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幼女tueeeeee

目を擦りながら言う幼女。

場違い感満載。

真横でリアシュルテがぶっ倒れてるからね。

この娘……強すぎんだろ!

何?こんな簡単にリアシュルテ倒してるよ!?

さっきまでの俺の死闘はなんやったん?

無駄?無駄やったんか!?

そうなんやな、そうなんやな!

てか、そんな意図も簡単にボコれるなら早くに現れて欲しかったね。

俺がこんな目に遭うこともなかったろうし。

その幼女の方をジトーッと見ていると、リアシュルテに動きがあった。

「何なんだよお前……何なんだよ……おかしいだろ……おかしいだろ……!」

そういいつつ起き上がろうとしている。

もう言葉が出てこないっぽい。

そりゃまあ、いきなり必殺封じられたと思ったらボコられてるもんね。

言葉ーにー……出来なーいー……

らーらー……らーらーあー……

うん、止めよう。

その幼女の方はと言うと、リアシュルテを生気のない目で見下ろしつつまた目を擦っている。

「お前……うるさい……眠気が覚める……少し……黙れ……」

え、怖。

これが流行りの口の悪い幼女ってやつか(嘘)。

罵られて気持ちよくなるってやつか(作者の性癖です)。

けど、リアシュルテはそうもいかんらしい。

「私に……指図ッ……するなァッ!!」

幼女に炎の拳を放つ。

俺と闘っていた時よりも何倍も早い拳だった。

しかし、幼女はその上を行く。

突き出された拳に向かって左手を掲げる。

次の瞬間、リアシュルテが消えた。

そして一秒後、ドウッという衝撃。

は?

ちょっと理解出来ない。

まさかこの音、遅れた?

これ、多分リアシュルテを消したやつの衝撃音。

音からするに衝撃波と推測する。

うーん……。

この幼女、ヤバくね?

音速越えた衝撃波出すとか、ヤバくね?

てかモーションがめちゃめちゃ速かったけど、それでいて凄い眠そうなままだよ、この娘。

ヤバくね?

それしか出てこないっぽい。

あと、リアシュルテどこ?

飛んでったっきり帰ってこないよー。

一体どんだけ飛ばしたんだよ……。

で、リアシュルテを保留にしてその幼女を見た。

「はあ……ダルいぃ……眠いぃ……」

可愛いぃ……。

目を擦る幼女。

どこかユーちゃんと同じ感じがする。

そういえば忘れていたのでサクラを見る。

「そういやあサクラ、傷は大丈夫な……」

なんか空の彼方を見つめてポカーンとしている。

放心状態?

まあ、いきなり幼女が女神飛ばしたら女神でも、いや女神だからこそそうなるわな。

放っておいてあげよう……

俺は幼女に視線を戻し、こう問うた。

「ねえ、君。名前は?」

この状況下で聞くのはすごい場違い。

幼女がいるのもまあ場違いだけど。

幼女が俺をまじまじと見つめる。

そしてサクラを見つめる。

サクラも幼女を見つめ、顔に?と描いてある。

俺に視線が戻る。

そして口を開いた。

「酷いなあ……さっきまで一緒に戦ってたのに……それにそっちは……ずーっと一緒にいたのに……ああでも……寝てたし……これじゃなかったし……自己紹介はして……なかった……」

「は?」

「へ?」

二人同時に変な声。

「じゃあ……改めて……私は……イデア……の塊……純粋なイデア……名前は……沢山ある……例えば……化竜転鬼……とか……」

「え?」

「ふぇ?」

「だから……化竜転鬼って……呼ばれる……その人に……」

サクラを指して言う幼女。

って……ことは……

「え?」

「え?」

「「ええええええええ!?」」

この娘、あの刀なのおおお!?

「おいサクラああああ!これは一体どういことだああああ!」

「我だって知らんわああああ!あと我に聞くなこやつに聞けええええ!」

俺は幼女に接近し、肩を揺さぶって問いかける。

「ねえ!君!ほんとに化竜転鬼なの!?さっきまで刀だったの!?俺と一緒に戦ってたの!?どうなの!?」

「そなた、真にあの悪鬼か!?あのイデア変換の、あいつか!?我の刀になった、あの化け物か!?」

俺と共に便乗して問い詰めるサクラ。

対する幼女は、揺すられるたびに「あう……あう……」と言いつつも眠そうに答えた。

「うん……ほんと……うそ吐かない……なら、見せる……?」

「……何を?」

「見てて……」

何を見せてくれるのか普通に疑問です。

サクラもまたポカーンとしています。

ほんと出番ないね君。

まあ、そういう運命なんでしょう。

なにはともあれ。

「ふわわわあ……」

幼女あらため化竜転鬼(仮)さんが左腕を伸ばしながら欠伸をかく。

仕草が愛らしい。

と、行動が始まる。

両手を合わせて目を閉じる。

同時に周りに浮き上がる紫色のオーラ。

「むむむむ……」

唸ったかと思えば。

「……刀っ」

そう言って、その体が消えた。

「「……」」

何にも言えず、同じように口をかっ開いて立ち尽くす俺とサクラ。

消えちゃったよ。

あの娘消えちゃったよ。

音ひとつ立てずに消えちゃったよ。

神隠し?

