表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/169

誰そ彼の声の章

気が付いたらサクラに抱き着かれ、ウェルに馬乗りされ、という謎すぎる状況だった。

その上で記憶改竄されたエルルが目を覚まし、俺達の状況を確認。

「お前ら……ほんとに国の人間か?俺にはただのイチャイチャ集団にしか見えな……」

リアシュルテに即座に気絶させられてた。

怖いなこの人。

と、今度は何故かリアシュルテが俺のほうへと歩み寄ってくる。

三人ポカンとリアシュルテを見上げ……


ーーーーーーーーーーーーーー


おはようございます。

すっかりお寝坊してました。

まあ、昨日は色々あったからな……。

許してほしいね。

……起きるか。

ベッドから起き上がり、冷たい床を踏む。

ドアに寄り、ぎぃ、と開け放つ。

居間には先客が二人。

「起きたか」

「よっす!元気かバババ・キョウヤ!邪魔してるぜ!」

「風間です」

リアシュルテ、それと対面式にあるエルルさんだ。

開口一番に名前間違えられるとはね……

「いいじゃねえか!別にあんま変わんねぇだろ?」

大いに変わるんだがなぁ……

「まあ、そうですね……ところで、エルルさんは何故ここに?」

と、聞けばハァ?と返され。

「俺、昨日言ったじゃねえかよ!明日朝に様子見に来るぞって!忘れたのかぁ?」

と。

うーん、そういえば言ってたような気がする。

どうでもいいから忘れてた。

何となくとりあえずおもむろに、エルルさんの顔を見つめてみた。

ら、何か変な箇所があった。

「エルルさん、その額の傷は?」

結構目立つ赤い傷。

こんなの昨日はなかったはず。

「ああ、これ?これなぁ、ここのドア開けた時に躓いてな、そのままぶっ倒れて気絶しちゃったから付いたのな」

額をさすりながら応えるエルル氏。

シュール。

「それ、同時にドア開けた私にも責任あるんだよな……」

お前かよ!?

