ミレニアム
結界がなければ防ぐことは出来ない。
アブソリュート・ルールがなければ封じることは出来ない。
サクラにも俺にも、もう切り札はない。
「どうすれば……?」
こんなとき、オペさんが居ればなあ。
すぐに的確な選択をしてくれるのに……。
そのオペさんも、いまやアレだし……。
本当に、どうすれば?
俺の人生、また終わるのか?
そんなダークゾーンに陥りそうになった時、呆れた声がした。
「おい……お前、まさか忘れてはいないじゃろうな?」
「は?何を?」
「嘘じゃろ……」
俺が首をかしげ、サクラが首を横に振る。
いや、マジで何のことさ?
サクラが告げる。
「ガチャガチャ唯一の当たり枠すら存在を忘れるとは……『転職』じゃろ、『転職』。持っとるじゃろうに。」
「あ……ほんとだ」
完全に忘れてた。
展開が早すぎて俺がもともと自宅警備員だったことすら忘れてたわ。
ペンタブ持ってたね確か。
「ほんとだじゃないわ!それ使ってさっさとアイツ倒してくるのじゃ!多分お前は今の我よりも多少強い。ほらいけ!」
サクラがキレ気味ですが、ほらいけ!と言われてますが。
「……何に転職したらいいんだ……?」
「自分で考えろやー!」
と、言われましても。
「うーーん……」
俺が知ってる職業。
自宅警備員、裁判長、勇者、遊び人。
以上。
遊び人になって世界救えるかなあ。
てか勇者強そうじゃない?
勇者なら世界救えるんじゃねえ?
あ、この人魔王駆除専門の方だった。
てことで業者さん……いやいや勇者さんは却下。
んーーー……
やっぱり遊び人か?
俺の葛藤はまだまだ続く。
と思っていたけど、サクラが溜め息で突き破りました。
「魔法剣士」
「は?」
え?
「魔法剣士になれ」
「え?いや、は?」
「じゃから、魔法剣士になれと言っとるんじゃ!」
「魔法剣士?」
さっきまでの職業が異世界とは縁遠いやつばっかだったから、いきなりの定番職の登場で脳の理解が追い付いていません。
そんなのでいいの?
そう思ってしまった、矢先。
「にゃっ!?」
俺の身体がまた光で覆われる。
あれ?もしかしてさっきの疑問系、発動意思だと思われた?
別になるとは言ってないんだけども。
あー、こんな時オペさんがいないから確認出来ねえ……
めんどくせえ……!
と、光に包まれた俺の杖が消える。
同時に頭の帽子も。
そして、このクソ暑苦しかった聖者みたいな服がチェンジする。
残念!これ脱いじゃうと放送出来なくなるからね!
ここは脱がずにチェンジさ!
変化した服装は、まさに魔法定番なやつ。
軽く動けそうそうだし着けてるとさっきの服より軽いチェストプレート。
質感的に鉄ではない何か。
服はまあ、紺の長いローブみたいなの。
裁判長のに比べちゃいけないほど実用性のありそうな、動きやすそうな、そんなやつ。
ズボンも同じシリーズっぽい。
ベルトにはなんか携帯魔導書っぽいやつとローブと同じ色合いの剣。
紺の剣とかかっこいいわあ。
刀身はやや細め?
とまあそんな感じです。
完成!魔法剣士!
バアアアアアン……
と、同時に視界に表示が出た。
職業:魔導騎英
魔を導きし賢にして剣を振り上げる将。その頂に立つ英である。
固有スキル(主要):「聖剣術」(片手剣)
「魔法」(全法)
「魔術」(全紋)
「天地隔てなき」
「索眼」
「頂の魔法使い」
「頂の魔術師」
「頂の剣士」
「な……何これかっこよすぎだろ……!」
俺は幼子のようにはしゃぐ。
サクラもノってくる。
「かっこいいだけではないぞ、強いのじゃ。何てったって魔法剣士系統の最上位、魔導剣英じゃからの。それこそ、チート職じゃの。」
「な……何それ最強じゃねえか……!」
別に殷践んだりしてないし。
っと、何の話だったっけ。
と、そこに丁度サクラヴォイス。
「それは後にして、今はさっさと世界救ってくるのじゃ!そろそろやらなければ本気で取り返しがつかんくなるからの。」
あ、そうそう世界がどうこうの話。
でもねえ。
「どうやって?」
疑問の大砲をぶつける。
サクラに直撃した砲弾は、溜め息として変換された。
そして長々と語りだす。
「いいか、まずお前は走れ。走って走って走りまくってリアシュルテの真横まで行くのじゃ。」
「あ、うん……ん?走る?」
走れって、あの人がいるのはそう、高いところですよ?
