Ankunft
先ずウェルが梟になり飛び下り、次いで今回はサクラが飛び下りる。
見事なキャッチで行き着いたサクラが、巷で噂の弾けるとかいう結界を展開。落下地点に形成される。
なんでも、防御優先度の上昇しすぎた結果カウンターならぬバウンドによる、反撃ならぬ反動によってしまったある意味スゴい結界らしい。
つまり、それ使いどころなくない?である。
それはまあ後でツッコむことにして、とりあえず飛んでみる。
「キョウヤ、いっきまーす」
親父にぶたれることなく死んでしまった俺、逝きました。
二度目の長距離落下。落下に馴れるって怖いね。
すぐに地面へと到達し、俺は見掛けものすごく固そうな結界に触れて。
ぽよん、と音をたてて跳ね返った。
プリンの上で跳ねる感覚。やったことないけど。
真面目に例えるなら、競技用のスゴいトランポリンみたいな感覚。やったことないけど。
割と高めに軌道を描き、勢い衰えず地面にスタッと着地。二秒後、無理した両足にダメージが来た。
ビリビリ痺れ、さらに二秒後。
「ビリビリいいいいい!?」
殊更強化されたビリビリが今度は全身を襲う。
無理しすぎだわ!
そのまま後ろに倒れこみ、しばし安静。
見れば、まだエルルさんとリアシュルテが崖上に。
なにやら口論しているらしい。
「早く降りてきてよ……」
ほら、小さなウェルも呆れているぞ大人諸君。
……こいつもロリバ……言わないでおこう。
ここからだと声も聞こえぬし表情を読み取ることも出来ないため、まったく状況がわからない。
唯一わかる身振り手振りだけで口論を見ると言う、未だかつてない意味なし行動。
あ、エルルさんちょっと後ずさり。負けてる?
崖にジリジリ追い詰められていくエルルさん。このままだと……ああ、それが狙いなのか。
もしやこの人たち、降りる順番で口喧嘩してるのか?
しょうもな。大人げな。ちっちぇな。
さっさと仲良く二人同時に飛べばいいものを……
ってあ、あ!あ!!
エルルさんがリアシュルテに蹴り落とされた。卑怯だぞリアシュルテ!暴力は変態だぞ変態!
エルルさんが弾みつつ俺の近くに落ちてくる。
「エルルさん、大丈夫?」
エルルさんはうつぶせになり、顔を突っ伏してグッドを立てて見せる。
「ぐーっど……」
直後、はたりと気を失った。
その裏で、しれっとリアシュルテが飛び下りる。
つかつか歩み寄ってきて、寝転ぶ僕ら二人を見下しながら言った。
「こんなものでこの疲労とは。やはり弱いな」
なんだこいつ、凄い腹立つ。
「まだ先は長いぞ、帰る準備はいいのか?」
ぶっ飛ばしたくなる衝動を抑えて言葉を紡ぐ。
「ここから、多分ずっと歩きだよ」
「……帰りたい……」
起き上がりたくない。しかし、やらなきゃいけない。
立ち上がって、俺たちは歩みを始めた。
妙に静けさの広がる渓谷。
涼しい風が通るが、今は何故か寒々しく感じる。
基本的になだらかな坂になっているが、ここから反対側に見える山脈側を見やれば、殆どが段差か岩場と化しているのがわかる。対してこちらは木々が生え草も繁る穏やかな場所。降りるのは非常に楽だ。
さらに言うべきなのは、ここにきてまったくアンデットや死霊、まして普通の魔物にすら遭遇しないということ。
移動開始から数十分はたっているだろうが、エンカウントはゼロ。というか目視出来る範囲に魔物がいる気配がない。
リアシュルテやサクラを持ってしても魔物の存在は見つけられず。
これは誰かの仕向けなのか、それともここがそういう場所なのか。
わからないまま、俺たちは歩き続けた。
ひたすらに降りることおよそ四十分。
その門の目の前へと辿り着いた。
「ニズリス・ブール……」
まるで街が俺たちを睨みつけているかのように、何かの視線を感じさせる空気。何もいない、気配もしないのに、どこか誰かがそこにいる空気。
この城塞こそ、俺たちの最後の決戦場。
血祭りパラダイス開催地。
あ、幽霊だから血祭りには出来ないな。
「さて、ここからじゃな」
「ああ……全部、終わらせるぞ」
目の前に構える城塞。これから、派手にぶっ壊してやるよ。




