怨念渦巻く城
ニズリス・ブール。
今ではその存在こそ認知されていることが少ないほど、名の知れぬ忘れられた場所となっている。
その昔、この我が国ゼァネール建国に多大な貢献を残したと言うことは、最早人々の記録にはない。
しかし、少しでもこの街の結末が違えば、ニズリス・ブールは歴史書にでかでかと書き残されていたやもしれない。廃墟にすらならなかったであろう。あんな惨事さえ、なければ。
かつてこの地域、ノセリオ地方は魔物の蔓延る「開拓不可放棄地帯」とされていた。その為に人は寄り付かず、まさに「未開の地」状態として放置されて忘れられていた。
そして。時は世界における「領土拡大」の風潮が強まった「広国」の時代であり、各国が静かに領地を奪い合っていた時代に突入。そこですぐさまに目を向けられたのがここ、人間不干渉領域たるノセリオだった。
ノセリオの広大な大地と多様な地形が有れば、戦争面でも、産業面でも、国力が格段に強まる。
それを見抜いた現在のゼァネールの前身体たる「ケラ・ゼアネラ」が、魔物の討伐や環境調査の為に進出し築き上げたのが、一夜の城塞都市「ニズリス・ブール」である。
拠点到達までに、おびただしい数の死者が出ているということは静かにしておこう。
そして、勿論ニズリス・ブールは出来たとはいえ、問題は多かった。その地の魔物の排除だ。
ゼァネラは兵力の二割を派遣し、この地の魔物たちと一大戦争を始めた。
四年にも及ぶ孤独の戦争で、死者は兵のおおよそ四割。
数万人の命がこの地で失われた。
魔物の排除の末、ニズリス・ブールは国境を確立させ、ゼァネラはゼァネールを建国。栄誉の街としてニズリス・ブールは栄えた。
しかし、それで終わるほど歴史というのは甘くない。
隣国は、この事をよく思わないのが当たり前。そして、この地を欲しているのもまた普通。
戦争になるのは当たり前だった。
隣国アーネヴィトルが国境を侵し、全面戦争が始まる。
「抗争」の時代の幕開けでもあった。
死者は凡そ数百万人。国民の三割を犠牲にしながら、ニズリス・ブールは最前線で闘い続けた。
死者は踏みにじられ、蹴り倒され、怨念渦巻きながら消されていった。
2年の歳月を経て戦争は終結。ゼァネールは苦戦の末に勝利をもぎ取った。しかし、それでもまだ終わりはしなかった。
ニズリス・ブールでの内部抗争だ。
アーネヴィトルの工作兵によって仕向けられたとされるが、真偽はわからない。
何故、何を原因として、どういった者が闘ったのか。何も残っていない。しかしこの抗争の後、忽然とニズリス・ブールは崩壊していた。
死者の魂は数千万に届き、今もその朽ちた地にまとわりついている。らしい。




