空虚の島
烙印によって消し飛ばされ、何もなくなった更地の上を往く。あれほどの爆音と衝撃、そして被害があったにも関わらず、アンデットの、死霊の気配は感じられない。
はたして、本当にいないのか。それとも……
「それで?ここからどうするんだよ」
エルルさんが後ろから言って、俺がどうしようかと口にしようとした……が、それより早く
「記憶を解明する。この地で何が起こったのか、それを確かめる」
リアシュルテの言い切り。これは、当初の予定通り。
「地記憶というのは一番扱い難い。何より、規定範囲に遡時範囲やらなにやらと、設定が馬鹿じゃなく多い。その上詠唱も発動も時間が掛かる。んでもって使いすぎると磨耗して死ぬ。最高でも5分程が限界だ。まして、今回の場合は百年間の記憶を必要としている。よくやって30秒が関の山と見た」
同じ記憶の読み取りでも、人のように小さな生き物と、大地という無限の存在とでは難易度の差が漠然。
圧倒的な情報量の違い、というのがそこにはあるのだ。
リアシュルテにだって言えることだと思う。
神、すなわちリアシュルテとサクラの最強っぷりを見て、この人たちに出来ないことはないんじゃないかと思っていたのだけれど、そこは案外人間基準みたいでホッとした。
それだとしても絶対に勝てないんだとも思ったけど。
「規定範囲は一帯直径200メートル、遡時範囲は100。見つけるのは……あの、影の霊の記憶。それと、メルナの両親の記憶。うん、了解した」
流石にリアシュルテにダメージを与えすぎるのはよくない。これから戦況が乱れてくるのは予想できるし、最大戦力を減らすのはリスクすぎるし。
「そして、リアシュルテが記憶を辿っている間、俺たちが援護に付けと。そういうことだろ?」
リアシュルテが、不意をつかれたようにキョトンとする。
それから何故か少し顔を赤らめる。そして、そのまま言葉を繋ぎ。
「ああ、記憶詮索中は一切の感覚を外界から遮断する。その際、仮に戦闘となった場合を見越し援護を……」
そこで、言葉がはたと止まる。
突然、言葉を失ったかのように黙ったリアシュルテ。一体何があったというのか。
その答えは、一瞬で分かることとなった。
「ぎぃぃいいいい!?」
いつのまにか、俺たちの眼前に現れた死霊共。
「死霊……!いったいどこから!?」
辺りを見回す。さすれば、俺たちを円形に囲うように、宙に浮いた魔方陣。そこから空間の裂け目が発生し、中から死霊共が次々と出てくる。
不意を、完全に不意打ちを喰らった。やらかした!
「おい……どれだけ出りゃ気がすむんだよ……!?」
一匹二匹どころではない。
空間が歪んだ感覚があれば、その歪みから次々と死霊が出現する。その数、ざっと三十を越える。
突然現れ、突然襲いかかってくる。
その目標の先にあるもの。それこそ、リアシュルテの頭。
一匹が先ず先陣を切り、リアシュルテ目掛けて突進。
しかし突っ込んでくる死霊をサクラが結界ではね除け、
死霊は後ろへとノックバック。いきり立つ同類。
サクラはそのまま俺と顔を見合わせた。
言いたいことを、視線だけで伝え合う。
二人「うん」と頷きあい、行動方針は決まった。
「リアシュルテ、ここからは俺たちの出番だ。お前はぬくぬく休んで記憶と遊んでろ。三十秒で片付ける!」
守って見せる。リアシュルテには、一匹たりとも触れさせない。
この間に、一人真実へと辿り着いてもらうんだ。




