表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの日見た流星  作者: カルバリン
40/43

第39話 


「今のところ統合軍艦隊は追撃部隊の再編成を行っているみたいですぜ。この分なら軌道エレベーターまではすんなり進めそうだ」


「…どうだろうな、確かに今の統合軍上層部は無能が多いが…そうじゃない連中もいる」


「そうは思えませんがねぇ、今の今まで俺達の計画を止める事も出来なかった連中ですよ?」


「………さて、どうなるかな。我々も厄介な爆弾を抱えている以上無事に計画を進めるのであれば選択を間違えてはいけないのだ」


「あんな女…早めに殺しては?」


「リースは殺せない。お前はリースを殺したその後の事を考えて言っているのか」


「殺したとして世界が滅ぶわけでもないでしょうに」


「世界が滅ぶ…まぁそれもあるが…リースは鍵なのだ」


「鍵?そりゃあ一体…」


「今に分かるさ。リースがなぜ私達を襲撃してきたのか、なぜアルベルトがリースを欲しがるのか…そしてなぜリースはディステルガイストを封印していたのかがな」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『おい!そこの黒いの!お前はこっちのゲートに来い!』


「わ、わかりました!」


『ん?女…?お前、どこのファミリーだ?』


や、ヤバい…ファミリーってなに?!


「えっと、オドネルファミリーです!」


『あぁん?オドネル…?聞いたことねぇな。つうことは弱小ファミリーか、なら向こうのゲートに行け!』


「あ、はーい!ありがとうございまーす」


ファントムを動かして指示されたゲートを通るとあまり整備されてるとは言えないドックだった。


「ここで暫くやり過ごすしかないかな」


ファントムを空いている場所へと動かして駐機姿勢をとらせるとファントムから降りる。


周りを見回すと個性もバラバラな宙賊の機体が何機も並んでいてそのパイロットだろう人達が機体の整備を始めていた。


…宙賊っていっても自分で整備したり改造の話をしたりしてるんだ…


「お?おめぇさん見ねえ顔だな?」


「そ、それは…」


「そんな怯えるなって!このドックは向こうの有名なファミリー達が使うドックとは違って弱小ファミリーの集まりだが馬鹿な連中はいねえ!嬢ちゃんみてえなガキをどうこうしようなんて奴はいねえぜ!」


なんだかよく分からないけど…悪い人ではなさそう、いやでも宙賊だし悪い人かな?


「どうせ統合軍の連中は暫く追ってこれねぇから今の内に飯なり整備なりやっとけよ?嬢ちゃんのファミリーもその内来るんだろ?場所だけは先に取らねえとすぐ埋まっちまうぜ」


「い、いえ…私だけです」


イリスがそう言うと周りが一気に静かになる。


「あ、あの…」


「嬢ちゃん…おめぇさん1人生き残ったのか?」


「………」


ど、とうしよう!周りの人達も無言だし…


「そうか、辛かったな」


え??


「みんな!この嬢ちゃんは1人で生き残った!この嬢ちゃんにファミリーの掟を使うのに反対のやつぁいるか!?」


周りの人達が次々と首を振る。


「嬢ちゃん、お前さんのファミリーの名は?」


目の前に凄く厳つい顔が近づいてきて肩を掴まれて驚くイリス


「ぴぃ!お、オドネルです!オドネルファミリー!」


イリスが答えるとおじさんは頷く。


「野郎ども!オドネルファミリーに黙祷!!」


叫ぶと同時に周りの人達全てが目を閉じて胸に手を当てる。

そうして暫くするとおじさんが手を叩き黙祷が終わる。


「…嬢ちゃん、これから先はお前さんも死ぬかもしれねぇ。嬢ちゃんは若けぇから逃げていい」


「…いえ、やることがありますから」


「…そうか、ならもう何も言わねぇ。何かあれば俺でも周りにいる奴でもいいから頼れよ?」


イリスが頷くとおじさんはイリスの頭を乱暴に撫でてから自分の機体に戻っていった。


…勘違いされてるし罪悪感があるけど仕方ないよね?


「…とりあえずファントムを整備しよう。通信は出来そうにないしやれることをやっておかないとね」


早速近くにあった整備員用のボロい工具下げをもってファントムの整備を始めるイリスだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「アリア、少し落ち着けよ」


「落ち着け?落ち着ける訳ないでしょ!イリスが戻ってないんだよ!?そんな…」


「だからってアリアに何か出来るか?今の俺達じゃイリスに出来る事がない。ならもっと別の事を考えた方がいい…ニールはそれを分かってるからああして機体の修理に参加してるしな」


「分かってる、けど…」


「イリス君は少なくとも生きている、今艦長と話をしてきたが彼女は今アルテミスにいるらしい。それと…どうやらダリウス中佐と連絡が取れた」


「ダリウスさんと?!それでダリウスさんは??」


「うむ、ダリウス中佐…いやもう統合軍所属ではないか。ダリウス殿はこれからアルテミス追撃に合流するそうだ」


「…アルテミスは一体どこへ向かっているのですか?」


「…アルテミスは地球へ向かっている、今も尚加速しながらね。このまま加速し続ければ停止限界ラインを越える」


「なんですって?!そんな事になったら…!」


「そう、地球へ堕ちる。しかも予想進路は統合軍本部だ」


「でもアルテミスには宙賊とはいえ人が住んでるんですよ?!そんな事するとは…」


「……」


普通ならやらない。だが実際にもうアルテミスは地球へ向けて移動しているのだ


「何を考えているかは分からん、しかし止めなければならない。その為に…我々も出来る事をやるのだ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ふぅ。装甲は特に問題ないね…後は弾薬の補充だけど…」


