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それから

「追跡」、これもチート部類されても良いと思うのだけれど。

「追跡、リアシュルテ!」とスキル名の後対象の名前を言うだけで下準備が完了、視界の先に道を示すように青い糸のようなものが現れる。

それは空中の大体俺の腰辺りの高さで浮き、緩やかにカーブをかけるように、流れるように、人込む大通りの中で道を教えてくれる。

それを辿り、ウェルを引っ張り人込みをかき分け進む。

大通りを進み良き所で右の路地に反れる。ここもまた露店商で賑わう通りだ。

それらの怪しい誘惑に誘い文句を振り払いながらひたすら青い糸を追う。

幾つもの露店商を通り過ぎ、また通りを反れ裏路地へ。

今度はいきなりの静寂が響く住宅街に出た。

青糸はなおも止まらず、ただひたすらに無言で道を指し示すのみだ。

俺はだんだん不安がりつつある、しかしチートスキルを信じて進むしかないのもまた現状。

結局だから青糸を追う。

静まり返った住宅街を行き、やがて広場らしき場所へ出た。

噴水と芝生がおりなす、まさに砂漠中のオアシスのようだと思う。

しかしまだまだ青糸は止まろうとしない。

スキルの効果を疑うとか嘘だとか言うのではなく、単に疲れて来た俺です。

にしても、この住宅街は何故ここまで静まり返っているのか、まったくもって不思議だ。

このエリアに入ってから、まだ人っ子一人として見ていない。

なんというか、気配がないというか、そう人が生きているような心地がしない。

まるで人だけが突然と消えたかのような、空気空間にぽっかりと空いた変な感覚。

そんなのお構い無しに、青糸は続くのだが。

本当にこの先、下手すればこの街なんかにリアシュルテは居るのか?

スキルさん?どうなんですか?


言葉は帰ってこず。


路地をまた曲がり、と思えば戻り、曲がり、曲がり、戻り。

「疲れた……」

「もうむりぃ……」

実はループしてましたーとかだったらぶっ壊す、そんな気持ちですが、とりあえずパタンと倒れそうになりました。

その視界の先に、俺は見た。

家の前でほら、笑ってるじゃん。

どうした?仕事はどうした?あ?


リアシュルテが居たのだ、しかも割とやってそうな貫禄で。

俺たちに気付き、相手と早口で会話するリアシュルテ。

ものの数秒後にはドアを閉じ、こちらに駆け寄ってきた。

そして放たれる一言。

「ここ、来るまでに見たな。見ただろうこの有り様を」

「う、うん」

「ここ、人は住んでる。されど暖かさを棄てている」

「は、はあ」

「ここ、出るぞ」

「……?」

「オバケ……死霊がな」



リアシュルテの説明によれば、どうやら名簿に書かれたうちのおよそ半数の件がこの住宅街、アルノス街にて確認されているとの事。

何故エルルさんはそこまで言わなかったのか分からないけど、多分単純に頭が回らなかったんだろうと弁護しておく。

弁護になってない気もするけど……


それは兎も角、このアルノス街には更に情報がある。

リーデで確認された幽霊、その最後の確認は丁度一月前、このアルノス街での事だということだ。

リアシュルテがアルノス街やその他街死霊関連者への聴き込み時、記憶を盗見しその発生日を推測した結果、発生日にとある規則性があることに気づいたらしい。

なんでも、

「毎月決まって19、20、21日の三日間、日没前後から数時間程度のみ死霊が現れる」

なのだそうだ。

まったくメカニズム原因諸々は不明だ。

そして今日は9月19日。

……つまり、そういうことだ。


というわけで、現在我々五人は今例のアルノス街にいます。

アルノス街、やはり人は依然見えないが、流石に街灯はガンガン点いている。消せば死霊が寄るからね。

けれど、一度裏路地に入れば、そこは闇のまた闇が広がる別世界。

そんなところに、出るわけだ。

なので裏路地を五人で調査中なのであります。

そう、五人ですよ五人、エルルさんが参戦したのです。

……要らないっちゃ要らないってのは黙っておくけど。

エルルさん、どうやら幽霊とかそういうのをどうも殴れば勝てると思っているらしく、ならなおさら何で来たんだ……と思っちゃった。

それなりにリーデへの想いがあるってことにしておこう。

それから幸いサクラは、路地裏で聴き込みの最後の一人を終えてぶっ倒れた直後に無事発見、保護した。

今は夜の闇にキャッキャキャッキャ騒ぎ、ウェルに文字通り口封じをされている。

リアシュルテはというと、俺の隣についており、いつもより微妙にテンションが高く高揚している気がする。

「リアシュルテ……ほんとに幽霊、出んのか?」

乗り気じゃない俺、この空気だと逆に違和感なんだよな……

「出るんだよ!何、ただの夜のお散歩だぞ?ビビってるのか?え?」

いや、どうしたリアシュルテ。

本当に今日はテンションがどうかしてるぞ?

