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龍王戦記ドラグーン  作者: たくみ
第一章
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龍王機出陣

 龍王機。

 そう呼ばれる機体の整備が自分に与えられたメカニックとしての仕事であり、使うべき時に使えるようにしておくことがその本質だ。

 故に敵機襲来の連絡が入って周囲が騒々しくなったその時、既に機体は十全と稼働できる状態にしてあるということである。

 後はこれを操る乗り手が到着するのを待つばかりだが、その点に関しては心配要らないだろう。

 何しろ乗り手である火鳥タカヤは、敵襲の連絡が回ってくる以前に自分でそれを察知できるのだから。

 だから今この瞬間、力任せに扉を開いて当人が勢い良く室内に飛び込んできたところで驚く必要はない。

 今ので扉が壊れていたら経費で落としてもらう必要があるだろうが、それは後回しだ。


「来たか、タカヤ! 龍王機の準備は終わってるぞ!」


「分かった。このまま出撃する」


 呼び掛けに対してタカヤは短く答えながら、慣れた動作で龍王機によじ登っていく。

 見上げるほどの大きさの機体に対してするには危険行為に違いなかったが、龍の因子を取り込んで強化されているというその肉体に掛かれば容易いことのようだ。

 この、龍の因子を取り込んでいるという要素こそが龍王機を動かすことの出来る条件であり、現時点で敵対者の襲撃に対応することの出来る唯一の存在だった。

 つまりは自分の仕事は、火鳥タカヤの専属サポート要員の一人ということである。


「調整や改修を重ねて初期から大分変わっちまってるが、基本は同じ要領でやれば問題ない筈だ。が、ぶっつけ本番なのは変わらねぇ、くれぐれも無茶はするんじゃないぞ!」


 つまりはこうした報告や助言を逐一行うことも業務の内であり、これを怠ることは下手すれば自身の責任問題に直結することから気が抜けないのであるが、出撃準備に余念のないタカヤから帰ってくるのはいつも可愛げのない一言だった。


「無茶か。それは敵の頑張り次第だな」


「言いやがる! それと、お前から注文された手持ちの武器がギリギリ間に合った。持ってけ!」


 いつもの調子であることを確認すると、もう一つの連絡事項を伝えながら機体の傍らに立て掛けられた武器を指し示す。

 白銀色に統一されたそれは穂先の付いた斧、言うなればハルバートに分類されるものだ。

 徒手空拳でも戦える龍王機だが、その怪力を利用して重量級の長い得物を持つことで効率良く敵を撃破できるというタカヤ本人の指摘を受け、試行錯誤を重ねて完成したものだ。

 何しろ大きさが大きさな上、金属加工はともかく鍛冶師の真似事なぞしたこともないため、相当に時間が掛かってしまった案件である。

 注文を付けた側として面倒な依頼内容であることは理解していたのか、現物に目を通したタカヤの口から溢れたのは純粋な感謝の言葉であった。


「感謝する。これで遠慮なく奴らを叩き潰すことが出来るな」


 外骨格と呼ぶのが相応しいだろう、龍王機の胸部部分の空洞に収まったタカヤの身体は固定され、神経ごと接続された機体は肉体と同様に動かすことが出来るという。

 生身の人間で得れば指先一つ動かすにも激痛が走るであろう無茶な機能が作動しているのは、タカヤがそれに適する形で人体改造を受けているからに他ならない。

 結局は兵器として使ってしまうのか、という疑念は口にしないことにしていた。

 タカヤ本人がこの行動を自らの進んで行っている以上、ここで異を挟むことに意味を見いだすことが出来ないからである。

 故に今はただ、自分自身の役割を果たすことが最優先なのだと割り切った。


「元々遠慮する気もないクセにな。よし、行けるぞ!」


「了解した。火鳥タカヤは龍王機で出る!」


 白いボディに龍を象った深紅の鎧を纏い、白銀の槍斧を担いだ巨人が大きな足音を立てて出口へと歩き始める。

 この出陣を見送れば自分の仕事の半分は終わり、後は戦いを終えて帰ってきた機体の面倒を見るだけだ。

 つつがなく戦闘が終了してそうなるだろうと、疑っていない自分がそこにいることに驚かなくなったのは、ここ最近のことではなかったと記憶してる。

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