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例え、どれだけ確証がなくとも

ウェルは腕を龍のものに変え、禍々しく紫色に燃えるその腕で、死霊を一匹一匹と仕留めていった。

その爪に触れた途端、ドロドロと溶けだしていく死霊。

まあ見れたものじゃあない。

お陰で、ウェルが戦っていた辺りは某映画になるとイケメンになるアイツが作ったスープ並みに紫色の液体で溢れかえっている。

ぼええぇぇ……近づきたくない……


サクラは結界でリアシュルテを護りつつ、接近してくる死霊を映水で捕捉し、懐古で防御無視攻撃。というか殆どトラウマをひっくり返した精神攻撃。

手間こそかかるものの、そもそもサクラの前にはウェルがいるから敵は滅多にこないんだよな……


エルルさんは、あー……特になにもしてない。



最後の一匹が、俺の背後で燃え上がっていく。

魔法陣からの増援はなし。

これで、一度落ち着いたらしい。

サクラ曰く、「急激に死の感覚が去っていった」と。

要は、後方退避したということだ。

それすなわち、まだ後ろがあるということ。

言い換えれば、まだ終わりじゃない、まだ余力があるってこと。

これはきっと全戦力じゃないはず。多くて五分の一程度。

次戦うとき、これの四倍と相手かもしれない。

そう思うと非常に憂鬱だ。

と、その時。

「猫……」

気休めの柔らかさの中に落ちた、悪夢。

「リアシュルテ!だいじょ……え?」

「な……!」

リアシュルテが意識を戻していた。

それだけなら、良かったのだが。

「なに……私はっ……平気だ……!」

リアシュルテは酷く、出血していた。全身から、多量に。

声と共に、血が口から流れ出でる。

四肢と腹と顔と、場所という場所から吹き出す血。

何故。彼女は、記憶を辿っていた。それだけではなかったか。

「おい!お前、何で!?」

すぐさまに駆け寄り、血で染まったローブの肩を揺すぶり問い掛ける。

手に血がべっとりとついたが、そんなもの気にしてはいられない。

「これがっ……げほっ……!ふぅ、記憶術のっ……げはっ、げほっ、ぐふうっ……!代償だ……げほっがほっ……!」

激しく咳き込みながら、無理矢理安心させようとするリアシュルテ。

そんなもの意味はない。

咳の度に口から吐き出される血の塊があるから。

優しげな目付きの裏に、どこか強がっているのが見えるから。

脈が鼓動が、少しずつ緩まっていこうとしているから。

咳を諸に受けて、リアシュルテの口から出た血が俺の顔を包む。視界が赤くなる。目が痛い。

しかし、そんなの些細なものに過ぎない。目の前の彼女に比べれば。

「おい、しっかりしろよ!こんなしょうもない理由で死なれちゃ困るんだよ!待ってろ、今医者にでもなんでも転職して……」

そう叫びながら、ウィンドウを開こうとしたその時。

「城……」

リアシュルテが俺の腕を強く握り、動きを封じる。

そして微かに、が言った。

「城、あの城だ……見えるか?……んぐふっ……!」

もう一方の腕を震わせながらも上げ、さらに奥地に佇む城塞の遺構を指し示す。

「あそこが……最後の場所っ……!そして、原因の宿る場所……!見届けろっ!見届……げふうっ!これは……エルルが見なきゃいけない……!お前が、お前が連れていくんだ……早く!」

最後は半ば叫びに近く、俺にそれは託され。

分からない。何故、あの城なのか。何故エルルさんが見なきゃいけないのか。何故……何故、俺なのか……

でも。

でも、そうだ。そうじゃないか。

何故俺は、リアシュルテを信じないんだ。

今まで幾度彼女に信じられた?

今までどれだけのことをなにも言わずしてくれた?

人のことを信じないで、何が仲間だ!

一方的に信じさせておいて、何が主だ!

なんにも言わずに、従わないと……!

彼女を、信じないと!

「わかった。だけど、約束して。絶対に、死ぬな」

言葉に、リアシュルテは鼻笑いで応えて。

「お前こそ、だろ……ぐっ、げほっ……!」

咳き込みながら、血を吐きながら、笑顔を見せた。

俺は立ち上がる。

行かなきゃ。例え、彼女の生きる先にどれほど確証がなくとも。

と、肩にポンと重みが乗る。

「我が残るのじゃ。我ならば治療が可能、彼女を護れるのじゃ」

サクラだ。あれほどリアシュルテと敵対していたサクラが、自ら名乗るとは。

「我を信じろ。早く、エルル殿を城へ」

「頼む……」

そうだ、信じろ。

信じ会えるから、仲間なのだ。

そう言葉に出来るから、仲間なのだ。

「ウェル、エルルさん!あの城へ!」

「分かったよ!」

「うし、任せろ!」

言葉にしなくても伝え会えるから、仲間なんだ。

一緒に走り出せるから。

友を預けられるから、置いていけるから、仲間なんだ。




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