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或神々の迎神

何が起こったのかシンプルに意味不明。

再び降りた紺色のビロードで、とりあえず各々の状況を確認してみる。

サクラはまだ座り込んだまま、延々狂ったようにぶつぶつと何か呟いている。

「フィザドール……ない……嘘……カソナ……嘘……ヴェルノク……それは……デサル……信じて……じゃ……」

過去の見せられたもの多分一つも見てなかったんじゃないか?

今のサクラは精神がヤバい。

そりゃいきなり、知る由もなかった人間の裏だとか何だとか、そんなことを突き付けられたらまあおかしくなっても仕方ないわ。

に、してもかなりヤバそうなんだよな。

同じように神の名前と嘘だとか信じるだとかってのをずーーーーーーっと繰り返してる。

そろそろ正気に戻さないと本気で狂い出すかもしれない。


続いて、過去を終始腕組みで見届けたウェル。

はい。こちらも変わらず腕組んだままでございます。

なんかこっちもぶつぶつ言ってるんだよな。

「怒りの発生……いや覚醒……?そう……女神……始祖神……悠久の……しかし何故……?」

言葉が途切れ途切れなのよね。

多分怒りの原因とか条件とかと、あの始祖神がいた理由を模索しているのだろう。

あれ、こいつ頭いいキャラなのか……

確かに、今までろくな頭のやつがいなかったもんな。

婆鹿(ばか)

クレイジー&アングリー。

そして俺、超平凡。

え、平凡は普通だって?

残念。平凡ってのは、簡単になれるもんじゃない。

誰かは言ったさ。

「平凡こそ最大の特異だ」

あ、その誰かってのは俺のことな。

……うん。話が逸れた。

次。リアシュルテ。

何かすっごい此方を見てくる。

質問されたいって顔をしている。

いや、あのー……その……特に、聞きたいことはない……

あ、うー……そんな表情しないで……

裏切りたくないんだけど……

あー、もう!わかったわかった!

「何が起きた?」

「すごくはやい肘打ち」

「は、はあ……じゃあ、あれやっぱり……」

「始祖神様だ。あれがいわゆる邂逅ってやつか」

うん。質問すぐ返ってくるね。

面接かな?

えー、目がギラギラしてるので……不採用。

で、まだ目がギラギラうるさいので一番聞いて欲しいのであろうことを聞く。

「あの首飛ばしたの、何」

「ふふん。これぞ念動力!……って言いたいんだが、これも怒りの力。特に名前は付けてないけど、怒りの向きと終着点を絞ったらそのキレ具合に応じて爆発が起こせるらしい。って、まんまサイコキネシスだな」

かっこいい、けど。

何でもありすぎだろ!

「ま、無駄話はこれくらいにしよう。第二幕が開演だよ」

お前が始めたんじゃないかい?

と、ウェルが久々に声を出す。

「じゃあ監督さん?次の演目は如何に?」

なんか詩人。

「次の演目。私を造り上げ、そして壊した楽園。神界でのグロシーンだ」

そういってまた幕をバサッと開くリアシュルテ。

そこに映っていたのは、見たことのある広間。

大勢の神々らしき人間で埋め尽くされる広間で、その真ん中には円形のゾーン。

気絶したままらしい過去シュルテを、「ふみふみ」と声に出しながら踏んでいる黒髪の始祖神。

ふと、重なったのは教会での場面。

変わらない。

「変わらなかった。私の周りは誰であろうと、変わらなかったんだよ」


リアシュルテの宣言通り、その光景はデジャヴでしかないと思った。

けど、神々が整列というか規則的に並んでいるのは相違点だ。

「ふみふみ、ふみふみ、おーい」

ふみふみふみふみ言う必要ある?

おーいの一言だけで良くない?

てかよくこれで起きないな、過去シュルテ。

いや、裸足で踏まれてるからそんなに痛くないのかも知れんけど。

起きませんか?

「ふみふみ……ふみ、ふみ……」

あ、なんか始祖神の様子がおかしい。

やる気がなくなっていく感じ。

「ふみ……ああ、もうッッッ!!」

何かがぶつ切れたかのように、始祖神がふみふみしていた右足を思いきり振り上げ。

「起きろやああああああああっっ!!!」

グギィッ。

凄い勢いで振り下ろされた右足から、確実に過去シュルテの骨が折れた音がして。

「いったあああああああああっっ!!!」

踏まれたと同時に目をかっ開いた過去シュルテが、口もかっ開き咆哮をあげ、飛び上がる。

「あ、起きた」

惚けたように言う始祖神。

対して着地した過去シュルテは始祖神を睨みつけ、鬼の形相。

「おはよう。元気?何があったか覚えてる?」

その言葉を受け、少し考えるような素振りを見せた過去シュルテ。

勿論反戦体勢は崩さない。

と、ピンっと何かを感じたらしく、より睨みをきつくした。

思い出したのかな?

そして口を開いた。

「お前……っ!」

おい!

