鎧袖一触的な戦闘完結
このまま突っ込めば影の突きだした爪に一直線に突貫して神風さようならになる。靖国で会おう。ってそんなことにはなりたくない。そこで出番だ、お前。
ヨヅキは一度痩けたが、震えながらも足を止めずに走り続けている。その距離はまったくもって微々たるもので、影が気にも留めずにこちらを向いているほど。つまりこの切り札を使えば、ヨヅキに当たる可能性がある。しかし躊躇えば俺の死は確定。ようは究極の二択だ。
己を捨てて他を救うのか、他を捨てて己を護るか。
他を殺すか、自分を殺すか。
考える暇はない。答えは早急に求められる。けれど、俺は別に焦らない。もう答えは決まっているから。
地面をこれまで以上に強く蹴り飛ばし、さらに加速する。さて、回答の提出といきましょうか。
「ひゅっ!!」
転職し、現れたのは陰陽師。今回も祓魔を使用して、確実に祓う。
しかし今回はすこーし違う。
左手に札はなく、右手は筆の代わりにワンドがある。
木製の棒切れに、白い紙切れが幾つも連なっている杖のようなものだ。
陰陽師系統職の固有武器、幣。いわゆるお祓い棒の初登場だ。札術、陰陽術の中継を担う。しかしつまり基礎体な攻撃力はないんだな。
しかし、やはり今回はいつもと違う。
幣を肩から振りかぶり、意識を幣だけに集中させる。
今回は、武器という名のリーチが存在する。さらに、近接しなければ使えない訳でもなく、完全にこちらに女神は微笑む。もうこれ以上女神はいらないが。
さあ、決着の時だ。
「うおおおおおおおおつ!!!」
「ぎいいいいいげぇええあぇええあえ!?」
お互いに最後の渓谷である。どちらかが堕ち、どちらかが死ぬか。
影の爪と、俺の幣が交差する。
競り勝つのは。
「くらえええええええああああ!!?」
揺れる幣の白い紙札。はためいてその衝撃を伝えている。
何故ならば、その先がもう刺しているから。
影の心臓があるべきところに真っ直ぐと、よく入ったなあと思わざるを得ないほど何で入ったのかよく分からない。
命中した。確実な手応えが、今度はしっかりとあった。
やった。影を倒したのだ。
しばし沈黙が世界を襲った。
と、影がほわほわ……とまさに夢から覚めるように、水の滴の音のようなものを鳴らしながらパラパラと体が散らされていく。
「やった……の?」
「ああ、終わったよ」
ふいに立ち止まって振り向いたヨヅキに駆け寄ろうとし、散っていく影の横を通ったとき。
あった、人の声が。鳴らされた。
『二人は盗んだぞ……』
足が止まる。
俺は知らず知らずに、消え行く影を鬼のように睨みつけていた。
それでも、気にすることなく死にかけの影は続ける。
『私は消える……しかし二人は既に別の場所へ移動されている……』
「何故わざわざそんなことを言う?そもそも何でのんなことを?というかお前は誰なんだ?これまでの事例はお前がやったのか?それとも誰か裏にいるのか?誰の指図で何をやっているんだ?」
『ふん……知りたがりはだから困る……まあ、どのみち私はもう消えるから……答えることは出来ないな……』
自嘲気味にそう答えた影の男の声。
『けれど、お前との戦いは楽しかった……最後がお前でよかった……だから……特別に教えようか……』
無機質に消失していく影のその最中、影は最後にこうのこした。
『ニズリス・ブールに……全てはある……』
『ニズリ――――』
そうして、消え去っていった。