いつものクールビューティー冷酷無慈悲でツンツンツンツンからのデレなリアシュルテはどうしたのか。

「もごっ……リアシュルテ、お前机の上に置いておった我のワイン、全部一気に飲んだじゃろ!?」

ウェルの口封じを突破して答えを教えたサクラ、なるほどなるほど、酔ってるのかこいつ。

酔うとこんな陽気ャになるとは……見放したぞ……(冗談)

「え?そうだ!私は飲んだぞ!美味しかったなあ……」

「なあ、お前らってほんとに馬鹿だなあって思うんだけど」

「「「は?」」」

場の空気を沈めかけたエルル、本当にを空気読んでほしい……

そう思いエルルの方に顔を向けた、その時。

それは唐突に現れた。

「「「は?」」」

「いやお前ら、二回も同じことされると流石に傷つくぞ……」

「い、いや……そうじゃ……なくってえ……」

怯え声で言いながら後ずさるウェルと、同じような表情で緊急退避するサクラ。

それにさっきまでさんなに強気だったリアシュルテが、俺の背中にくっついてガタガタ震えだした。

「何、なんだよ?俺を脅かすつもりか?そんなしょうもない遊びに付き合うより、さっさと幽霊見つけよーぜ?」

近寄ってくるエルルに、一同更に後退し距離を取る。

「なんだよ?ほんとになんなんだよ?教えろよ?」

おそるおそる、言ってみることにする。

「そこ、うしろ……肩のほう……」

肩を指差した先を、エルルがゆっくりと振り向く。

「何、肩になんかついて――――」

エルルの肩に、半透明の女性の首が載っている。

「ぎゃああああああああ!!!!?」

『きいいいいいいいいいいい!!!!』

「「「「ああああああああああ!!」」」」

ばたん、きゅ~

誰かが倒れた。

それと。

幽霊って、叫ぶんだな。

って軽いボケとかしてる暇じゃない!

こいつをなんとかしなきゃいけない!

えーと、えーと、えーーーーっと……

ストーカーのステータスを確認、特にスキルに目を行かせる。

まずい!ストーカーでは戦闘スキルが足りない!

転職先、最適な転職先、最適な転職先……!

わからない、まずいぞ、えーっとえーーっとえーーと……

じりじりと後退するリアシュルテたち、じわじわと寄ってくる幽霊。

恐怖から頭が上手くならない!

、と。

「はっ!?」

昨日の記憶が甦り、頭の中を閃光の剣戟が駆け巡る。

これだ……

「転職、魔導騎英!!!」

俺の知るなかで最もヤバいやつの1つ、魔導騎英は……強い!

チェンジ!

一日ぶりのこの感覚が戻ってきた。

じわじわと寄り付く幽霊、そいつめがけてダッシュ。

刀を抜きながら、同時に例のスキルを選択する。

あと少し、ほんの少し。

幽霊の早さと俺の魔導では、俺のほうが速い!

「うおおおおおお!!!」

喰らわせるのは、渾身の一撃!

「迫追……白虎!!!!!」

飛び上がり、剣を後ろに構えて、詠唱と同時にその剣身を唸らせ、降り下ろした。

暑く輝く刀身からの光と同時に舞い散る土煙で視界がアウトする。

今のは絶対に、直撃弾だ。

確実な手応えがその剣身に響いているのだから。

今ごろはバラバラに崩れに崩れきっていることだろう。

やはり、この魔導騎英はぶっ壊れ性能職、スーパーチート、もはや神……


そこまで想いかけた時。

ズゴオオオオオン、と炸裂音。

土煙を振り払うように凪ぐ。


「きいいいいいいいいいいいい!!!」


確実に潰したはずの幽霊が、ピンピンしている。

それと同時に、遠目から傍観していた糞ババァっから負けず劣らずばかデカイ声が掛かる。

「こいつは幽霊じゃから、物理攻撃に耐性があるのは当たり前じゃ!!」

ん?

