俺、ガチャる。(まだガチャりません)
「ーーこれ、何ですか?」
「さっきから言っておるじゃろうに。ガチャじゃガチャ。見ての通り巨大なガチャガチャじゃ。」
「いや、それは分かる、、。分かるけど、それ以上何も分からない、、。」
これが、目の前に突然巨大ガチャを展開された人の正しい反応である。
ここで「おおーっ」とか「うわあー」とかには決してなりはしない。
当然、これがガチャガチャだというのは理解出来る。それに、いざ実物を持ってこられると、誰であろうと理解せざるを得ない。
出来ないのは多分ステゴサウルスくらい。
しかし、しかしだ諸君。いきなり目の前に馬鹿でかいガチャを持ってこられたらどうだろうか。
まず間違いなく、そう、反応に困るのだ。
「なんじゃ、なんかあんまり喜んでないのう。最近の若いのはこういうのが流行りだと聞いたんじゃがのう。違うんか?それともあれか?エロいのでも期待してたんか?じゃからそんなに反応が薄いんか?」
「い、いや、そうじゃなくて。シンプルに意味がわかんなくて。だってさ、これから俺の人生の準備するんだろ?なのに何でガチャガチャなんさ?しかも、さっき言ってたキャラガチャってどういうことさ?」
こんなものが流行りだと言ったやつが誰なのか気になるし、何故俺が変態ドスケベエロ男だという解釈になっているのかも気になるが、それ以上に気になったことを聞いた。
しまった。これがオッサン確定のキャラガチャかどうかを聞くべきだったか!
「あー、説明しとらんかったな。では説明しよう!
これはの、そなたのこれからの人生、そのすべてを決める4つのガチャなのじゃ!まず、転生する世界を決める"世界ガチャ"、旅の相棒を選ぶ"使い魔ガチャ"、そなたの旅道を定める"職業ガチャ"、そして、旅のお守り的初期装備を決める、"スキルガチャ"なのじゃ!」
「うおーー!よくわかんないけどすごーい!」
「そうじゃろう?そうじゃろう!自然にテンションも高くなるじゃろう?」
「いえーい!」
「いえーい!」
だそうです。
俺の人生はガチャで決まるようだ。
なんかそれっていいと思う。
だって、テンション上がるし?
俺、ワクワクすっし?
女神もノリノリである。
急にキャラが変わった。
さっきまで散々キレてた癖に。
ずっといってるけど、やっぱり情緒不安定なんだろうか。
女神も大変ですねー。(楽観視)
で、その情緒不安定が続ける。
「そしてじゃ!なんと今なら、寿命献上で報酬が豪華になるのじゃ!さらに今なら献上寿命数無制限じゃ!どうじゃ、やってみんか?じゃがその分死ぬのは早まるがの。」
ほう、課金ならぬ寿命献上ですと。
かなりブラックな商売ですな。
女神ってこんな大悪事働くものでしたっけ。
しかも笑いながらさらっとこんな怖いこと言うとる。
女神怖。
というか、どういう形で寿命を削るのだろう。
「それって、寿命が縮まるのか?それとも先にその分年をとって転生するのか?」
「そうじゃのう。今まで歴代の女神らは死ぬのを早めて献上させておったから、前者になるかの。」
「それって、俺はまた赤ちゃんから生まれなきゃいけないってことか?」
「うむ。そうなるの。」
いや、それはやだなー。死ぬのを早めるとか、そんなの怖いし嫌だよね。いつ死ぬのかずっとびくびくしながら生きなきゃいけないじゃん。
あ、女神は死亡年数わかるんか。だから死ぬのを早められるんか。
やっぱり女神怖すぎねえ?
