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記録の女神

困惑して立ち尽くしてますが。

こいつら何やってんの?

いや、マジで何やってんの?

馬鹿なの?

記憶の改竄?

馬鹿が過ぎますわよ?

「おい、聞いてんのか?さっさと服着てこい。消すぞ」

「はいすいません許してくださいまし迅速に対処致しますでは」

リアシュルテに一睨みされて寝室にダッシュ。

思考と行動がバラバラだ。

けどあのヤバげな目付きで消すぞとか言われると本能が「逃げろ従え」って言ってくるから勝手に動くんだよ。

仕方ない。

だから俺自身話をまったく聞いてないんだけ……あいやいや!しっかり聴いてた聞いてたぞ!


うん。ループするからこの話おしまい。


ドア前で急停車、90度転換しドア入りまーす。

えー左手に見えまするは私風間の旅人装束にございます。

それを引っ付かんで荒めにながら着ていきます。




……二分後です。

おかげで落ち着く服に再会出来ましたな。

颯爽とドアから登場しまーす。

別に長くもなんともない髪を靡かせまーす。

痩せぎみの体、見せつけまーす。

需要ゼロだなおい。

ほら、こいつらの顔見てみろよ!こんなに……いい……

いや、顔が死んでるや。


踊るのやめてそっと登場するわ。

んで近くに着席した。


で、そうだ着替える前から言ってたことだ。

「記録を改竄するって、何?」

よくぞこの気まずい空間で言えたぞ俺!

しかし、その勇気は空しかった。

「お前、覚えてないのか?私は怒りとあと1つ、何を司ってるんだったっけ!?」

秘技……質問返しッ!!!

これやると嫌われるらしいよ。

現にそれやって嫌われたやつがここにいるんだけどね。

なら同族として正々堂々答えてやらねば!

「んんんん……」

いくぞ……正々堂々と……

「んんんん……!」

正々……堂々……

「むんむんんんん……!!?」

目をかっ開いて言うぞ!

「んんんん……分からん!!!」


視線が冷たい。

今なら南極行ける。

と、氷山リアシュルテが何かシャベル。

「お前、見せただろう?あの少しの夢物語。あれのことだよ」

すうっ

「記憶操作っていったろ?だし、記憶改竄が出来なくて何が記憶操作だってことだよ」

昨日のあの1コマが連想される。

「あーー……そういえばそうだったなー……」

「何が"そういえば"だ。私がお前に見せたものに意味はなかったということか?ん?もう一度グロいやつ見せてやろうか?ん?」

「うぐっ」

暴論で言い倒された。

けどまあ、はい。俺が悪かったです。

忘れてました。

「はいはい、そうですねスンマソン」

「あ?」

えげつない殺気が飛んでくる。

「申し訳ありません二度とこのような過ちは繰り返しません本当に申し訳ありません」

土下座。

なんかこれ前にもやったなあ。

許してもらえる?

「うん、正直でいい」

殺気が収まる。

チョロいなこの女神。

今度からこれであしらっときゃ何とかなりそうだ。

ということで、本題切り出す。

「で、記憶改竄は記憶操作の一貫ってことでいいんだな?」

「そうだ。さっきも言った」

そうか。

っと、リアシュルテが何やら長い話をしそうな雰囲気出してくる。

あ、そうですか記憶云々の説明とかですか分かりました聞き流します。

リアシュルテが深く息を吸う。

「記憶操作。文字通り記憶全てを操ることが出来る」

話しつつリアシュルテが寝かしたエルルの上に右手を出し、魔方陣を宿す。

「記憶の消去。記憶の覗き見。記憶の封印。それから、他者との記憶の入れ替え。記憶のアーカイブ第三視点視聴、正確脳内保存。相手の記憶の脳内保存。そして、記憶の改竄」

チャージしたようになっている魔方陣を、エルルの頭に翳す。

すると魔方陣の先に現れた黒い球形の何か。

リアシュルテは躊躇うことなく、それをエルルの頭に押し込んだ。

そう、押し込んだ。

黒い球が頭に触れた途端、破裂。

中からさらに黒い何かが出てき、溶け込むように頭に染み付いていく。

しかし少しすればそれが頭の中に入っていき、消えていく。

何も変わらないエルルの顔。

呆然とする三人をそのまま、話は続く。

「それから……そうそう、記憶の顕現」

「顕現?」

「そうだ。試しにお前でやってみよう。ちょっと頭がグルグルするが耐えろ」

いきなりやるんか?

俺まだ良いよの一言もゆっとらんが?

「おい、ちょ……みゅふっ!?」

と、瞬時に来るグルグルとした気持ちの悪さ。

咄嗟に俯く。

吐き気が来る。

「キョウヤ!?」

「主!」

うええええ……

同時に、頭のなかを掻き回されるようなさらに気持ちの悪い感覚。

吐き気が強くなる。

喉に色々込み上げてくる。

気合いで抑えろ……抑えろ……

と。

すうう……と引いていく不快感。

ようやくか。

そう安堵して、顔を上げた。

その刹那。

「キョウヤ君」

目に映ったのは、一人の女性。

俺の見知った、一人の。

俺の、初恋の。

あの人。

「有川さん……?」

思わず手を伸ばしてしまった。

その瞬間。

バシャアアアアンと音をたてて、まるで硝子が割れたかのように。

有川さんが、文字通り砕け散った。

「その者または物の宿した最も強いイメージの記憶をそのまま召喚、顕現させ、思うように扱える……それが記憶顕現だ」




「ふーん、そうか。お前は……そうか……前世の記憶、それとこの人生……フォルダが、2つ……!?そうかそうか……転生者とはこのような特殊事例があるのか……!」





「おい、どうしたキョウヤ?」





「こいつ、虚無っておるの」

「引くよ……」



「おい、キョウヤ?」

ーーーりしなきゃ



「おーい、主~?」

ーーかり、しなくちゃ


「おいキョウヤよ、しっかり?」

ーーっかり、しっかり……!