ヒソヒソと告げてきたリアシュルテ。

うん、エルルさんにも男の意地とかはあるよね。

守ってあげよう、男の意地。

「で、今日のことを説明したいんだが、残りのお二人さんは……?」

「ああ、まだ寝ていますね、起こしてきます。少しお待ちを」

そう言ってリアシュルテが俺の来た部屋のま反対、サクラの寝室へと入っていき、ガチャガチャドンドンという音が響き出した。

何が起こってるんだよ……

結構うるさいその音から逃れるように俺は窓際に往き、窓をきいいと開けてみた。

途端に、朝の丁度いい眠気覚ましの寒さが触れる。

同時に、階下の通りに行き交う喧騒も耳に入ってくる。

朝、という言葉にこれ相応しい。

美しい朝が拡がっていた。

と。

その喧騒の中。

俺の耳に、微かに、しかしはっきりと、聞こえるものがあった。

誰かの詩。

静かに響く、誰かの。




移ろぎ 過ぎ去り


やがて 何処かに往くのか


今が今 前になり


次が今 今に成り代わる


今を辞め 前と成りて


行く末に 何があるのか


誰そ彼の 赤い光


光り失せて 前になる


前になり 前出でる


恐るるは 次だけよ


誰よ 彼よ 移ろぎ


前に 今に 次に


誰の 彼の


知らぬままに


落ちて




風のような詩だ。

流れるように現れて、また流れるように消えていった。

聞いたことのない、しかし、郷愁で懐かしい気分を誘ってくる詩。

詩っていたのは……子供なのか……

幼さの残る、しかし美しい声だった。

でも……

何処か……怖い。

仄かに、呪いのような響きがあった、気がした。

一体……誰が……

階下を見下ろすが、それらしき歌い手は見えない。

と。

「また唄ってるのか……あいつは」

振り向くと、いつのまにかエルルさんが俺の横まで来ていた。

溜め息まじりにそう言って、窓枠に肘つけ顔をのせた。

「あいつって、誰なんです?」

「ヨヅキ。12そこらのガキだ」

話し方から察するに、おそらく知人か。

まあ、街の人同士だろうし当たり前か。

「あいつ、昔は詩なんて唄うようなやつじゃなかった。俺に喧嘩売ってきたり遊ぼうって引っ張ってきたり、いじめられたからいじめ返してとかって泣きついてきたりな……」

なんか、急に黄色いメガネのあいつを連想した。

「へぇ……なんかあの声からは想像出来ません」

「そうだな……あいつ、早いこと両親亡くしてっから、ずっとなるべく構ってやってたけど、あんな声は聞いたことなかった」

「ああ……」

「でも、親を亡くしてなきゃ、逆にあのうるさいあいつはいなかっただろうな……何とも言えん」

口ごもることしか出来ない。

他人事だけど、両親がいないってのは苦しいと思う。

だけど、エルルさんの言うような無邪気なヨヅキは、それから良くしてくれた人達の笑顔の結晶なんだろうな。

どっちつかずだ。

「けど……けどな」

一変、急にエルルさんが肩を震わせだす。

「アイツは変わっちまった……それも、最悪のきっかけで」

感情のしっかりした人だ。

もう涙ぐんでいる。

こっちまでうっと来るものがある。

「それは……」

エルルさんが深く息を吸う。

そして、

「あいつには、ずっと隣にいた女のがいた。メルナってやつだ。俺のとこにヨヅキが来たとき、必ずその後ろに付いてきてた。片時も、離れたところを見てない」

また深く息を吸う。

「それで、あるとき……あの時……あの日……『探検だ』とか言ってアイツらに着いてくるようごねられたんだ……けど、依頼があったから……断るしかなかった……何とか言ってやり過ごして……アイツらは二人で何処かに出掛けてった……それが、それがダメだった間違いだった!!」

息が荒く激しくなるエルルさん。

俺は見守ることしか出来ない。

ふう、ふうと抑えて、エルルさんは続ける。

震えて、怯えたように。

「何処に行ったのか、わからない。けど、夕方になって通りを歩いてるヨヅキを見つけた……一人……一人だった!!俺は怖くなってヨヅキを問い詰めた……いつも離れなかったのに……メルナが……いない……もう帰ったのかって、一人なのはメルナが家に帰ったからだよなって……でも……ヨヅキは何も答えずに、走ってった……次の日だ……メルナの両親から、『メルナがいない』って聞いたのは……その日だ……街の近くで霊が出たって……人を拐ったって聞いたのは……」

「つまり……メルナさんは……」

「霊に最初に拐われたのは……多分……メルナだ……」

そこで、へなへなとエルルさんは崩れ落ちた。

「ヨヅキの家には鍵が掛かってる。窓も閉めきってカーテンが掛かってる。何かを怖がるようにな……」

それから、俺のせいだ、と聞こえた。

そうか。そうか。

どうやらヨヅキという少年が、この依頼の鍵になってくるようだ。


暫くし、リアシュルテが寝間着のままのサクラとウェルの首根っこを引っ張って持って来、強引に座らせた。

エルルは結構引いていたが、やがて何もなかったように話し始めた。

「さて、(くだん)の霊についてだ。俺の依頼はまず1つ。ほら、これ見ろ」

そう言ってエルルがズボンのポケットから一枚の紙切れを取りだし、すっとテーブルに置いた。

四人各々除きこむ。

そこには、


カレミル  ノルハバツ


ゼーン  アルトエード


コトエリ  アバ


メアリズ  ハベリアネル


と、人の名前らしきものが殴り書きしてあった。

あと、斜端にボソッと


ヨヅキ


と小さく書かれていた。

「これは?」

聞いてみる。

「霊に家族なりを拐われた、殺された、もしくは霊を見たやつの家の名簿だ」

だんだんテンションが低くなっていく。

「今日、日中を使ってコイツらに会ってきてほしい。会えなくとも、その家に行くだけでもいい。兎に角、そこから何か手掛かりとか、共通点でもいい、何か見つけて来てほしい。俺みたいな馬鹿には出来ない、お前らみたいな頭の冴えて魔法とか使えるやつらだから出来ることだ……引き受けて、くれるか?」

そう、最後は自信なさげに問いかけてくる。

そんなの、返す言葉は決まってる。

「勿論です」

「ええ」

「うん!」

「当たり前です」

各々の言葉に、またエルル氏は感涙を流しそうな顔をする。

「お前らぁ……」

しかしふんふんと首を降ってとりなし。

さらに懐から、大量の同じような紙切れを取りだし、ドンっとテーブルに追加した。

は?

「お前ら、本当に感謝する。この恩は必ず報いる。ありがとう」

見なかったことにしとこう。

「いや、こ……こっちも上からのい、依頼ですからね……」

おいサクラ、水を指すな!

ボソッとさりげなく言うのが一番質悪いぞ!

と、エルルがガバッと立ち上がる。

「さて、じゃあ俺は行くが、今夜日が暮れたらまたここに来る。何が分かったか教えてほしい。それから、現場に乗り込むぞ。それじゃあ」

ずんずんと出口に向かっていくエルル。

「ま……任せてください!」

「ああ」

その姿は、まさに男。

ずんずんと進み、ドアに到達。

ノブに手を掛けて、ふいに動きを止めた。

「そうだ、言い忘れてたが……」

振り返らずに言ってくる。

「ヨヅキのところは、別に行かなくてもいい……」

消え入るように言い、威勢よくドアを開けエルルは出ていった。

その余韻が部屋に響き渡る。

つくづく凄い人だ。

と。

「さて、我らも行くかの」

「今日中に終わるかな……これ」

サクラとウェルが立ち上がって言う。

いやお前ら、まだ寝間着だ……

もう着替えてる!?

もしかして俺がエルルさんの去っていったドアぼーっと見てたすきに早着替えとかしちゃってた!?

うひょおおおおお!?

「……おいキョウヤ、変な想像しとるじゃろ」

「してませんが!?」

全力で否定します。

今のは断じて変な想像じゃない。

お年頃の普通の想像ですね。

「ほんとかの……?」

ええそうですとも!

