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それからわたしとひまりは、ショウタサンとタロチャンと一緒によく遊ぶようになった。ショウタサンが車に乗せてくれて、青空公園だけじゃなく少し遠い公園にも行った。いろんなところに行った。
いつからか、ショウタサンはわたしたちのおうちにも来るようになった。タロチャンが一緒の時もあったし、ショウタサンだけの日もあった。
わたしはショウタサンも大好きだから、いつでも大歓迎だ。
外が寒くなって、お花の季節になって、暑くなって、涼しくなった。
今日は雨が降っている。散歩できないことはないのかもしれないけれど、わたしは雨の日の散歩は好きじゃない。代わりにショウタサンとタロチャンが遊びに来てくれた。
「雨、止まなさそうね」
「今日はずっと雨かな」
「二匹そろうとこのおうちはちょっと狭いよね。ごめんね、タロちゃん」
ショウタサンがボールを転がしてくれる。わたしはそれを咥えたり、タロチャンと取り合って遊んだりする。走り回ることはできないけれど、これはこれで楽しいのだ。
「あの、さ。俺、引っ越すかもしれない」
「えっ?……転勤?」
「違う。じいさんの認知症が進んできちゃって。今まではばあさんが見てたんだけど、ばあさんも歳だし体調も優れないから、さすがに厳しくなってきてて。それで、二人で一緒に施設に入る話が出てる」
「あぁ、そうだったんだ。でも施設って、いっぱいなんでしょ? すぐに見つかるの?」
「実は申し込みだけはしてあって、空きが出たって連絡があったんだ。今入るかいったん見送るかで家族会議中なんだけど、これを逃すと次にどれだけ待つことになるかわからないから、たぶん入ることになると思う」
ひまりが強張った顔をしていたから、わたしはひまりに擦り寄った。ひまりが辛そうなときは、わたしを撫でると元気になるって、わたしは知ってる。
「それで、施設にタロウは連れて行けないからどうするかってことなんだけど、元々は何かあったら俺の実家で面倒をみる話になってたんだ。だけど実家には先住犬と猫もいてさ、先日連れて帰ったらあんまり相性がよくなくて」
「あぁ……」
「タロウは大人しくしてたんだけど、母がタロウに構ったら元々いた犬が嫉妬しちゃって。猫のほうも警戒心むき出しな感じだったんだ」
「まぁ、自分のテリトリーにいきなり入ってこられたら、そのワンちゃんもネコちゃんも嫌かもしれないよね」
「うん。だから、俺がタロウを引き取ってもいいかと思ってるんだ」
タロチャンは自分の名前が聞こえたからかショウタサンに寄っていき、撫でてもらっている。タロチャンはショウタサンが大好きだ。
「タロちゃんは翔太さんに懐いてるから、できるのならばそれがいいかもね。私たちもタロちゃんが遠くへ行ってしまうのは寂しいし」
「うん。だけど今の俺の部屋はペット不可の物件だから、タロウを引き取るなら引っ越さなきゃいけなくて」
「そっか。でも、遠くへ引っ越すわけじゃないんでしょ?」
「もちろん。仕事もあるから、また市内でって考えて探しているところ。なんだけど……」
「何か問題があったの?」
ひまりがわたしを撫でる手が止まったから、わたしはお気に入りのベッドに移動した。そこからタロチャンたちを眺める。
「あの、さ、その、えっと、もし良かったらなんだけど、一緒に住まない? ほらタロウとハナちゃんも仲が良いみたいだしさ、ひまりもハナちゃんが日中一人で寂しいんじゃないかって心配してたし、一緒なら寂しくないかなって」
「え?」
「一人暮らし用ペット可物件がいいのがなかったっていうのもあるし、広いほうがタロウたちにとってもいいだろ?」
「あ、うん、広いのはいいかも。今日みたいな雨の日とか、ね……」
「俺も、一緒に住めたらいいなって……、だから、どうかな?」