「もしもし?」

「起きろー」

「あーーるーーーじーーー!?」

しっかりしなくちゃ……!

しっかり!!!

「っは!?」

意識が戻ってきた。

「何が起きてた!?」

直近の記憶が曖昧、というか真っ白だ。

ただ頭の中で、誰かがしっかりしろと叫んでいた。

誰の声だったのだろう。

「お前、どこまではっきり覚えている?」

リアシュルテが問う。

記憶を遡っていく。

声……

真っ白……

それから……

硝子の割れる音……

女の人……

有川さん。

「有川さ……」

声に出そうとした、刹那。

バチバチバチィッ!!

電子的破裂音。

「がはあぇぅっ!?」

「「キョウヤ!?」」

「主!!」

脳内を駆け巡り、頭に激痛。

中から爆発を起こしたかのような暴れ様。

ギギ、ガガガッ……!というノイズが突然、追い打ち。

更に激痛を課した。

「げへうっ!?」

灼熱に焼かれたような脳内。

思考を奪っていく。

現状こうして伝えることも危うい。

電子破裂

ノイズ

電子破裂

ノイズ

ただそれらが繰り返す。

「ああ……ああああ……ああああああ!!」

遠退いていく、あの人の記憶。

初恋の人の、思い出。

薄れていく。

痛みは強くなっていく。

意識が再び遠退いていく。

記憶と共に。

痛みすら、遠退いていくように感じる。

すううっ……と。

ほら……


いや、これマジで遠退いてる。

痛みが引いてく。

だんだん落ち着いていく。

そして、そして、そして。



「大丈夫……大丈夫だ……何とか」

「ほんと?ほんとだよね?嘘じゃないよね?」

「嘘であれば呪うのじゃ!ほんとじゃぞ!」

「それじゃ元も子もないだろ……」

意識復帰。

ツッコミ可能な程には戻ってきた。

なんなんだよ、本当に。

有川さんを思い浮かべれば苦しむなんて、俺は有川さんに呪われてんのか?

転生してまで残る呪いかけたとか、お主まさか熟練の呪術使いか?

「キョウヤ、今から幾つか質問をする。その際またこのように痛みが走る可能性が大いにありうる。それを了承して答えてほしいのだが、いいか?」

「あ、うん」

いきなり職務質問?

掛かってこいよ上等だ!

「1つ。お前、昨日は何をしたか」

早速アリバイ検証か。

昨日?

簡単じゃん。

「転生して、リアシュルテぼこぼこにして、ウェルに会って、リアシュルテぼこぼこにして、この街に来た」

何かリアシュルテの顔に怒りマーク付いてるけど気にしない気にしない。

「ま、まあ、色々余計だがいいだろ。次。昨日私が見せたビロードの記憶、適当に1つ覚えてるのを言ってみろ」

へ?

それだけ?

だから簡単じゃん。

「リアシュルテが始祖神にボッッコボコにされてた」

リアシュルテが拳握りしめて笑ってるけど気にしない気にしない。

引き吊った笑いっすねー。

シワ目立つぞー。

「ま、まあまあまあまあ、会っている。うん。会ってる。では、最後。お前、前世の死因は何だった?」

だから、そんな質問ばっか簡単じゃん。

前世の死因?

「そんなの決まって……」

……

……?

「決まっ……て……」

ゴゴン

異常すぎる心拍音の大きさ。

ゴゴン

振動が異常すぎる。

ゴゴン

ゴゴン

ゴゴン

……

ギギギギギ

バチバチバチ

「ああ、ダメだこれはこのままだとああああああ‼」

死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死――――――

「落ち着け。落ち着くのじゃ」

頭を包む優しい暖かさ。

倒れこんだ俺を包む人の抱擁。

俺を抱き締めるサクラの姿がそこにあった。

一瞬にして赤面する。

「え、ちょちょちょっ……サクラ……あたっ、の!」

抵抗するが、ガッチリ固定されて動けない。

こいつ、満面の笑みでなんちゅうことしてんねん!

と、今度は上から暖かさが。

「主、頑張れ」

ウェルが体を擦り寄せて来てた。

や、おいおいおい。

これ、もしやハズレスキルの1つ、ハーレム形成するとかいうアレの効果か!?

いや、絶対そうだろ!

「ふ……大丈夫そうだな。おい、キョウヤ。さっきのことは全て、忘れてくれ」



キョウヤ、ウェル、サクラから、白い痛みの記憶はなくなった。



しばらくこんなのが続き、キョウヤたちへの説明に少し時間を掛けすぎ。

エルルが目を覚ましてしまったので、説明に失敗。

再び記憶を改竄することになってしまった。

エルル、ごめん。






さて、どう説明すればいいものか。

もう忘れさせたほうがいいのか。

しかし、何れにせよ違和感に気づく時がくる。

その時はその時。

真実を話そう。

キョウヤ。

お前は少し違う事例なようだ。

私の「記憶操作」では、操作の代価に、見合った分の一時的脳内ダメージを喰らう。

慣れれば痛くも痒くもない。

しかし、蓄積すれば、いずれ死ぬ。

それと似ているんだ。


お前の記憶は、もうお前のものじゃない。

今のお前は、風間キョウヤという人間ではない。

二人目なんだよ。

他人の記憶を思い出せばどうなる?

お前は……

そのうち短い間に、全てを知り



死ぬだろう。



でもそんなこと、君はまだ知らなくていい。

私がなんとかしてみせる。

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