勿論そうですとも!

……ってそれよりも!

「それよりも!話戻そう!この家庭訪問なんだけど……」

「逃げた」

「うるさい!で家庭訪問なんだけど!2グループに分担しませんか!」

場が凍る。

あれ?俺そんな気まずいこと言ったか?

「それで俺は、ウェルと行きます」

場がまた気まずくなる。

と、さらに追い打ちが。

「お前、とうとうやりおったな」

「そんなやつだったのか、お前……」

「主、いくらなんでもこの体ではダメだよ……」

??



「お前らさあ……」

んんんんんん……!!

「何でもかんでも下の考えになるのやめよう……」

ふう……何とか抑えられた。

「俺はウェルのその変換の力が必要なんだよ!」

「あれか?変換でウェルにぼいんなお姉さんに成って貰おうって魂胆なのかの?」

「だからそういうんじゃねえよ!」

俺ってそんなにヤバい顔してるか?

心の目で自分を見つめる。




案外ヤバい?

いやいや納得するんじゃなくて!

「俺、ヨヅキのところに行く」


という訳で我々二人は現在、ヨヅキくんのお宅の前にいます。

街に繰り出して聞き回ったらほんの数十分足らずで辿り着けた。

俺・ウェルのヨヅキに突撃するグループA。それと、その他担当のリアシュルテ・サクラのグループB。

ちなみにエルルが置いてった紙切れの枚数は12枚。

それに代々一枚つき6、7の名前があるから、結果リアシュルテとサクラでおよそ少なくとも71軒を回ってもらうことになる。

それに二人一緒だと到底終わらないので、別行動の二人。

実質グループBは存在しない。

まあ別行動したって一人35軒は回らなきゃいけないんだけどねー!

頑張ってね!

俺達?

一番の厄介な案件やってんだから手伝いませんよ?

あとそれに、あの二人神だし。

俺達神じゃないし。

神ならなんでも出来るでしょ(ド偏見)?

ま、神たちには頑張ってもらって。

問題は俺達のほうだ。

とりあえず、扉を叩いてみる。

「すいませーん」


反応はない。


もう一度、今度はちょっと強く叩いてみる。

「すいませーーーーーん!」


反応はない。


ならば今度は、ウェルにやってもらう。

「ごめんくださーい」

なかなか可愛いではないか……

あいやいや、そんなつもりはない。


反応はない。


ならばウェルも強めに。

「ごめんっっ……くださあああああい!!」

強すぎない?

鼓膜破れるかと思った。

ほら、ここ裏路地なのに表の通行人がこっち見てるよ。

それにあちこちの住人がこっち見てるよ。

恥ずかしいよ。

けど、この容姿だし……

普通だな。


で反応はない。


試しに耳をドアに近付けてみる。

これじゃ完璧に変質者だ。

あ、ウェルも真似してやってるから大丈夫だ。

ここに定義。

どんな変質行動でも、ウェルと一緒にすればそう見えない説。

で、何してるかって、中の音を探ってます。

……

……

ゴトッ


聞こえた。

これ、もしかして。

あっちも同じことしてるのでは?

さっきの音、ドアに響いてるんだよな。

だとしても、調べなきゃわからない。

ということで、調査タイムだ!

こういうこともあろうかと、あらかじめ使えそうな職業を探しておいたのだ!

誰も見ていないかあたりを確認。

みてないな、よし!

ということで転職発動!

「マジシャン!」

旅人服が光り、チェンジ。

代わりに出てきたのは……

燕尾服。

シルクハット。

よく見るステッキ。

マジシャンだ!

そしてすかさず、

"透視"発動!

マジックの定番、透視!

ほんとはタネとシカケがあるんだけど、異世界にそんなものは要らない!

スキル1つで出来ちゃうんです。

さて、ドアの先には何が見える……?



見えた。

やっぱり。

小さな少年が、ドアに張り付き背を向け座り込み、こちらを伺っていた。

よし。

ここでようやくウェルを呼んだ理由が意味を成す!

「よろしく」

「うん」

頷き、ウェルが立ち上がり。

どろんっとその体を煙で覆う。

そして現れたのは……

「おい、ヨヅキ……俺だ。開けてくれ」

エルルとなったウェルだ。

透視の先で、ヨヅキの体がふいにピクついた。

反応あり。

「もっと」

刺激してやんないと。

「メルナのことで……分かったことがある……」

勿論これは嘘だ。

誘い出すための妄言。

そして、ここからが賭け。

これに掛かれば成功、間違っていれば失敗。

無言でウェルに視線を送り、その合図。

頷き返したウェル。

そして言う。

「メルナが……そう……その時を……見ていたやつがいた……」

言ったその直後。

ガチャッ。

開かれたドア。

驚愕?絶望?そんな表情で立ち尽くすヨヅキ。

その先には。

小さな女の子と、旅姿の青年……つまり、普通の俺達が立っていた。

「……え?」

「ごめんください」

ビンゴ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