疾風の如く、空駆ける不穏
何だろう、何だか、とっても嫌な感じだ。
ここ数日、この違和感が強く漂い続けている。原因はわからない。
これが僕の妄想なのか本当の違和感なのか、突き止める術なんてないから分からない。
何か外であった事と関係でもあるのかと考えるけれど、僕は一歩も外に出ていないので何があったかなんて知らない。知る気がない。
実際今日が何月の何日かすら知らないし、時間は太陽の位置くらいでしか知る気がない。
どうせ空気が重いことくらい、この数年間幾度となくあったんだから、気にするだけ無駄かもしれない。一度寝れば気も晴れるだろう。
って、さっき起きたんだけどなぁ。
今は大体正午頃だと思う。ここからまた二度寝……というのは無理がある。幾ら不規則な生活の僕でも、こんな時間から二度寝は抵抗がある。
仕方ないか、今日1はこの空気に猶予を与えようっと。
だとしても、この空気に走る違和感とピリピリとした感覚はなんなんだ?
答えるものはいないけれど、分かる人すらもいないだろうな~と勝手に納得して自己満に浸る。
これも、呪いってことなのかもしれない……
そう思うことにして、座り込みっぱなしだった埃まみれのベッドを降り、足取り重々しく階段を降りる。
一段、また一段と降りていく。
ヨヅキ本人には分からなかったが、その一段を降りるたび、空気が重くなっていっていた。
同時に違和感が増幅する。誰の相手にもされない違和感とは、無いのと同じだ。
一歩、一段。
違和感が増える。気持ちの悪さが一層に増す。
そしてついに、最後の一段。
きっと、何かが起きる。
ぎぃ、と音を立てて階段が軋み、右足を上げて。やがてゆっくりと前に持ってきた右足を、ゆっくりと降ろす。
地に、足がついた、その瞬間。
ぐちゃ……と言う泥をかき混ぜた時のような音。
咄嗟に辺りを見回したヨヅキだけれど、いる訳がない。
そう。きっと空耳だ。
そういって視界を戻し、おもむろに壁側たる左を見れば。
真っ黒い、人形の何か。
それが立っている。
しかし。
そう認識できたのは一瞬前まで。
黒い、まさに「影」とでも言うべきそれが、襲いかかってきたからだ。
『ふぃぃすぅぅう!!』
謎言語を喋る、これは面倒だ。
しかし取り敢えず死ぬんじゃない!?俺!?
もう死ぬの、死なないの?
迫る黒。もう死ぬのか……早かったなあ……
遺書でも書いておくんだった。
さよなら、僕。永遠の別れだ。
遺書でも認めそうな、その刹那。
ばああああああん!!
「待たせた」
ドアが吹っ飛ばされていた。
「修理代は全額出すよ」
「いや。その前に仕事だ」
文字通り、ドアがこの居間の半ば当たりまで吹き飛んでいた。
「行くぞ!俺の韋駄天!」
どこか神々しい、あの少年が、メロスをやるというわけか。
面白い。