「それ、先に年をとることに出来ねえ?」
「んーー、そうじゃのう、、。それだと、そなたの人生が目に見えて短くなるじゃろう?それなら、いつ知らぬまま過ごす方がよいじゃろ?」
「でもそれだと、いつ死ぬか分からないけど寿命が短くなったのが分かりきってるから、いつ死ぬかずっと怖がってなきゃだめじゃん。そんな人生面白くねーよ?」
「ううううん、、。いいのか?我はそれじゃないほうがいいと思うがのう。」
女神さんはしぶとい。
「まあ、そなたがそれでいいのならよいじゃろうが、第二の誕生は体験出来んぞ?それでも良いのじゃな?」
「うん。それでいい。」
話が長引いて忘れちゃったけど、これそもそもなんの話してたんだっけ。
なんのために寿命の話してんだったか。
あ、そうだガチャガチャの話だ。
豪華特典の話だ。
なんか、話が重すぎて分からなくなってた。
早く終わらせんと。
あ、そうだ。
「俺、17年生きてたんだし、なんなら人生の続きみたいな感じで17年とばしてもらえないかな?」
「は?」
女神が珍しく俺みたいなリアクションをした。
「馬鹿かお前、寿命を縮めると言っても、普通は1ヵ月や2ヵ月くらいのもんなのじゃぞ?それに、よほど欲深い輩であっても1年2年が関の山なんじゃぞ?我は17年も命縮めるような奴、正真正銘の馬鹿だとしか思えんわ。じゃが確かにそなたの理屈も分かるがのう、17年も縮めたら新しい家族も暖かい家庭も付けられんぞ?その上ガチャの特典がとてつもないものになるぞ?そしてそんなろくなものこのガチャガチャには入っとらんぞ?」
うん。家庭は別にいらないし、馬鹿呼ばわりも多目に見る。けどガチャにはまずろくなものを入れよう。
ガチャのことも色々言いたいが、まずはしなきゃいけないことがある。
俺は誠実に御願いをする。
「別にそれでもいいからさ、俺は今の俺のままで居たいんだ。俺は、第二の人生じゃなくて、人生の続きがしたいんだ。だから頼む。それに正味別にガチャの中身はどうでもいい。死ぬのが早くなってもいい。家族も、俺の家族は前の家族だけだから、いい。だから、お願いします。女神サクラ様。」
珍しく真面目に言ってみた。
自分で言ってて何こいつすっごくイタいじゃんと思ったけど、気にしない気にしない。
だって、ほとんど嘘だし。
もう一回生まれ直すのが面倒だから、ただそれだけの理由で今凄く真面目なフリをしました。
で、その女神サクラ様の方を見る。
目をきょとんと開いて、パチパチと大きく瞬きをした。やがて、最初と同じようなあの微笑みを見せ、
「うむ。まあ、よいかの。勝手に第二の人生を用意したのは我じゃし、巻き込まれただけのそなたがそう望むのなら、聞かぬことはできぬしの。」
と言った。
俺の顔がぱあっと明るくなる。
ぱあーーーーっ!(?)
騙せたぜー!
はっはっは見たか俺の演技の力!
「いいのか!?やったぜ!ありがとう女神様!もう愛してる!一生ついていく!」
「それは困るの。ああ、それと、サクラでよいぞ?
始めから思っとったがお前から敬意を全く感じんしの。ついでにもう敬語も使わんでよいぞ。まあ既に使ってないのは明白なんじゃが。」
「おう、ありがとサクラ!」
「少し腹が立つのじゃが、、。」
これでやっと長い話から解放される。
体感50000年はあったと思う。
実際は数分?
知らんなあ。
というか、そろそろガチャをひきたいところ。
「なあ、ガチャガチャ引こうぜー」
「むう、やはりそなた我をかなり下に見とらんか?まあ、言って直るもんでもないしよいわ。よし、そうじゃの。では早速そなたの寿命を捧げるのじゃ。キョウヤ、そこに立つがよい。」
右手でガチャガチャたちの前を指差しサクラがそう言った。
素直に聞いて言われた場所に立つ。
すると、サクラがガチャの上に浮いた。
浮いた。
浮いた?
浮いてるー!?
いや、そんなに驚かんよ?
まあ、サクラがあのガチャガチャを片手で持ってきてる時点でああここはこういう所なんだって理解したからね。
お、サクラが浮いたまま何かをするようだ。
「よし、キョウヤ。今から命力移動というのを行うのじゃ。そこから動くなよ。動いたが最後失敗すればそなたの魂が崩壊するからの。」
「それ多分俺無理だわー」
「少しは我慢するのじゃ、、。ただその場に気を付けしておればいいのじゃ。ちょっと動く位なら問題はないからの。」
「へいへーい」
わざと動きたくなるこの衝動はまさしく日本の魂なのだろうか。
まあ消えるは嫌なので動かない。
もう死んでるけどね!
と、サクラが胸の前で手を祈るような形にし、目を閉じた。そしてなにやら唱え始める。
「全ての始まりたる始祖神ゆうくいんよ、我、天つ神の一塊サクラに答えよ。」
サクラが、その目を開いた。
「我が眼前に立つ少年の、17廻の時の巡りを進めたもう。そして彼の者の運命の歯車を、より強固な物から選ばせよ。」
すげえ、これが流行りの厨二ってやつか。
ネイティブイングリッシュよりも意味がわからん。
え?俺の発想も意味がわからん?
