花火が往く
さっきまで俺が躍起躍起していたアンデット共が、意図も簡単に散り散りになっていく。彼の黒い剣に触れた途端、花火が咲くように花開き散っていく。
強きは何よりの美しさ。美しきは何よりの強さ。こんなに美しい戦いをする戦士を、俺は見たことがない。
そうだ。俺は、これを見るために今まで戦い続けたんだ。
ふいに過去がフラッシュバックする。
俺は、俺より強いヤツを探すために冒険者になった。
単純で馬鹿らしい、けど分かりやすくて理由としては素晴らしい理由だと思う。
まだ十代で年端もいかず、それでも「強さ」を求めて木剣を振り続けた俺は、とにかく強いヤツを探して国中を走り回った。
沢山の魔物、沢山の冒険者、沢山のヤツらに出会った。
確かに魔物は強い。何度も負けたし、何度も死にかけた。
俺一人じゃどうにも出来ないやつらなんてたくさんいた。
コイツらの強さは「本能」からの強さ。生き残らなきゃという本能から、強さを求めた。
でも、これは俺の求めた強さじゃない。
確かに冒険者には強いやつらがいる。
俺じゃまともに戦えもしない魔物を、意図も容易く倒してしまうヤツ。
沢山の称号を下げたヤツ。神器を持ったヤツ。
コイツらは「責任」とか「名誉」とかからの強さ。
国を、世界を守るため、大事な人を守るために強くなる。
名誉、過信から強く見える者もいる。これはまったくだ。
コイツらも違った。
確かに、出会った人々に強いヤツらがいる。
決して諦めない冒険者。誰にでも手を差し伸べる聖君子。そして……独りで生きる少年。
コイツらは、自分の「心」が強い。何度挫けても立ち上がる、食らいつく。
そうせざるを得ないだけかもしれないし、そうしたいからと望んでいるのかもしれない。
けど、強い心に従って生きていく人々は強い。
俺の求めたものとは違ったが。
結局、今のいままで会うことはなかった、俺のなりたかった「強さ」。
強さっていうのは人それぞれに考えが違う。
「本能」「責任」「名誉」「心」。誰がどれを信じていても、けなすつもりはない。それがその人の強さだ、否定するのは強さ自体を否定するのと同じ。
だからこそ、否定しなかった。
だからこそ、今出会えた。
俺が求めたのは、これ。
なんと言えばいいだろう、どう表現すればいいだろう。
わからない、わからないけれど、これだ。
本当は汚いはずの戦場を、この花火が美しくみせる。まるで戦いが戦いでないようだ。
花火が俺の周りのアンデット共を消し去り、俺はもう手を出さずとも良い。
しばし、観賞。
花火が消えて、駆け寄ってくる彼。
「エルルさん、大丈夫ですか!?」
どうした、さっきまでの大人びた表情はどこ行った。すっかり幼さがにじみ出てるぞ。
「俺は大丈夫だ。さっさとほら、ウェルっちのとこに行ってやれ」
「すみません……では!」
聞き分けがいいのは良いことだ。でも、俺をもっと案じてくれても良かったんだけどな。
それだけ信じられてるってことか。
走り往く後ろ姿を見て、それから一瞬にして何もいなくなった俺の周りを見渡す。特に意味はないが、そうしたかった。
「強さ」か……
彼の強さをどう言えばいいのか、やはりよくわからない。けれど一つ言えるのは、この「強さ」を、彼は分かっていないらしいということ。
ということ……
ああ、ああ、ああ!そうか。そういうことか。
わかった。わかった。この強さの意味が、わかった。
強さというのは、自分では気付かないんだ。
自分で強いと思った時、それでおしまい。
一生強さを知らずにいること、それが強さへの近道なのだ、と。
「強さ」とは、「知らないこと」だと。
まだまだ未熟で幼い、彼の後ろ姿。そっと見つめながら、俺は今なにか凄いものを貰った。




