プレリュード
記憶が、異常すぎる拒否を示している。私ですら拒むような力がかかっている。私を、記憶を司るこの私を、拒む力だ。到底普通の記憶なんかでそんな真似はできない。
絶対に人に知られてはいけない何かが、そこにある。生半可に冗談半分で言っているのではない。これほどまでに拒絶するのだ。禁忌の一つや二つ犯していても不思議はない。
優しく覗くのが無理なら、少々手荒にこじ開けるでもして見てやろう。でも、加減はしないと少年を壊してしまう。それも含めて面倒な作業だ。
でも、それは二の次。いってしまえば、別にどうでもいいっちゃいい。見なくていいと言えば見なくてもいいのだから。
今は、縛られた魂たちの記憶を探すのだ。
さっさとこの案件を終わらせてやる。
それでヨヅキをたっぷり虐めてやる。
前世の未練から生まれる、か……
前世の我は一体、どんな姿だっただろうか。何をしていただろうか。
未練なんて、なかっただろうか。
おかしいな。生と死と転生を司るというのに、我は死を知らない。生の誕生も知らない。なぜ生に執着するのか、わからない。何も、経験していない。
リアシュルテが言っていた。
『神になるとき、器はその記憶を消される』
おかしい。おかしいな。
我は今、前世に執着しているらしい。
生への固執か……何ら死霊と変わりない。
だからこそ死霊を消せば、なにか分かるかもしれない。
行こう。我は知りたい。我を知りたい。
知りたいがために、死を迎えに行こうではないか。
救う。この街を、ヨヅキを。
俺は強くない。せいぜい二人程度しか守る自信のないくらいの強さ。それでも、いい。それでヨヅキと……いや、ヨヅキが笑ってくれるのならそれでいい。
死にたいわけじゃない。死ににいく訳でもない。"別に"死んでもいい、それだけだ。
ヨヅキのためなら、俺は死ねる。メルナが望んでいるのなら、俺は死ねる。
二人のために戦って死ねるなんて、本望。
この戦いに、俺は人生のすべてをベットする。
負けられない。待ってろ、笑顔で待ってろ、ヨヅキ。
見てろ、メルナ。
ウェルは昼下がりになってようやく帰ってきた。
そして夜。日も落ちて久しい頃合いに、俺たちは最初の門に集まった。
そして、無言のまま行軍を開始した。
ぐんぐん進んでいく。みんなそれぞれ、考えてることがあるんだろう。
俺も、確かに考えてることがある。
本当にこれが、正しいのだろうか?と。
確かに、ニズリス・ブールには死霊がいるはず。
けどそれは、本当に正しいのだろうか。
それは、本当に求めるものと同じ死霊なのか。
俺にはまったく分からない。でも直感は、「正しいのか?」と疑問しか表示しない。
でも、それは一旦忘れよう。今は集中すべきだ。
失敗すれば、人が死ぬ。
こんな経験ははじめてだ。レイド探索任務は。
こんな経験ははじめてだ。パーティ戦闘は。
こんな経験ははじめてだ。目の前で人が死ぬかも知れないのは。
心の隅は、怖いって叫んでいる。でも、押し殺す。怖いだけで、逃げられるものじゃない。
この世界は、前世とは違うんだから。
明日なんて、あるかわからないんだから。
「そろそろ、死霊の領域だ。覚悟しろ」
「ああ」
「うむ」
「おー!」
覚悟しろ。
自分でも繰り返す。いいか、覚悟しろ。死ぬんだ。
覚悟しろ。
「いくぞ!」
さて、これが最初のストーリーのクライマックスかなー。
面白くなってきたじゃない。
でも、まだまだ物足りない。
ヨヅキのトリックに気付けば、もっと面白くなったというのに、感付くのが今なんて……
そこは面白くない。
けど、ここからもっと面白くしてくれる。
そうだよね?
風間くん。
ご褒美が待ってるんだもん。全力出せ。
さあ、神に至る道、開いて見せてよ。




