闇色のなかへ
「なんだ……この深さ」
「真っ黒じゃな……」
「これ、落ちたら死ぬかな?」
「試しに落ちてみろキョウヤ」
「お前……俺をなんだと思ってんだよ」
「捨て駒」
「立場的にはお前だろそれ!?」
穴。
アンデットを大量に出現させた元凶。……なんだけど、本当にそうかどうかわからなくなってきた。
この穴、深いぃっ!ぼぼぼぼぼ……
深いというより、終わりがあるのかどうかすら怪しい。
なかを覗けば真っ暗、というか真っ暗越えて真っ黒。
真っ黒越えて虚無レベル。
ほんとにアンデットはここから出てきたのか……?
仮にここから出てきたとして、この深さをどうやって登ったんだ……?
わからん。ここから見ているだけでは何にもわからん。
放って先へ進むのも何だか不安。
という訳で。
「と、いうことでウェル。降りてこい」
リアシュルテから提案を持ちかけて頂いた。
「なんで私!?」
「お前ならこの暗闇でも動き回れる姿持ってそうだったから」
ごもっともなご意見です。多分、この中で唯一の暗視使えるやつですぜお前さん。
「それだったら主の職業で良くない?そっくりそのままの理由で」
あ
「ごもっともな意見だ」
「ごもっともな具申じゃな」
「ごもっともな意見だな」
全員の視線がこっちを向く。
ね、ねえ……ジト目がキツいヨ……?
「え……え……?」
目を泳がせることしか出来ない。あ、口笛も吹ける。
ひゅーひゅひゅーひゅひゅー……
「おい」
「はいいっ!?」
「お前も同行な」
「は……?」
微笑んで言ってくるリアシュルテ。目だけはしっかり笑ってない。
「お前ら二人で、言ってこい」
「了解!」
「は、はい……」
みんな、威圧強いよ……?笑顔が怖いよ……
それで。暗視が使える職業だって?
ウィンドウを呼び出してそれらしい名前の職業を探す。
多分採掘系の職業ならついてそうだし……
工事じゃないし、選鉱じゃないし……
あった。これならどうだ。
発破担鉱夫
鉱山という閉ざされし空間で、最も危険で最も要となる人間。発破。爆発を司る担当だ。
破壊力はお墨付き。数々の石と仲間を崩して埋めてきた。
ダイナマイト一本で、彼は彼の地を覇した。
固有スキル
「ダイナマイト」段階10/10
「洗練暗視」段階10/10
「鉱石鑑定」段階10/10
「採掘」段階5/5
「地殻関知」段階3/3
よさそうだ。これならば、深い穴にぴったりな職業だ。
「転職!発破担鉱夫!」
服装が代わり、白いシャツに大量のワイヤーやらジャラジャラがくっついた下にこれまた大量の器具類を引っ提げたベルトに黒いオーバーオール。
おまけにやけに重たいヘッドライトつきのヘルメ。
左手に持つは、ダイナマイト。
万端、いつでも来い。
「行けるぞ」
「ならさっさと行け」
ぶっきらぼうなリアシュルテ。これでもあなたの使役主なんですが?
「ウェル!」
ウェルを呼んだ、が見渡す限りその姿がない。
あれ?どこ行った?
「ぴゅるるる……!」
鳴き声がして、左肩に重みが。
咄嗟にみれば、大きなふくろうがそこにいた。
「うわぁっ!?」
ふくろうもびっくりして、バサバサ羽を動かす。
「なにこいつ!?なんなの!?」
「私ウェルだけど?この前もこのくだりやったよね?」
「あ、そうでしたすみません……」
なるほど、ふくろうなら飛べるし夜目も聞くって訳か。
それに……俺の梟弥の梟の字と、同じだ。
「宜しく頼むぞ」
「ぴゅる」
ふん、とばかりにそっぽを向くウェル。
よしよしと撫でてやったら、素直になってくれた。
ふふ……わかりやすい……
「よし、じゃ、行ってくる」
「一度下まで下りて、よければ私たちを呼べ。降りる」
「わかった」
指示を聞いて、穴へと向かう。
「死ぬなよ」
歩き出した背中にそう言葉がぶつかった。
俺はそれに、親指をたてて返す。
穴の前に立った。肩に乗ったウェルから声。
「先に降りるよ。地面についたら鳴き声で合図するから、落ちてきて」
「……は?」
「安心して、落とさない」
いや、怖いわ。死ぬじゃんそれ。
でも、ウェルの自信たっぷりな鳴き声。
まあ女神がいうなら大丈夫だろうし、受け止めてくれるやつだって何百年も生きてきたやつ。
信じよう。仲間ですから。
ウェルが羽をバタバタさせる。準備運動らしい。
もう一度。それを繰り返して。
時が来た。
「ぴゅるっ!」
飛び立ち、まっ逆さまに落ちていくウェル。
大丈夫だろうか。
いち、に、さん、し……
怖い怖い怖い怖い。
落ち着け。大丈夫だ。死なない。
ご。
「ぴゅるるるるー!!」
「行け!落ちろ!」
「了解っっ!」
えーーいどうとでもなれ!
何も考えず、ただ、一直線に俺は穴に落ちていった。
闇色のなかへ。




