結婚式
半年後、王城の広場で結婚式を挙げることになった。結婚式の知らせは、国中に大々的に発表され、この国の貴族や、他国の王族や貴族達に招待状が送られた。
慌ただしい日々は過ぎていき、あっという間に結婚式の日が訪れた。
「ミシェル様、本当にお綺麗です!」
純白のウエディングドレスに身を包んだ私を見て、セシリーは嬉しそうにそう言った。
「本当に綺麗だよ、ミシェル……」
「私達の娘ですもの、当然ですよ。もう、お嫁に行ってしまうのね……」
両親仲良く寄り添いながら、私のウエディングドレス姿を見て泣きそうになっている。
「姉上が綺麗なのは当たり前。殿下は本当に幸せ者だ。姉上を泣かせたら、殿下だろうが殴りに行くからね!」
デイビスなら、本気でやりそう。
「私のことより、選り好みしていないで早くお相手を見つけなさい。そうそう、隣国のシルビア王女なんかどう?」
「あんな性格がキツイ女性は、苦手です。僕は姉上のような女性でなくては、結婚しません!」
「それは聞き捨てなりませんわ! 私のどこを見て、性格がキツイと仰っているのかしら?」
ナンシーと一緒にお祝いに駆け付けてくれたシルビアが、不服そうな顔でデイビスに詰め寄る。
「そういうところが、キツイと言っているんだ! それに、姉上のことをお姉様と呼ぶのはやめろ!」
「お姉様のことをお姉様と呼ぶことの、何が悪いのかしら? 私は呼びたいように呼ぶわ! 命令するのは、やめて下さらない?」
シルビアは学園に入ってから、ちょくちょく邸に遊びに来るようになっていた。案外二人は、お似合いだと思うんだけどな……
「ミシェル~! 凄く綺麗! 本当に結婚してしまうのね」
ナンシーは二人のやり取りに目もくれず、ウエディングドレス姿から目が離せなくなっていた。
「そんなに見つめられたら、恥ずかしいわ。ナンシー、来てくれてありがとう」
ナンシーとの出会いは最悪だったけど、彼女と友達になれて幸せだ。
「来るに決まってる! ミシェルには本当に感謝してる。あの時、ミシェルが手を差し伸べてくれたから、今の私が居る。私も、ミシェルのようになりたいと思った」
ナンシーはナンシーのままで、素敵な女性だと思う。
「違うよ。ナンシーは、私なんかよりずっと素敵な女性だよ。私は間違いばかりで、好きな人をずっと傷付けて来た。私こそ、ナンシーのようになりたかった」
お互い顔を見合わせて笑い合う。
「お姉様、私抜きで何をそんなに楽しそうにしているのですか!? ナンシー、ズルい!!」
シルビアは口を尖らせながら、デイビスを押しのけて私とナンシーの間に入って来た。
「ミシェル様、お時間です。皆様は、会場でお待ちください」
シルビアがこれ以上騒がないように、セシリーが気をつかってくれたようだ。
大歓声の中、広場の階段を一段一段上がる。上を見上げると、大好きな彼が待っていてくれる。
「ミシェル~! 私は諦めないぞ~!!」
パトリック様、今日は結婚式なんだけど……
「お兄様、それは国際問題になりますわ!」
シルビアの方が、大人みたい。
「ミシェル……幸せに……なってくれ」
アーサー様は涙を流し、ナンシーに頭をよしよしされている。
「アーサー様、ご立派です」
最近二人は、距離が近くなったみたい。アーサー様の隣には、いつもナンシーが居る。
「殿下を、お願いします」
ジョナサン様は、相変わらずウィルソン様を想ってくれている。
「ミシェル様、おめでとうございます!」
「ミシェル様にピッタリのドレスで、すごくお似合いです!」
「さすが、ミシェル様です! おめでとうございます!」
取り巻き三人組……名前、覚えなくてごめん!
階段を上がると、恋をした時のあの笑顔でウィルソン様が待っていた。隣に並び、神父様の前に立つ。
「ウィルソン王太子殿下、病める時も健やかなる時もミシェル様を愛し続けることを誓いますか?」
「誓います」
「ミシェル様、病める時も健やかなる時もウィルソン王太子殿下を愛し続けることを誓いますか?」
「……誓います」
誓いの言葉は、誰にも邪魔されることはなかった。これで私は、このゲームを卒業出来たということだろう。
大きな歓声と沢山の拍手の中、私達は結婚した。これからは王太子妃となり、王妃教育を受けることになる。どんなにつらくても、彼が居てくれるから乗り越えていける。
結婚式が終わり、ようやくウィルソン様と二人きりになれた。初めて一緒に過ごす夜。
「やっと君を、手に入れることが出来た」
王城の寝室で、ウィルソン様と見つめ合う。前世でも、今世でも、ずっと愛してくれていた彼。悪役令嬢に生まれた私が、自分らしく生きてこられたのは、彼が居てくれたからかもしれない。やっと好きだと口に出来る。
「ウィルソン様、私……」
あ……れ? 声が出ない……
嘘でしょ……!? 愛の誓いまでしたのに、好きだと口にすることは出来ないの!?
結局、『好き』という言葉は卒業式まで口に出来ないらしい。何なの……このシステム……
言葉の続きを待つウィルソン様の手を握り、彼の顔を見つめる。目で訴えるしかないと思ったからだ。
「ミシェル……」
彼の顔がゆっくり近付いて、唇が重なる。何度も何度もキスをされ、何も考えられなくなって行く……
好き……ウィルソン様……
言葉に出来ない言葉は、私の中で繰り返されていた。
END
最後まで読んでいただきありがとうございました。




