戦闘到達点・結
取った。確実に取った。顔に次いだ腹部の爆発。しかも今度は白爆発ではなく本気の爆発。火を基としたボンバーだ。だからこそ、確実にやっただろう。
と、思ったのだが。
「ギイエリャアアアアアァァァ!!」
「……ちっ」
焼け爛れ焦げ落ちたボロボロの腹部。それでもなお、死霊は倒れない。まったく、むしろたぎって。
「ぎゅしゅるっ!!」
鍵づめを立てて攻勢に出られた。これは……
まずい。非常にまずい。今優勢に立たれると、札一枚では太刀打ちできない。
札一枚では倒しきれないのが解った上、だとしても札の書き上げには距離と時間が必要……
つまり結構ヤバイ。
どうすればいい?どうすれば、この状況から脱せる?
分からん……分からんぞ……んんん……助けて青猫機械~!
爪が迫る。迫る。どうしよう、どうしよう。考えろ、いや考えるな。考える時間などない。
どうすれば、どうすれば……
目と鼻のさきに爪が迫る。
ああ、終わったかも。こんなところで、終わるのかも。
肉が引き裂かれて、原型なんてないほど痛め付けられるんだ……
ああ、どうすれば……
爪が、絶望の淵の俺に触れかけた、その時。
「ゼァラァッ!!」
一声の威勢と同時に、死霊の体が後ろに吹っ飛んだ。
声の主が俺の側に着地し、顔を伺ってくる。
「おいおぃ……そんなもんかァ……?」
リアシュルテだ。絶望の影が、一気に晴れてなくなった。
「この前の力はどうした……あの時のお前ならこれくらい簡単だろ。神に渡り合えたんだろォ?見せてみろ、お前の――――――チッ……邪魔だ!消えろ!!」
リアシュルテが右手を掲げた先、相手のもう一人の死霊がここぞと突撃してきていた。
しかし直後、死霊は全身を粉砕させて消し去られた。あっけなく、その死霊はもう登場しない。
ふぅ……と軽く溜め息を吐いてみるリアシュルテ。所詮、こんなものは雑魚だと言うのが言わずとも分かる。
なるほど、やろうと思えばいつでも殺れるということか。つまり、お前も使えないなら殺る……とそうも取れる。
暗示さえ狂ったその言葉と気配から伝えてくるコイツは、やはり全てが狂っている。
それでいて、こうして俺に向き直り、先の狂った笑みとは全く違う優しく幼い笑顔で彼女は立つ。
「とにかく……がんばれっ!」
「な……!?ちょ、ま……!?」
そうして戦闘の雑音の中、リアシュルテは俺の頬にそっ、とキスをした。
一瞬、この場の音が消えた。なにも考えられなくなった。頬に伝わる、優しくて柔らかい感覚がそうさせる。
そして。長くも短い沈黙の末。
「口は今度な!ほら行けぇっ!!」
ドンッと肩を押されて、俺はそのまま死霊に走り出す。
頬が赤らんでいるのも、耳が赤くなっているのも隠したつもりで。決して変な気を起こしたりしないと誓ったつもりで。
「やっぱ、狂ってやがるっ!」
筆を呼び出す。高速で筆を走らせ、一枚また一枚と札に術式を込めていく。
込めるのは、まったく同じ一つの術。最初歩にして、結局行き着く術。
何故かさっきよりやる気なのは考えすぎだろうか。
もっと、もっと書いて、もっともっともっと。
何故か、見ていられると思うと無性に強くなったと思える。
オーバーキルでもいい。お前だけは倒す!
腕に抱え込むほどの大量になった札。同時に、間合いへ。
刹那ばさあっ、と俺の腕の中にあった札が全て、宙を舞った。準備は整った。いざ、最後の一撃だ。
札の花びらに覆われた死霊は、ふと少し動きを止め、何なのかと言わんばかりに硬直。
ここだ!!
詠唱。
「蒼炎、浄せよ!!」
数多の札が呼応して、死霊を包み込み。
妖魔には妖魔の如く、蒼く燃え上がった。




