ぶ・ぶ・ぶ・ぶろっさむ
『まもなく着陸を終了します。着陸パッケージのご利用、ありがとうございました。まもなく音声案内とステータス案内を終了します。着陸後はステータスメッセージの通達までしばらくその場でお待ち下さい。本日はまことにご利用ありがとうございました。』
少しの遊覧飛行の後。
俺はザッ、と音を立てて草地を踏んだ。
それと同時に、背中の翼が羽を散らしながら消える。
視界のステータス表示も消えていた。
これが人生初の上陸だ。
もう2度とすることはないだろうけど。
俺は大きく伸びをしてから、あたりを見回す。
木、また木。で、木。あれは、木。それも、木。
うん、木しかないね。
俺が降りてきたのは、上から見てた馬鹿でかい森の草原寄りの端っこ。
端っこなんだけど。のはずなんだけども。
まったくそれを感じさせないほど、奥が見えない。
これが森の危険ってやつか。
まあ端っこでよかった。
と、言っても降りる場所を決めたって訳ではない。
翼はそんなことを許してくれるほど甘口じゃない。
中辛でもないから安心しな。
翼はどうやっても動かなかった。
まさに、操作の解らないバトロワ。
というか、翼の動かし方がわかってるならとっくに人のいるところまで飛んでるわ!
ということで、成り行きを見守っていたら。
ここに降りてきた訳です。
で、なんか音声案内さんが言うには、ここでステータスメッセージとやらを待てばいいと。
待つよ?それくらい。
待つけど。それまで俺、暇?
どうしよう。
とりあえず、俺はふうっと息をつくと、足下に広がる草地に寝そべった。
1つ言うなら、凄くチクチクする。
あたりをぼーっと眺めてみた。
よく見てみれば、このあたりのほんの数メートルだけ、木が生えず空き地のようになっている。
だから空がよく見える。
いや、そんなロマンチックなものは求めてないよ?
ただ寝てたら目に映ってただけだからね。
深い意味も何もないからね。
俺はポエマーじゃないんだよ。
いきなり意味不明な言葉を紡いだりはしない。
意味不明な雄叫びはあげるけどね。
「ついた、、、異世界。」
ふいにポエマーが出る。
と、あたりに風が舞った気がした。
これが名台詞の演出ってやつ?
ひゅううううう
いいね。もっと際立たせてくれ。
そうして俺をもっとイケメンにしてくれ!
無理?
それは俺が既にイケメンだからってことだよね。
そうだよね。
ね。ね。ね?
そういうことにしておこう。
ひゅうううううううう
ところで、なんか風が長くないかい。
もう台詞言ってない。
それでも、この音は鳴り止まない。
これは、風じゃない。
そう気づいたときにはもう遅かった。
ひゅうううううううう
「ーーーーーぅぁぁぁぁぁぁぁ」
ん?声?
「ぅぁぁぁぁぁぁぁ!」
いや、気のせいじゃない。
確かに誰かの叫びが聞こえる。
でも、何処から?
この果てしない森の中から聞こえてくるなら、悪いけど見つけることは出来ない。
迷子になるのは嫌だから!
でも、森からというような音ではない。
何処から?
ふいに上を見上げる。
ひゅうううううう
顔に風が吹き付けた。
思わず目をうすめる。
「ぅぁぁぁぁあああああ、うわああああああああ!」
「!?」
叫び声が強大になった。
落ちてくる!?
目を見開く。
目に映ったのは、蒼髪の女。
見知った、女。
それも、ほんの数メートル頭上に。
「うわああああああ!あ、キョウヤあああああああ!」
「うわああああ!このクソ女神ィィィィイイ!」
視界がこのクソ女神で埋まる。
ここで意識が飛んだ。