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俺、堕ちる。

ふとサクラのほうへ目線をやると、当人は何か大仕事終えてぷはーッ!って顔をしている。

お前さっきからろくに働いてねえだろ。

移動距離もほぼないだろ。

で、

「さて、キョウヤ。ようやくここまでたどり着いたの。長々とした無駄話で1年はたったとおもったわ。我も疲れたのう。」

と言われた。

いや、無駄なのはお前の長ったらしいツッコミのほうだろ。

あとお前のその胸に垂れ下がった果実だろ!

後者は無視してほしい。

それに疲れてんのはコッチだろ。

死んだと思ったらすぐこの情況だぜ?

精神的に疲れたわ。

「サクラが疲れてるかは知らんけど、そろそろ人生始めてほしいんだけど。というかもう始めないとそろそろヤバイよ?」

「ちょっと傷ついたんじゃが、、。まあ、でもそうじゃのう。始めんといかんな。我の睡眠時間が減るしの。」

だからお前がどうなるかは知らんて。

睡眠時間減るのが悔しいとか何処の優等生だよ。

「では、そなたを送りだすことにしよう。少し待っておれ。」

そう言い、サクラがまた宙に浮いた。

そして先程のように右手を伸ばし、そこに薄青い光が宿る。

そして、

「ハアッ!」

と一喝した。

すると俺の横に並んでいたガチャガチャたちが青の光を纏い、シューンと音が鳴りそうなエフェクトと共に消滅した。

同時に右手の光も消える。

そして、サクラは止まることなく、両手を祈りの形に組む。

今度は赤い光がその手を包み、燃え盛る炎を彷彿させる。

するとサクラが、その両手を俺のほうへと向けた。

「、、へ?、、」

反応するのが間に合わなかった。

何するの何するの怖い怖い!

またサクラが一喝する。

しかし今度は少し違った。

「彼の者に選ばれし力よ!己の全てを彼に注ぎ、己の真意を示せ!己誓い、その片腕となれ!宿せ!原力よ!」

うおっ!?

カアアアアッと俺の体が光る。

またさっきみたくなるのかと思いきや、それは違うようだった。

全身にパワーが巡る。なんかよく言い表せないが、凄く凄く凄いパワーだ。

最強系の主人公が宿す力ってのが体現されている気がする。てかそれそのものだろ!

力がみなぎる!

ギンギンだァァァア!

ギンギンに深い意味はない。

そして体の表面が熱くなり、一層つよく光る。

と、いきなり。

ポンッと可愛い効果音が鳴ってくれるとうれしいようなエフェクトと共に、俺の服が変わった。

あの服気に入ってたんだけど!

唯一死ぬ前と同じだったのに!

と嘆くが、変化でまたかき消される。

俺の両手でポンッなエフェクトが起こり、何かを手にした。

感触の限りは棒状の何か。

光ってるからなんにも見えない!

と思ったら、変化が終わったのか光が薄れてきた。

まずサクラの方を見た。

既に降りてきていた。そして何故か腹を抱えて大笑いしていた。

「あははははは!あっははは!あーっははははは!」

「大丈夫か?頭打った?なあ、おーい、おーい!」

狂ったか。ついに。

そんなに笑えるものがあったのだろうか。

と、ずっと握り締めていた例の棒切れらしきものが目にはいる。

それは、光るペンライトだった。

そして、どうやら両手に1本ずつ握られていたそれはただのペンライトではなく、ガチャで当てたペンタブとやらだと理解した。

でもこれは持ってても別に笑えはしない。

何が可笑しいんだ?

頭がおかしいのか?

あ、今上手いこといった。

「あーっははははは!キョウヤ、キョウヤ!あっはははは!服!服が!あははははは!」

服?

服に何かついてる?

服を見た。

特に何もない普通のTシャツじゃな、、い!

