迫る刻限
確実にヒットした。これは命中だろう。もう札の感覚がない故、スキルは100%成功している。
だけれども、問題はそう。当たっていたとして、ダメージになっているか。発動したとして、捕捉出来ていたか。
つまりは、相手が俺より一枚上手かどうかの問題だ。
その答えは、明確だった。
光が消え、札も消えた腕の先には、もうひとつ消えたものがあった。
影が、いない。
「何処だ!?」
周囲をできる限りの全てを振り絞って見渡し眼球を高速旋回させる。しかし、見当たらない。
確かに当たったはずだ。手応えは十分に感じたはずだ。
なのに何故避けられた!?
「リアシュルテ!アレは!?」
こういう状況下であれば、リアシュルテの記憶を頼るしかない。俺にはそんな力がないのだから。
リアシュルテは即座に術の発動体勢を取り、目を閉じて集中する。
そのレイコンマ二秒後、カッと開かれた目をリアシュルテは俺に向ける。
「急げ!家を出て左!そのまま直線上のヨヅキを追え!」
「狙われてるのは、ヨヅキか!!」
その瞬間には咄嗟に駆け出していた。本能がそうしろと言っていたようだ。なにも言わずとも体は勝手に動く。
「後で追い付く!」
後ろからの声に親指でこたえながら、俺はまた走る。
今日は走ってばかりだ。走ってばかりだけれど、人の命と比べるとそんなものはどうだっていい出血だ。命あればいくらでも走れるのだから。
「転職!!」
走りながら詠唱して、韋駄天へと切り替わる。
韋駄天の服装は和製とも欧製とも言えないような黒のひらひらした何か。
それでいて走りやすいのだから革新的、というか通り越して怖いのだ。自分で走りながら『よくこけないなぁ』と。
おっと、そんなことを考えている余裕はない。今は走れ、走れ、走って辿り着け。救うんだ。
「神足ノ行方!!」
最大出力でブースト。一気に距離を稼ぐ。
直線とは言えど、ヨヅキは既に遠くにおり目視不可。
影も、今の俺の力ではどの辺りにいるかは割り出せない。
リアシュルテであれば可能だが、生憎アイツは遅い。
知的な子はゆっくり来ればいいさ。俺たち脳筋を見せつけるんだよ!
「うおおおおおおおお走れ走れ走れ!!」
すごいぞ!今の俺は光の速さだ!
いや、それは言い過ぎですゴメンナサイ。
見えた!
ヨヅキだ。影は見えない。つまり俺は影よりも速いらしい。しかし油断ならない。通り越したかどうかはさておき。
「ヨヅキいいいいい!?」
声に気づいて、ヨヅキが振り返った。
「キョウヤさん!?速!」
その瞬間。
俺とヨヅキとの間に、黒い蠢くものが。
「!?」
クソッ!
待ち伏せしてやがったのかこの人でなし!
あ、元々人ではなかったわ。
そして、ばしゃああああんと出現したのは。
やはり、影だった。




