て・て・て・転職開放ォ!!
これならば。
あのサクラを、あの結界を、突破出来るかもしれない。
ならば!
することはもう決まっている!
俺は、転職する!
応えはすぐだった。
『発動意思を確認しました。発動を受諾します。』
視界右側、ペンタブのウィンドウが消え、代わりに視界全体が文字で包まれる。
見れば「剣士」とか「賢者」とか、「魔王」やら「竜騎士」やらと目に映る。
どうやら転職できる職業が表示されているらしい。
全部。
うーーーん、
多いわ。
もはや内容が頭に入ってこない。
フィルターかけようにもどうすればいいかわからんし、何になればいいかも正直わからん。
これ、オペレーターさん(仮)ってHEYケツとかOKゴーグルみたいに音声検索使えないのかな?
試してみよう。
「オッケーオペさん、今の情況にぴったりな職業を探して。」
無茶振りし過ぎた?
大丈夫でしょ。
オペさん(仮)なら。
『候補一件が見つかりました。現在「相手がチートスキルを使ってくる絶対的不利死亡確定無駄戦」な情況ですので、「裁判長」をお勧めします。効果は使用してお確かめ下さい。』
すげえ有能な娘だなあ。
もうゴーグルもケツもいらねえ。
裁判長?
なんか弱そうだけどまあ、大丈夫でしょう。
有能なオペさんが謂うからマチガイナイ。
『発動手順は前回同様です。』
行くぞ。
裁判長に俺はなる!
「転職!裁判長ッ!!」
俺の体が強く発光した。
そして、どこからか半透明の赤い絵巻みたいなやつが幾つも出現し、俺の周りをくるくる旋回しだす。
そして暖かい感覚。
服が変化していく。
痛シャツが消え去り、白基調、金縁の西洋風の法衣が現れる。
教会の偉い人みたいな感じ。
頭に、同じく白と金の円筒みたいな帽子が出てくる。
ああ、教皇って感じだ。
ペンタブが消え。
やはり白く金で縁どられ、先に幾つもの輪っかがかかっている、いかにも杖らしい杖が右手に収まる。
そして光がカアッと強く光り、消えた。
俺は始めて転職した。
感想はそう、これこの杖が重たい。
かなり重たい。冗談抜きで。
サクラはうんうんと1人頷くばかり。
誰と話してんだろ。
まあいい。殴るだけだし。
俺はまた走り出した。
これちなみに、めっちゃ走り辛い。
脚からまってこけるかも知らん。
俺は間合いを詰めながら、また問う。
「発動できるスキルは?」
『職業固有スキル「アブソリュート・ルール」が発動できます。』
何なのかを教えてくれる気はなさそう。
でもまあ、いいか。
よし、2メートルに入ったらこれを使う。
そう決めた、5メートル。
思考フル回転で考える。
多分、いや絶対にサクラは次もあの結界を使ってくる。なら、初撃は絶対に防がれてはいけない。
あの結界が出る前に、決める。
4メートル、3メートル。
かといって、そんなことが出来るほど器用な俺ではない。
このスキルが何なのかわからない。
でも、だからこそこれに掛ける!
間合いに入った!
俺は先程とは違い、跳ばなかった。
その場に急停止し、半身に構える。
杖の先は真っ直ぐにサクラを捉えている。
停止してコンマ01秒。
俺は叫んだ。
「アブソリュート・ルール!!」
ゴーーーーン。
ゴーーーーン。
太い音。
鐘の音である。
その出所は、俺の杖。
審判の時、ということか。
と、突然俺の杖を中心に、白い波動が起こる。
鐘の音と共鳴して、ただ1回きり、
ゴーーーーーーーーーーーーン、と。
やばいと思ったのか、サクラが結界の構えをとる。
左腕を突きだす。
しかし。
いくら待てども。
その手に魔方陣は宿らなかった。
結界は、出なかった。
「な、何が……?」
サクラも驚きを見せる。
いや、こっちがわかってないのよ。
と、ご都合主義様が俺の視界に応えを映した。
そこには、こうと。
アブソリュート・ルール
職業「裁判長」固有スキル
詳細:全てのスキルを公平な判決の下、一定期間無効化・封印する。
「は、はは、ははははははあっ!!」
つまり、今のサクラは。
雑魚。
高笑いしながら、俺はサクラに殴りかかった……