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#6 あらすじ

反射だろう、俺は立ち上がっていた。くだんの子は気にする事無く、真っ直ぐに俺を見ていた。

その黒い瞳に感情は感じられなくて恐いと思うのに、酷く魅せられる。まるで良く出来た人形だ。

「貴方自ら出てくるなんて…一体どうしたんすか?」

「君には関係無い」

無言で見つめ合う俺達に耐えかねてか、彩貴あやきさんが少し掠れた声で問う。その瞬間、世界が戻った感じがした。

彩貴さんに応える声には、さっきのような儚さは無くて、威厳に満ちた冷たい声音になっていた。

「私は斉賀京司さいがきょうじ。此処の総責任者だ」

言われて初めて、目の前の子が少年だと知れた。あまりにも綺麗な容姿なもんだから、性別が二の次になっていた。

その事に恥じながら俺も名乗ろうとして、片手で止められた。

「君の事は報告で聞いている。訊きたい事を」

まるで付き離すような物言いで彼―斉賀少年は、ソファの端に腰掛けて俺を見上げた。

座れ、という事なんだろう。それにしても、斉賀少年は不思議な少年であった。

現実感というものが無い。それは初めて会った時からだけど、あれとは違う現実感の無さ。

でもそれを問うには、俺はまだ世界を理解していなかった。世界は複雑だというのに。


理人が眠ったのを確認して、京司は静かに目を伏せた。もう少し、この少年の傍に居たかったのだ。

「…どういうつもりなんすか。あんなにベラベラ喋って」

それまで黙っていた彩貴が久しぶりに口を開いた。その顔には、嫌そうな色と心配するような色が見えた。

どうやら京司に対する不信感と理人に対する労りが混ぜ込めになっているようだ。

そうなのだ。京司は此処の全てを理人に話したのだ。それも、理人に質問されるがままに。

政府どころか世界によって設置された機関でありながら、一般人には内密だと言う事。

超能力、またはそれに類する能力を持つ者が、裏の世界で同士討ちをしている事。

それが時に、表の世界に“ちょっかい”を出したりする事。

ちなみに理人が最後に質問した事は、どうして京司が総責任者なのか、という事だった。

これが一番簡単な問いで、京司の存在理由そのものだった。

「斉賀家当主だからさ」

そう言った瞬間、理人は何故かショックを受けた様子だった。そうして、休ませて欲しいと眠りに落ちたのだ。

「私はもう戻る。彼が目覚めたら家に」

背後で抗議の声を上げる彩貴を尻目に、京司は何処へと消えて行った。


ふっと目を覚ますと、彩貴さんがベッドの傍で何やら本を読んでいた。カバーからして機械に関するものだろう。

斉賀少年の姿は見えない。もう逢えないのだろうか。あの少年と少女には。

「…あの…」

「ん、目ぇ覚めたか。んじゃま、送ってやんよ。家まで」

彩貴さんにお礼を言って、考えた。無機質で何処か物悲しい建物を見て、強く思った。


また逢いたい。綺麗だけど寂しくて哀しい少年に。可愛いけど哀しくて小さな少女に。


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