と、サクラが目をもう一度閉じる。するとその周りに優しい風が起き、青い薄霧のようなものが漂い出す。
「ーーー今一度、その五倍子に染まりし神に願う。我の望み、聞き入れたまえ!!!」
サクラが最後の言葉を叫ぶや否や、
「っ!?」
いきなりバアァァァンと音がなりそうな波動が起きる。
そしてそれと同時に、俺の胸の辺りがすうっと冷たくなった。
咄嗟に自分の体のほうを見やる。
すると、俺の真下によくわからない青い紋章が浮かび上がり、同時に風が吹きだした。
「なっ、なんだよ、、これ、、っ!」
サクラの風とは比べ物にならないくらい、その風は強く音高い。
くそっ!イタめなセリフに自虐する暇がない!
そしてまた胸のあたりを寒気が襲う。
だが今度はだんだんとその寒気が強くなっていき、
それと共鳴するかのように、風も強さを増していく。
まずい。このままでは耐えられない。
そう思ったその時。
寒気と風が爆発した。
「っあ!?」
思わず顔を手で覆う。
凍えて死にそうなほどその寒気は強く、
飛んで行きそうなほどその風は強い。
吹き止む気配は全くない。
俺はサクラのほうを見た。
サクラは、とても辛そうな顔だった。
泣きそうな顔つきで、しかし耐えろと訴える。
俺は辛い。しかしサクラだって辛いのだ。
俺は全身全霊を尽くして耐え続けた。
しかし。
徐々に徐々に、その力は消えていく。
頭が回らなくなってきた。
足の力がもう効かない。
もう、駄目だ、、。
そう思った。覚悟した。
そして俺は手を下ろし、頭から倒れ込もうとした。
その時である。
俺の胸が突然、白い光につつまれた。
胸の中から四方八方に、光が溢れ出す。
体に熱が戻ってくる。
あったかい。
そしてその光が、その強さを増しながらだんだんと胸の外へと顔を出す。そして俺の顔の前までくると、それはカアァァァッと殊更に強く光り、4つに分裂した。
サクラの顔も笑顔に戻っている。
そのサクラが右手をこちらに向け、ゆっくりと手を引き戻していく。
それに呼応して4つの光が俺のもとから、サクラのほうへと移動しだした。
その途端、俺を襲っていた風と寒気がふっと消えた。
俺はただ呆然としていることしか出来なかった。
光がやがて、サクラの手元にたどりつく。
サクラが、その手をパッと振り上げた。
すると光は1つまた1つと、ガチャガチャの中へと入っていく。
ガチャガチャはそんなことも気にせず突っ立っているだけだったが。
呑気だなあ。
全ての光がガチャへと入り、サクラを包んでいた風と霧も消えた。
そしてサクラが地面に降りてくる。
俺のほうへとゆっくり歩みより、いきなり抱きつかれた。
「わ!?ちょ、何!?」
「よう耐えたの。すまんかった。寿命の移動には負荷がかかると言うのを忘れておったのじゃ。本当に、何から何まですまんのう。これはほんの気持ちじゃ。」
「いや、いいんだけどさ、あのお、とりあえず離してくれない?息が出来ないんだけど。」
サクラは俺より頭1つ分くらい背が高い。だから抱きつかれると、必然的に俺の顔に当たるのだ。アレが。かなり。
思わぬエロイベントである。
「あ、ああ、、。すまん、、。」
「いい。それより、はやくガチャ引いてもいい?そろそろ尺の取りすぎなんよ。」
冗談抜きで、そろそろ転生せんと読者に見放されるころである。
まだタイトルのタの字もかすっていないしね。
サクラが頷き、言う。
「そうじゃのう。なら、引き始めるとするかの。」
お待たせしました。
そろそろです。
登場人物紹介・2
サクラ。
正真正銘のサクラ。
生と死、そして転生を司る女神。
髪の毛は青い。
サクラなのに。
ババアのようなしゃべり方。
アホの子。
そして不幸の2文字の意味を理解していない。
アホの子だから!
服装は、フランス風巫女装束。
ついでに言うと、露出はまあまあ。
パッとイメージできる人は多分いない。
説明できないもん。
モデルだからモデル。
性格は、ツッコミ側の人間だということくらい。
あとすぐキレる。
情緒不安定にして多重人格。
そしてエロの塊。
無自覚スケベというやつである。
誕生日は覚えていない。
女神として召喚されたのは2/16。
身長は170.5㎝。
体重は、ひ・み・つ。
女神になる前のことは、記憶にない。
以上。