思って!!!」

「・・・お前はこの国より周囲の人々のことを『思いやる』べきだったなあ。『自分だったらどうするか?』『どうなるか?』とか良く考えるべきだったなあ。『あとは人が嫌がること』をしないとかな」

「なんだと!!!」

「それとも『自分がそうしてもらえなかったから』そうなったのかな?この子と同じだなあ」

「何を言って居る?」

「もう遅いですわ。さあ皆さんが待って居ますわよ」

「何をする!やめろおおおお!!!!」


 こうして彼女は国王一家を処刑し、国民に選ばれた新たな王として君臨することとなった。


 我儘だったからって改心して周囲に優しく振る舞う必要はないなと

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― 新着の感想 ―
 癇癪令嬢の中にいたのは誰だったのでしょうか?ほんのりゾッとするお話で、面白かったです。
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