走れ?
何の夢なんだい。
ネバーランドに行くピーター・小麦で作ったヨーロッパの主食さんの夢見てんのか?
俺はいつから飛べるようになったのだろうか。
「お前なあ……もうちょっと詳細読めよ……。あのな、その魔導騎英にはのう、『天地隔てなき』というパッシブスキルがあるのじゃ。まあ一言で言えば空中歩行じゃな。じゃから、それでリアシュルテの横に飛んでいって剣で魔方陣ごとあやつをばっさりやっちゃえば完成じゃ。ということで、行けキョウヤ。」
「お、おう……」
サクラってことごとく台詞なげえよな。
読んでてつまらんだろうな。
渋々サクラに従いリアシュルテのほうへとぼとぼと歩こうとする。
「あ、そうじゃキョウヤ。」
「?」
サクラが引き留める。
俺は振り向いた。
と、目の前に尖った何かが飛んできた。
「おわわわわわ!?」
「あ、すまん」
後ろに跳んで回避する。
何よこれいきなりよお。
やっぱりこの人怖いなあ。
で、サクラが投げたらしいその尖った何かを見る。
さっきサクラが使っていた刀がそこにあった。
「お前俺を殺す気か!?」
「だからすまんといっとるじゃろうに」
「すまんですんだらすまんにならねえんだよ!警察もいらねえんだよ!この世界に警察いないけど!」
言葉遊びになってしまった今日のこの一言。
「いるぞ?警察は」
「シラネーヨ!」
警察居るの?
どうでもいいわ。
「って!はようそれ拾うのじゃ!」
「お……おう」
刀を右手で引こうとする。
女神の武器なのだから重たいに決まってる。
そう思っていた時期が過ぎ。
めちゃめちゃ軽い。
「うえへ!?」
右手で刀を思いきり引いた途端、あまりの軽さに飛び上がってしまった。
「軽!」
「その『化竜転鬼』はの、めちゃめちゃ軽いことで有名なのじゃ。しかし、同時にめちゃめちゃ斬れることでも有名なのじゃ。そんな物を今回、そなたに特別に使わせてやるのじゃ。有り難く思うがいい」
なんかすげえ名前してるなこの刀。
竜に化けて鬼に転ずる、最悪だなおい。
中二の塊だぜ。
フアッ!
ちなみに鞘がない。
何でかはあえて聞かなかった。
ということで刀を右手に、俺はサクラを見る。
「じゃあ、世界救ってくる。」
「おう、頑張ってこーい。我は傷を修復するから少し音信不通になるからの」
試合前のコーチとエースの雰囲気。
ま、それがサクラだね。
てかそういえば、俺刀もう一本あるんだよね。
使うか。
サクラの刀を左手に持ちかえ、左腰に下げてある剣を抜く。
二刀流完成!
刀と剣って合うのだろうか。
まあいいか。
見栄えよければ全て良し!
「おい、お前の剣は仕舞え」
「はい……」
スゴい冷たいツッコミが襲撃してきました。
うん。これが原因で失敗すると色々ヤバそうなので、素直に従います。
剣を納剣し、刀を右手に。
これでいい。
じゃあ、行くぞ。
俺はリアシュルテのほうへ走り出した。
あとで聞いたのだが、この時サクラは大分無理をしていたらしく、何気に生死をさ迷っていたという。音信不通になるってのは、どうやら瞑想的なので外界の感覚を遮断して不思議魔術を使うからってことだったらしい。
気遣いって凄いな。
ユニークスキル
「頂の魔法使い」
詳細:自身の発動した魔法、相手の魔法に対しての防御・攻撃において、自身と同職である場合を除いて優先度が999+(最大値)になる。
魔法陣を破壊出来る。
「頂の魔術師」
詳細:自身の構築した魔術、相手の魔術に対する防御・攻撃において、自身と同職である場合を除いて優先度が999+(最大値)になる。
魔術紋を破壊出来る。
「頂の剣士」
詳細:自身の剣による攻撃は、相手が同職である場合を除いて優先度が999+(最大値)になる。