なんか魔法少女みたいな女の子がデカデカと印刷されていた。

痛シャツというやつだ。

「うわあああ!サクラ、お前ー!何てもの着せてんだよ!今すぐ戻して!今すぐ!」

「無理だって!それが自宅警備員の制式装備だから!あーっははははは!」

「嫌だー!!これだからガチャは嫌いなんだ!てかこれダレトクのシャツなんだよ!誰だよこの魔法少女!腹立つわ!」

「あーっははははは!あはははは!はあ、はあ。あはははは!あーっははははは!」

はやくこの場から消え去りたい。

「あーっははははは!あはは、あは、はあ、はあ。

はあ、ふう。あー面白かった。キョウヤ、久々に死ぬほど笑わせてもらったのじゃ。礼を言おうぞ。」

「今すごく馬鹿にされたあげくに感謝されるとかいう意味不明な情況に戸惑いつつ貴様を滅ぼしたいと心から思ったんだけど。」

「お、おう。面白いことをいうのう。まあ、やってみたところで結果そなたが我にボコボコにされるビジョンは目に見えておるから、そんなことは出来んのだがのう。」

これを平然と言ってもいいのは多分世界でこの人だけだと思う。というかこいつと同類がいてほしくないので、その願望もかけて思いたい。

痛シャツで壺にはまるくらいの壺浅のこいつに。

もう痛シャツから逃れられないのがハッキリしたので、そろそろほんとに転生させてほしい。

「なあ、もう転生させてくんない?ほんとに待ちくたびれてもう一回死にそうだから。」

「あー、はいはいわかったのじゃ。ではキョウヤ、その丸い紋章のところに立て。」

見れば、いつのまにか部屋の真ん中あたりの床に、結構な大きさの魔方陣みたいなのが展開されていた。

いつの間に?

まあ気にしない気にしない。

とりあえずペンタブをまとめてズボンの尻ポケットに突っ込んで、俺はすんなり魔方陣の中に立った。

というか既に半分入ってたんだけどね。

秘密。

魔方陣の上に立つと、サクラが横に来て話しはじめた。

「では、これよりそなたを転生させる。そなたが転生するのは、わかっておる通り魔物が生きる異世界。異世界ファンタジーや異世界コメディではもう殿堂入りの設定なのじゃ。それでも、侮ってはならぬ。魔物は魔物じゃ。強いのもおる。弱いのもおらん訳ではない。注意して生きるのじゃ。魔物に、そして人間にも、な。信じる人間は選ぶことじゃ。

それと、スキルは正しく使うのじゃ。過ちを犯せば我が黙っとらんからの、気を付けよ。

スキルと職業、使い方はおのずと解ってくるはずじゃ。習うより慣れよじゃ。

それではまあ、頑張れ。」

サクラが俺の肩をポンと叩いた。

ちょっと痛かった。

苦しさ紛れに言う。

「おう、サクラ。少しの間だったけどありがとう。サクラがくれた第2の人生、精一杯生きるよ。それと、ユーちゃんはなるべく早くよろしく。俺が言いたいのはそれだけだ。じゃあ、やってくれ!」

「うむ。ではやるぞ。」

サクラがその場を離れ、近くの壁によっていく。

特に何にもないその壁。

そこに向かって、サクラが左手を縦に軽く振った。

するといきなり、その壁に大きめなレバーが出現した。

すげえ、奇跡の超魔術だ。

天才マジシャン・サクラさんだ。

「このレバーを引けば、そなたは転生する。覚悟は言いか。」

その問いかけに、答えは1つ。

「おう!」

頷くまでだ。

「ではカウントダウンを。行くぞ。」

さあ、いよいよだ。

「3」

またここから始まるんだ。

「2」

俺の人生は!

「、、、。」

、、、ん?

1が聞こえない。

サクラは何をしてるんだ?

サクラの方を見た。

え?

サクラの横に、何か凄い幼女がいた。

ニコチャンマークをそのまま現したような動かぬ笑顔をして。

対してサクラは先程と一変。驚愕の表情を浮かべ、冷や汗みたいなのも出ていた。

何このシュールな現場は。

沈黙と幼女。

それを破るのは俺。

「、、、サクラ?この幼女は?」

サクラは俺の方を見ない。答えもしない。

そんなにこの幼女が怖いのだろうか。

俺にはわからんなあ。

ていうかこの幼女、どこから来たんだ?

そんな俺の疑問が浮かんだ途端。

「1」

サクラのものとは違う、幼いがしかし威厳に満ちた声が、カウントダウンを終わらせた。

声の主は、まちがいなくあの幼女。

俺は幼女を見る。

幼女が俺を見つめ直す。

ニコチャンマークはクズレナイ。

そのまま幼女は、レバーをガコン、と落とした。

あ。

サクラの顔が更に驚きで歪む。

だから誰なんだよこの幼女は。

あ、ところで転生ってどんな感じのイベントが起きるのだろう。シューンって消えるのか?目覚めたら異世界!みたいなのかなあ。

わからないなあ、あ、ああああああああああああああああああああああああああああ!!!?

俺の下の魔方陣が消えて、その下の床も消えて。

俺は、真っ青な空に放り出された。

墜ちる!墜ちる!墜ちるって!

こんな転生の仕方って、

「ありかよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

俺はまっ逆さまに墜ちていった、、、。











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