いやここは日本じゃないわ。

死んじゃった……訳はないか。

いや、死んじゃったかも……。

真相はわからないね。

まったく、今日はよく人が消えるなー。

厳密にはどちらも人じゃないんだけど。

「これ、探さないとだめ?」

サクラに聞いてみる。

「うむ……多分……」

「へいへーい」

と言い、とりあえず幼女がいたところに歩いていく。

と。

「ん?」

何か落ちていた。

「え」

それはまごうことなきあの刀、化竜転鬼だった。

サクラに手渡された、あの刀。

幼女が自分だと主張していたその物。

俺はとりあえず拾い上げてみる。

胸の前辺りまで持ち上げ、しげしげと眺める。

「おい、それ……もしや……いや絶対……」

「うん……これ、あの娘……だよな……」

そうとしか言えないよな。

だって、爆発したその場所の真下に落ちてたんだからそりゃそうだよね。

俺はより観察するべく刀を顔近くまで寄せる。

するとその刹那。

刀を持っていたはずの両手が、なにか柔らかいものを掴んでいるということに気付く。

そして、いきなり重みが伝わってくる。

「正解」

そう聞こえて、顔を上げる。

そこに映ったのは、にやつくあの幼女だった。

幼女を二本指+二本指で高い高いしている構図、お分かり頂けるだろうか。

つまり、俺はそんな指先4つで幼女を支えられるはずがない。

「おわわわわっ!?」

俺は背中から地面に倒れこんだ。

勿論幼女は両手でしっかり保護。

重たいとか言わない。

「面白い。やっぱりからかうってのは楽しいな」

俺を見下ろし、完全に眠気の覚めた声で言ったのは幼女。

口調も声色も全然違う。

お姉さん感がある。

「眠気はなくなったけど、まあいい。私は君を気に入った。誇りに思え」

「は、はあ……」

「よって、君には特別な褒美を与えよう」

「さ、左様で」

重たいとか言わない。

言わない。

けど、耐えれなそう。

「私に命名する権利」

そう言った幼女。

と、口がブルドーザ状態でいたサクラが反応を示した。

「な……それは……!」

同時に俺に限界が来る。

「あ、落ちる」

ドサッ。

「ふごっ」

「あははははっ!」

「ふごっ……ふごふご……ふごご!!」

「ん?何か言った?」

こいつ、俺の頭に乗っかった挙げ句とぼけやがった。

「ふごふごっふごご!!ふごーー!!」

「あーあー、はいはい。どきゃいいんでしょどきゃ。分かったからちょっと黙って」

乙女という言葉はこいつには通じない。

幼女が立ち上がり、俺の顔はようやく解放された。

幼女のアレが顔に乗ってたって、何か複雑な心境だなあ。

放送出来ない感情とかはない。

「はあっ……はあっ……ふう……」

とりあえず深呼吸し、芝を払って立ち上がる。

空気って素晴らしいね!

ところで、金剛力士像かくやの険しい顔になったままのサクラさんはと言うと、まだ「うーむうーむ」と事務所の名前で唸っている。

その悩みは幼女が言った命名という言葉から来ているのは明白。

なので聞いてみる。

「なあ、あの……えーと、とりあえず"元"化竜転鬼さん?命名って一体……?」

幼女は「ほえっ?」と言わんばかりの呆け面。

何?この世界の常識なの命名の意味って。

それだけ意味が深いってこと?

それだけ凄いってこと?

俺、それに選ばれるってことは、凄い人?

「なんとなく。丁度君がそこにいたから。あと、名前なかったから」

「……は?」

「だから、特に意味はないって。その場のノリだよ?」

ごめんなさい全ての常識よ。

こいつ何にも考えてなかった。

リアシュルテ吹っ飛ばすくらいだから、サクラみたいになんでも知ってると思ってました。

てっきり凄い深い意味でもあると思ってました。

なんなら、これも伏線なのかと思ってました。

違う、無心だった。

こいつ、もしや馬鹿ってやつでは?

あ、でも意味なしだったらサクラはあんな気難しくならないよな。

こいつが知らないだけで何か深い意味があるのかも。

つまり聞くべきは、あいつだ!

