プロローグ
もう俺の人生はクソゲーだ、絶望だ。
…よし決めた。大学で、東京で、俺はビッグなモテ男になってやる!こんな地獄から抜け出して…………
その瞬間、例の会話がフラッシュバックする。これで何回目だろうか…
「お前の学費、やっぱ出せないわ。行きたいなら、奨学金借りて行ってきな。ヒック、奨学金の管理は父さんに任せろ。うぇーぃ…マジで焼酎ウメえな。。。」
ふざけんな!
部屋で父との会話を思い出し憤慨する康男。
あぁ、神様願わくば。来世は…
超絶イケメン金持ち有用スキル持ち、性格もサイコーなイケボ男子にさせてくれ……頼むぅぅ!!!
ぐぅぅ〜…
しかしすぐさま、間の抜けた空腹の音が康男を現実に引き戻す。
(はぁ、コンビニに行くか。だが、なんという皮肉だろうか。今世に絶望し、来世に賭ける俺でも、結局いのちの叫びには逆らえぬ。フッ…ままならないものだ。。。あれ?なんか今の感じカッコよくね?)
もはや気持ち悪いだけの脳内演技。康男は厨二病のセンスすら壊滅的だった。
コンビニは家から10分。徒歩だしダルいが、家の冷蔵庫にはクソ親父のツマミしか無い。
「マジで、カップ麺くらい置いとけよ…俺の小遣いまた減るわ…」
康男は親から小遣いは貰えない。親にねだっても、金ではなく言葉の暴力を貰う日々。だからこそバイトに勤しむのだ。…が。
バイトでは仮面しか被れない。
親からの度重なる言葉の暴力は、康男の年相応の甘えを粉々に砕いていた。
本来、安らぐ場所である家庭は、康男にとっては戦場でしか無い。
彼にとって、他人とは、友達とは…
嫌われないように否定されないように、自分の心を見せられない恐怖の対象でしか無かった。
電子辞書で【友達】と検索した履歴を、同級生に見られて馬鹿にされたあの日を思い出しながら…
「マジでこれクソゲーだわ、せめて裸の美少女に馬鹿にされたかったよ…クソォォオ!」
意味不明なことを呟きながら歩く康男はまさに不審人物。
そんな康男の目に飛び込んでくる美女。大通りの横断歩道を渡ろうとしている。
おかしい!明らかにおかしい!この皆疲れ切った社会では決してお目にかかれないであろう美しさ。心から目を奪われる程の色気に涎が……etc.etc
(モデルか?もはや周りの風景と、画風が違うじゃねーか……え、えっ?)
いきなり信号無視をする美女。このままではヒノノニトンに轢かれる!
康男は走り……出せなかった。
美女まで30メートルは離れている、今から走っても轢かれるだろう。だが、目を離すことなんて出来ない!自然と早歩きになっていき…
「ちょ、ちょっと!! 危ないって!」
「え?」
美女がこちらを振り向く。驚愕したような目で、こちらを見つめ…
次の瞬間。康男の身体は、宙を舞った。
その日、康男は輪廻転生の輪から外れ…
異世界転生と相成りました(が…それはまた次の項で)。
「は……こ、ここは?」
辺りは真っ白。どこまでも広がる真っ白な世界。
『ようこそ、松本康男くん』
目の前に、信号無視の美女が佇んでいた。