第二話 『綺麗なお姉さんは位が高い人らしい』
この調子で、会う度に“凄いのが憑いている”と、耳が痛くなるほど言ってくる慎吾に、いい加減に俺もうんざりしていた。
むしろ、小学生の時から高校までのこの数年間よく我慢したもんだ。
お陰様で何をするにも、後ろが気になって仕方がなくなってしまった。
完全に慎吾のせいだ。
幽霊を綺麗なお姉さんと話す慎吾も慎吾だが、数年間その“綺麗なお姉さん”とやらの事を一切教えてくれないのも不思議だとは思っていた。
なんとなくではあるけど、慎吾は俺の後ろにいる綺麗なお姉さん幽霊の正体が分かっていると思う。
正体を明かすのを幽霊さんに止められているのか、言いたくないのかは分からないけど、数年間も謎の幽霊さんが憑いていると言われ続けてもみろ。
さすがにモヤモヤする所の騒ぎではないし、気分も良いものではない。
慎吾の話からして、多分悪い幽霊ではないと思うんだが、良い幽霊なのかと言われても見えない俺には何も分からない。
つーか良い幽霊ってなんだよ…。
「だから何が憑いてんだよ!!お前、何回聞いても全然教えてくれねぇじゃん!!」
「…だから何度も言っているだろ?憑いているのは、綺麗なお姉さんだって」
「それは聞いたけど!具体的にどんなのが憑いているのかは全く教えてくれねーじゃんかよ!謎の綺麗なお姉さんの幽霊がいるって言われて、こっちは何年もモヤモヤしたままなんだ!俺には知る権利位あるだろ!?」
「…はぁ」
慎吾が観念したようにため息をつく。
「詳しい事はまだ話すなと言われているんだ」
「え?」
「その時が来れば必ず分かるようになる…とも言っている。」
その時が来ればって…一体何の話だ?
「お前の後ろにいるお姉さんがお前に何かをする事は絶対にない。害は一切ないから心配はするな。…むしろ逆だ」
「逆?逆ってなんだ?」
「――裕也。お前の後ろにはかなり位の高い方が憑いている」
「え?位の高い人ってどういう意味だよ」
「……分からなければ分からないままで今はいい。お姉さんもそう言っているから」
「はぁ~~!?」
漸く教えてくれたと思ったらそれだけかよ!
「ふざけんなって!俺がそれだけの情報で納得すると思ってんのか!?」
「…まぁ納得はしないだろうな」
「じゃあもっと教えてくれよ!これだけ長い間憑いているなら、お払いとか除霊とかも考えなきゃ――…」
「それは無理だ」
「え?」
慎吾の表情が強張り、俺に被さるように言ってきた。
「お前の後ろの人に、そんなものは効かない。というか、その人を払える人なんてこの世にはいないと思うぞ?」