ファントムの横に寝かせてあるアサルトライフルの残弾はマガジンに残っている13発の徹甲弾のみ…予備のマガジンも空、バルカン砲も残弾無し…


「補充したいけど流石に無理かなぁ」


周りを見渡してみると別のブロックから帰ってきたらしい宙賊が数人で箱から弾薬を下ろしている所だった。


「あの!すいません!ちょっと良いですか?」


「あん?…あぁ嬢ちゃんか。なんだ?」


「弾薬の補充をしたいんですけど…どこにいけば良いか分からなくて…」


「それならこの通路から出て右にある補給受付に行け、そこで買える」


「買う…??…ありがとうございます」


イリスはお礼を言ってから通路を進む。


宙賊の人達は弾薬を支給される訳じゃないんだ…?一応貯金はそこそこ持ってるし必要な分だけなら買えるかな…


考えながら歩いていると目的の場所へと着いたが…イリスの想像とは全く違った。


「…買うならそこの端末で注文しろ。言っておくが値引き交渉なんぞしねえからな、値引きなんて口走ったら…分かるな?」


そう言って銃を見せてくる受付のおじさんに何度も頷くイリス。


「じゃあさっさと注文しろ。またすぐに次のファミリーがくるからな」


言われて端末を操作する…とても見た目からは想像出来ないが品揃えは良かった。


「フロース社製の対AF用徹甲弾…あった!1ケース14万………うぅ…これちゃんと請求しよう…」


1ケースでマガジン二個分…つまり50発入だが泣く泣く購入してから他にもバルカン砲用の弾薬も買った辺りでイリスの横をこの補給所の人?が通りすぎてカウンターでさっきのおじさんとの話が聞こえてくる


「デール、例のやつも倉庫にいいのか?」


「あぁ、あれか。…実はラッツの奴死んじまってなぁ」


「はあ?!支払いはどうすんだ!?金を貰わねえと俺が殺されちまう!」


「それは…だが俺達も代金を受け取ってない以上どうしようもねぇ。他の奴にでも売ったらどうだ?」


「あの馬鹿!特大の爆弾置いて死にやがって!あんなもん誰が他に買うってんだ!今時あんなクソ重いバズーカなんざ…」


なんだか言い争ってるみたいだけど…バズーカ?それに重い…もしかして


「あの~?そのバズーカってファラドールの”スレッドバズ”の事ですか?」


「あぁそうだよ!…ってなんだ?お前みてぇなガキに関係ねぇだろ」


「…それ私が買います。幾らですか??」


そう言うと男はすぐにじっとイリスを見る。値踏みするような視線にイリスが黙っていると…


「どうせ買う奴なんざいねぇだろ?その嬢ちゃんに売ったらどうだ?」


「…まぁ良いけどよ。値段は75万エルだ弾薬はマガジン4つ、内二つが通常弾頭、あとは散弾だ。弾薬込みで110万エル、それ以上は下げられねぇぞ?」


う…110万…私の貯金じゃ買えない…けど


「買います、それって私のハンガーまで運べます?」


「買えるわけねぇよな…ってマジか?勿論買うなら運ぶ!」


イリスはすぐに持っていた端末を操作して自分の口座から切り替えて別の口座から支払う。


「まじで買えるのか…お前のファミリーが払ったんだろうが勝手に買って良かったのか?」


「大丈夫です、私しかいませんから。じゃあこの先にあるハンガーに黒いアサルトフレームが駐機してあるのでそこへお願いしますね…あとこれも一緒に良いですか…?」


イリスは先に購入したアサルトライフル用の弾薬ケースを指差す。置かれているケースはイリスが運ぶには大きい上に重量もある。


「大丈夫だ、一緒に運んどいてやるよ。すぐに持っていくか?」


「お願いします、私も戻って準備しておきますから!」


言いながら走りさったイリスを見送る男…


「あの子供…何者だよ?」


「知らん。今回はアルテミスを動かして統合軍の要塞を攻めるって話らしいが…あんなガキまで使うなんてな」


「なぁガンツ、嫌な予感がするから一応脱出の準備はしておけよ?俺と伯父貴もこの後すぐに出るからな」


「そうさなぁ。統合軍の要塞に仕掛ける前には逃げるさ」


「そうしろ。じゃあまたな」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


それから1日…ファントムのコックピットで寝ていたイリスは外からの音で目を覚ます。


『各アサルトフレームはただちに出撃、繰り返す…ただちに出撃!』


ファントムを起動してモニターを見る。


「出撃…?どこ…?」


モニターに位置情報を出したイリスは驚く。


「え…?……地球…軌道エレベーター…?だけど…この速度だと…」


すぐに計算し始めたイリスは最悪の展開だと知る。


『…これよりメテオストライク作戦は最終段階に入る、追撃してきている統合軍、要塞から出撃してくる迎撃部隊を撃滅する!』


おぉぉぉ!と叫ぶ宙賊達はすぐにカタパルトから発進していく。


「アルテミスがこのままの速度で進んだら…それだけは止めなきゃ!」


イリスはタイマーをモニターに表示してセットする


「あと4時間…それが限界…」


ファントムを立たせるとハンガーの横に置かれていたバズーカを担ぐとカタパルトへと進む。


「いくよ…ファントム!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