んん?

た、い、せ、い、、、?

「こいつの場合、おそらく無効化程度は持っているはずだぞ」

つまり……もしかして……

「その魔導騎英、まったく意味ないぞ」

……?

うそおおおおおおお!?

でもまあ、言われたらわかる!

よくよく考えてみれば幽霊って実体ないし!

幾ら斬ろうが殴ろうが魔法ぶつけようが、実体なければ当たらないし!

そうですよそうですよ、私めが悪うございまして。

足りない頭が精一杯考えたのですけどねえ、やっぱ足りないものは足りないんですよ。俺の知能もウェルの胸も。

……後者は無かったことにしてくれ。

で、どうするのが最適解ですか!?


視界には襲いかかってくる死霊一匹、先程のスキルのことなど忘れて飛んでいる。

対してこちらは神が二人、人外一人、おっさん一人の大所帯である。


あれ?神が二匹?


勝ったやん。


そういえばこのチーム神二人いたわ。

ああ、やっぱり俺頭足りないや……

「サクラ!出番!」

張り上げた声に応えてくれるのは、生と死と転生の女神

、この世で一番生と死を理解した輩。

ここはちゃちゃっと終わらせろ!!

「のう……キョウヤ、我の専門忘れたのか?」

……のはずなのだけど。

「は?いや、生と死の女神だから、幽霊とかそういうのむしろウェルカムじゃないの?」

「いや、いきなりド偏見じゃのう……」

と、飛びかかってきた幽霊を指パッチンで制止させながら語り出す。

「あのなあ、我等神はのう、戦闘面では破格覇権絶対的な力を持っておる。しかしそれは『力』であって、『スキル』ではないのじゃ。神はスキルを一つしか取得出来ない。これは"原初の束縛"と呼ばれるもの。よって我等は、殴るかスキル連続しか出来ないのじゃよ」

「きいいいいいいいいいいいい!!!!」

「うるさいわ!!」

ついには幽霊を怒鳴り付けだしたサクラ。

言葉と同時に幽霊の止まった体目掛けて殴りかかった。

「えい!」

「おりゃ!」

二発とも、体を透過して無効。

サクラが泣きそうな表情になり、こっちを向いてくる。

いやあんたがさっき殴るの効かないっていったやん。

「キョウヤ、選手交替じゃ……」

肩を叩かれ、とぼとぼ退場された……

同時に、幽霊を固定していた透明結界が崩壊したらしく、幽霊が動きを取り戻した。

さっきまでの好戦的でバカな動きから、『なんかこいつらやべえ』って感じの引きぎみ控えめな感じになってしまっている。

ならば選手交替のチャンスだ。

「リアシュルテ、お願い!」

「言われるまでもない」

つかつか幽霊に寄っていくリアシュルテ、その足取りはまさに優雅。

しかし次の瞬間、リアシュルテの右手に赤色が見える。

「あ、あれって!?」

怒りを発動しているらしい。

確かに、少し場の空気が淀んでいるのが伝わってくる。

一体、何をするというのか見当もつかない。

幽霊燃やすの?

リアシュルテが幽霊に接近、と刹那、幽霊がぎいいいいっとリアシュルテに襲いかかった。

迫る醜態、鋭い爪アギト。

その時。

ばあああああんという爆発音の後、辺り一体、真っ白になった。

視界が真っ白になり、目が痛い。

なにこれ、爆発?

しかしすぐに白は収まる。

というより、集められる。

白はだんだん薄れていき、とある一点へ吸い寄せられていく。

そここそ、リアシュルテの右手、怒りだ。

幽霊はと言うと、ふらふらと地面に不時着したところだった。

肩越しにリアシュルテが声をあげた。

「怒りの炎は、その怒りの度合いを示してくれる。高ければよく燃える。それがたんたんたんたんと続けばどうなるか」

にっ、と笑いを浮かべるリアシュルテ。

「白爆発になってくれる」

こちらに向き直る。

「幽霊の弱点は光。しかし完全に消せるのは光じゃない。そこでキョウヤ、お前の出番だ」

俺を真っ直ぐに指差し、こう言った。

「お前は、陰陽師になれ!!」

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