「サクラ。命名ってどういう意味があるんだ?」

するとサクラは視線を俺に送り、語りだした。

「命名。名付け。それは、名付ける側は"主"名付けられた側は"従"として、絶対の服従と永遠の卷属支配を約束する、いわば"契約"じゃ。数多の世界にある契約や誓いの中で最も単純にして最も強い。それは、絆といえ束縛とも言えるが、の?」

「は、はあ……」

凄い。サクラにしては短くまとまったね。

相変わらず意味はイマイチ伝わらないけど。

まあ要は、ペットに名前をつけるようなものでしょ。

喩えは最悪だけど。

けど、いいの?

「なあ、これ……俺に服従することになるよなあ……?」

「うむ」

「そうなのか?」

「お前……話聞いておったのか?」

「何の話さ?」

「嘘じゃろ……」

能天気だなあ。

よく今まで生きてこれたなーと素で思う。

「ともかく、お前、一生このアホのパシりになるが良いのか?」

「え、うん」

「ほんとにほんとに良いんじゃな?」

「うん」

「我の刀であったままのほうが良かったと、後悔しても遅いぞ?」

「寝てたし、特に何もしてないしー」

「いやらしいことをされても聞かねばならぬぞ?こいつならしかねん」

「むしろウェルカム」

なんか凄いディス。

あと下ネタを挟むな。

ウェルカムってなんだよ!?

俺はそんな奴じゃないぞ!?

誘われてもやんないぞ!?

「はあ……ならば好きにせい」

「元々そのつもり」

何故ウェルカムで止めたのかサクラの思考回路を疑うが、問い詰める前に幼女が喋った。

「じゃ、名前決めてよ」

「山田」

「真面目に」

「イデア」

「そのままじゃん」

「化竜て……」

「それ好きじゃないし命名になってない」

「ロリ」

「それは引く」

「うん……」

「おい」

「ちん……」

「消すぞ?」

「ウェル」

「ウェル、ウェル……うん、いいね。それで」

咄嗟に出たその名前。

ウェルカムから来てるとは口が裂けても言わない。

「じゃあ、もう一回。今度は『汝、我が力の下、ここにウェルの名を与えん』って大きく元気よくどうぞ」

「は?」

「言わなきゃ誓いが立たないんだよ、ほら!」

ちょっあ、ま、覚えてないんだけど……

急かされるとやらざるをえなり。あ、いや、えない。

うろ覚えでやってみる。

間違えたらヤバいことになる、何てことがないように願う。

「わ……な、汝、我が力の下、今ウェルの名を……あー……授けん!」

なんか違う気がする。

だってほら、幼女の顔。

凄い呆れてるよ?

溜め息つかれたし。

やれやれと言わんばかりに幼女が続ける。

「我、ここにその御名拝名せん。我、永久の忠誠と隷属をここに誓わん。なれば約束は結ばれ、なれば世よ、受け入れたまえ!」

凄い。しっかり締めてきた。

教養が成ってるねえ。

と、ウェルの体を髪色と同じ翠の光が包む。

しかしそれも一瞬。

すぐに光は納得したように消え失せた。

ポワンって擬音そのままって感じ。

「これ、成功ってこと?」

「うん」

ふう。よかったよかったなにもなくて。

何か起きたらどうしようとばかり考えてたけど、一安心。

「ほんとにそうだねー。安心だー」

「ほんとそ……え?」

え?

嘘。

今の会話、お分かり頂けただろうか。

ウェルの言葉、『ほんとにそうだねー。安心だー』。

俺、安心なんて言葉言ってない。

なんなら、質問のあと何も言ってない。

なのに、この言葉。

あれ?

これ、俺の思考読まれてる?

「うん、読めるよ」

何でだああああ!

「だって、卷属だし。主君の意志が全てだし?」

にしても、プライバシーの侵害すぎるだろこれは。

こんなのじゃやましい想像とか出来ないじゃん。

いや、しないけどね?

『ところで、ほら。逆も出来るみたいだよ?あ、やましい想像の邪魔だった?』

頭に直接響くウェルの声。

というか意志か。

あ、やましい想像はしてません。

てか意志わかるからしてないのくらい知ってただろ!

わざと行ったな?

てか、なにこのスキルめちゃめちゃ有能?

誰にも漏らすことなく会話出来るじゃん。

これが念話ってやつかー。

けど、相手が相手だからろくに話すこともないんだよなー。

『ひどくない!?』

真実です。

あと、これだと1人おいてけぼりなんです。

無言で睨みあう俺たちを交互に見やって困惑しとられます。

うん。使えん。

「使えない!」

声で言うのが一番だね!

「そうだね!」

「使えない」と「声が一番」っていう両方の答えとして返事したウェル。

ん?そこまで考えてはなさそう。

「あ……てへ?」

考えてなかったらしい。

「まあ、こんなものか……」

なんかサクラにもこんなかんじの誓いみたいなのが立てられてたような気がする。

ウェルは半笑い。

「こんなものって……あ」

「「?」」

表情が一気に真面目になる。

「あの女が飛んでくる」


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