06 クサナギ vs アンドロイド軍団 (4)
ルリの守りの壁が消えた直後の混乱を、的確に突かれました。
「やるな」
出撃した艦載機が大急ぎで隊列を組み、攻撃しようと近づいてくるアンドロイドを撃ち落としていきます。第二、第三の攻撃は防ぎましたが、すぐに次の攻撃がくるでしょう。
「アンドロイド、残数は?」
「およそ七万です」
「撃ち落としたのは、まだ三分の一、か」
ルリの報告にうなずくと、艦長は指先でコツコツと机をたたきました。
「これまでとは、違うな」
秘密基地を襲撃してきたときも、デュランダルとともに攻撃してきたときも、アンドロイドはただ一丸となって突っ込んでくる、そういう感じでした。包囲を完成させるまでのアンドロイドも同じ。それゆえ、クサナギの圧倒的な火力で一気に撃ち落とせたのです。
ですが、今は違います。
包囲を完成させてからは、クサナギの砲撃をまともに受けないよう、アンドロイドはやや遠巻きにしています。猛スピードで駆け抜けようとするクサナギを、まるで鳥かごに閉じ込めるようにしながら、波状攻撃をしてくるのです。やみくもに突っ込んでくるような、そんな戦い方はしていません。
そして、ルリの守りの壁が消えたと見るや、クサナギの死角をついて攻撃してきたのです。
「柔軟かつ機を見た攻撃。遠い場所にいては、これだけ的確に統率は取れまい」
天使が来ている。
そう確信した艦長は、机をたたく指を止めると、シルバーに指示します。
「シルバー、戦闘宙域を再スキャン! 天使を探せ、必ずどこかにいるはずだ!」
「了解デス」
「アカネ、艦周囲に弾幕を張れ! ヒスイ、最短経路で『星の宮殿』がある星を目指せ!」
「了解!」
「あいあいさー!」
上へ下へと縦横無尽に飛んでいたクサナギが、一直線に飛び始めました。
それを見たアンドロイドが、間髪入れずクサナギの包囲網を縮め始めます。
「素早い……押しつぶす気か」
「全砲門、連続射撃! 弾幕張って、撃ち漏らさないで!」
「クサナギ、最大戦速でいくよー!」
艦長がアンドロイドの意図を読み取ると同時に、アカネ、ヒスイが素早く対応しました。
押しつぶされる前に、全速力で突破する。
妖精が乗る艦載機も、クサナギの動きに連動して隊列を組みなおします。
「防御壁、艦前方に展開! このまま突撃! 食い破れ!」
無数のアンドロイドが、壁となってクサナギの前に立ちふさがりました。そこへクサナギは主砲を撃ち込み、突っ込んでいきます。
「こなくそー!」
アンドロイドとクサナギの防御壁が衝突し、火花とともに爆発が起こりました。
強引に突破しようとするクサナギを食い止めようと、アンドロイドが次々とクサナギの前へ立ちふさがります。
「かまうな! このまま進め!」
「主砲、進行方向に向けて一斉射撃!」
「ねじこむよー!」
アカネの号令とともに主砲が火を噴き、こじ開けた穴にクサナギが突入しました。
「ピーッ!」
上下左右から突撃してくるアンドロイドは、妖精たちが乗る艦載機の攻撃と、猛烈な機銃の射撃で次々と撃ち落とされていきます。
ですが、クサナギの猛砲撃をくぐり抜け、クサナギに接近するアンドロイドがいました。
「右舷、アンドロイド接近! よけきれません!」
ルリの報告が終わるや否や、クサナギにまた爆発音が響きました。今度の爆発は、かなり大きなものでした。
「右舷、第十二、十五、十六ブロック、被弾! 続イテ、左舷ニモ来マス!」
再びの爆発音が響き、クサナギが大きく揺れます。
「左舷、第七、八、九ブロック、被弾! サラニ、追撃アリ!」
「ふ、防ぎきれません! 艦長、艦側面にも防御壁を!」
「慌てるな! 戦艦はこれぐらいで沈んだりしない!」
ルリの悲鳴じみた呼びかけに、艦長は一喝で答えました。
「ここで守勢に回れば、一気に押しつぶされる! 踏ん張れ!」
「はいっ!」
「アカネ、主砲、通常モードへ切り替え! 進行方向に砲火集中!」
「了解! 主砲、通常モードに切り替え! 一番から四番、撃て!」
「ルリ、艦前方の防御壁、出力最大に! ヒスイ、速度を落とすな!」
「了解です!」
「承ったー!」
二度、三度とアンドロイドに激突されながらも、クサナギは速度を落とすことなく進みます。
行く手をはばむアンドロイドを、主砲がなぎ払います。
それでも突撃してくるアンドロイドを、防御壁で守られた船首で押しのけます。
「進行方向、アンドロイドの包囲網が崩れました!」
「そのまま押し通れ!」
クサナギの猛攻に耐えきれなくなり、ついにアンドロイドの包囲網が崩れました。
包囲網を脱しようとするクサナギを、アンドロイドが追いかけてきます。しかし妖精が乗る艦載機が、邪魔はさせないとアンドロイドを撃ち落としていきます。
「よっしゃーっ! 包囲網、突破するよー!」
よし、いける。
誰もがそう思ったその時です。
「緊急警報! 天使様ノ反応アリ! 真上デス!」
シルバーの警告が艦橋に響いたかと思うと。
真上から降ってきた大きな金色の光が、クサナギの甲板を貫きました。