始祖神をお前呼ばわりすな!

怒られるぞ!

って、いつのまにか右目が元に戻っている。

あれ?あれは確か別のやつを発動しなきゃ治らないのでは?

それに多分現状それはまだ使えないのでは?

と、始祖神をお前呼ばわりしたのが気にくわなかったのか、1人の若い真面目そうな神が歩み寄る。

「おい!!崇高なる始祖神様をそのような呼び方で呼ぶとは!!お前、自分の立場をわきまえろ!!」

すげえ、脇役の鏡みたいな発言してくれるじゃん。

そしてそう。脇役は脇役でも、これは……

「フィザドール、お前こそ立場をわきまえろ。余計な口を挟むな」

大体弁護したほうに罵られる脇役のテンプレ。

いや、始祖神キャラ変怖すぎでしょ。

もしや多重人格?

って!こいつフィザドールかよ!?

こいつが!リアシュルテ暗殺未遂容疑の!

でフィザドール返り討ち事件の被害者の!

故、フィザドール氏!

……何か、想像と違うね。

俺、アフリカ系スキンヘッドの声太とかだと思ってたからさ。

こんなイケメンだとさ、素直に悪いやつだとは思えないんだわ。

うん。既に死んでるから意味ないね。

「しかし……!」

はいテンプレワードその2頂きましたー!

フィザドール、反論しちゃったね?

それダメ、ゼッタイ。

と言うことで返ってくる言葉は……

「おい。口を挟むなと言ったんだが?お前はいつから私に反論出来るほど出世したんだ?」

「はっ……!?し、失礼を致しました始祖神様!どうか!どうかこのフィザドールのご無礼をお許し下さい!どうか!」

これ、どこぞの鬼だーってパクりだーって言われないかなあ。

それが凄く心配。

あと、必死に許しを求めるフィザドール、泣くな。

泣くと俺、同情しちゃう。

始祖神嫌いになっちゃう。

てか、よくこの短時間で泣けたな。

ああいや、俺は何にも見てない。見てないぞー。

「ふうっ……おい、フィザドール」

溜め息を吐いて始祖神が言う。

「はっ!」

「今回は許す。けど次はない。下がれ」

「御意、有り難き」

今回は潔く従うフィザドール。

しかし、俺は見た。

去り際のその目が、確実に。

過去シュルテを捉えていたことを。

「さて、改めておはよう。ごめんね邪魔が入って」

「あ……」

唖然としている過去シュルテ。

そりゃ、今の見たらそうなる。

「そうそう、君も……余計なことすると、消すからね?」

一瞬、始祖神の周りを真っ黒なオーラが巡ったように見えた。

明らかに、勝てないということを示した、オーラが。

「倒そうとかなんて、思うなよ?」

目が、死んでる。

声のトーンも死んでる。

威圧だけが生き生きとしている。

が、それはまたスッと収まり、始祖神は何もなかったかのように続ける。

「さて、と言うことで色々説明していく――――」

何かめっちゃ中途半端なところで、リアシュルテがビロードをジャッと閉めた。

「おいいいいい!?最後まで見せろよ!」

「お前、何ブツ切ってんだよ!?これからだったってのに!」

詰め寄る俺とウェル。

「いや、ここから説明ばっかで特に見る意味ないから?だったらとばさないと長くなるかなー、と思ったんだが?それに、これそもそもの目的忘れてないだろうな?」

それを言い訳と問いかけで切り返し、リアシュルテはこちらへと歩んでくる。

俺を通りすぎ、ウェルを通りすぎ。

ぶつぶつとまだやってるサクラの前に来ると。

「こいつにっ、神のっ、本性をみせるためっ、だからなぁっ!」

自答して、四回にかけてサクラを無理矢理立たせた。

しかしサクラは自分で立とうとしないらしく、リアシュルテが嫌々手を繋いでいる状況。

そのままこっちに歩いてくるリアシュルテ。

引っ張られているサクラ、子供かて。

その親子が俺に差し掛かった途端、親たるリアシュルテがその繋いだ左手をパッと離した。

「これ、持ってろ」

「え、えええちょちょちょいきなり!?」

降ってくるサクラ。

気にせず行くリアシュルテ。

どうしようどうしようどうしよう。

咄嗟に動いた俺は、闇雲に両手を伸ばした。

ぼん。

ふう、何とか支えることは出来た。

何かさわり心地が良いなあ。

何が当たってるん……あ。

ぼいん。

サクラの二つのメロンが、俺の両手にジャストミート。

「フィザドール……信じて……信じて……お前は……」

「……」

気まず。

パッと手を離し、瞬時にサクラの肩を反転させ、背中に腕をあてる。

ふう。これでよし。

俺の変態フラグはこれで回避された。はず。

ウェルが何かこっちをニヤニヤ見てくるけど、無視。

お前にその顔はされたくないなあ。

お前、メロンないじゃん。

板チョコじゃん。

板チョコが!笑うな!

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