悠久の時を経て
ひとまずヨヅキを家まで連れ帰り、ベッドに寝かせてから、俺たちはそのベッドを囲ってエルルさんにニズリス・ブールの話を聞いた。
なるほど、死霊の原因は過去の魂が怨念として残ったもの、ということだろう。それならば辻褄は合う。
「しかし、何故この二年だけなのじゃ?普通、怨念ならばこれまで継続的に現れていなければ辻褄が合わぬぞ」
全怨念に謝りたい。辻褄もクソもなかったじゃねえか!
サクラのごもっともすぎる質問聞いて、何か虚しくなったわ。エルルさん、回答して仇討ちしてください……
「ほんとだな、じゃあ死霊と過去の怨念は関係ないってことなのか?」
おい。あっさり自分の意見曲げやがったな。さっき説明にどんだけ時間かけてたか覚えてらっしゃらないようです。
ってか、死霊と関係がないってのなら結局死霊ってなんなの?もう分からんわ。
「エルル、そのニズリス・ブールであった出来事、全て起こった年と月日は分かるか?」
リアシュルテがすっと声をあげた。
それに対してエルルはうーんと唸る。回答に困っているように見える。
「最初のは分からない。流石にその時代の文献に触れられるほど格式高い人間じゃないし。けど、アーネヴィトルとの戦争なら――――」
エルルが息を止める、詰める、息を飲んだ。
目を見開き、何かに驚愕するように顔を変えていく。
「今年の、いや、明後日が終戦記念日のはず……!100年目の……!」
サクラの表情が一変、冴え渡るように鋭い目付きへと変化した。
「百年、のう……」
「何かよくない数字なのか?」
聞いてみずにはいられず、聴いてみる。けど後から思う。質問の台詞がガキの思考をしている……!
「死から百年。その年は"白百年"と呼ばれ、人間の寿命で言えばおよそ一生を終える年。死霊がより活発に……特に怨念など特別な感情の塊は爆発的に動き出す。仲間を生み出す、というか死に出すためにの」
白百年、か。聞いたことのない単語だが、どこか仏教じみた言葉だ。中身意味は無視してだけど。
でも、だとしても疑問がある。
「じゃあ、俺と戦ってメルナペアレンツを連れ去ってったあの影、どうして普通に対話出来たんだ?普通100年まとわる怨念なら今の人々と話が噛み合わないんじゃない?」
そう。あの影は俺と対等に、齟齬なくあくまで普通に対話が可能だった。本当に白百年の死霊なら、価値観とかそういうところで絶対に話が噛み合わないはずだ。けど、俺は間違いなくあの影と対話が成立していた。断言する。
「んんんん……」
「ふむ……」
「むむむぅ……」
「うーん……」
四者四様悩みの声を上げるなり。が、お一人出していない方が。
「いずれにせよ、ニズリス・ブールにいって私の記憶を使うのが最適、というかそれしかないらしいな」
「そうだね」
今は多分、幾ら考えても分からない。だから、百聞は一見にしかないし百の熟考一度の体験に劣り。
「ニズリス・ブール、行くか……」




