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あの日見た流星  作者: カルバリン
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第3話


オストローデン襲撃の数時間前、適性検査専用区画ではイリス達学生が検査を受けるのを待っていた。


「アリア、少し落ち着きなよ?焦っても良い結果にはならないよ?」


イリスは隣に座ってそわそわしている友人…アリアに苦笑いしていた。


「いいよねぇイリスは余裕あってさ、私はイリスみたいに成績も良くないし、ニールみたいに実技も良くないし…安心出来る要素がないよ…」


「だけど空間認識と機体整備は学年で上位だったでしょ?お父さんが『自分の機体を整備出来るだけの知識を持った奴は優秀なパイロットになれる可能性もある。むしろ自分の機体の事を把握出来ない奴はいつまでも新兵に毛が生えた程度にしかなれない』って言ってたよ」


「そうなの?…でもまぁもしもパイロットとして適正が無かったらイリスの専属整備士にしてもらうから!」


「あはは、まぁその時はよろしくねー。私もどうなるか分かんないけどさ」


「イリスは今までパイロット適正オールAだったじゃん!それで本番が適正無し、なんて有るわけないよ…ってあれ?イリス、そのペンダント何か今光ったよ?」


「え?これ?」


言われてペンダントを見るけど…特にいつもと変わらない


「そのペンダントいつも着けてるけど、大事な物なの?変わった形だけど…」


アリアが指差しているのは母親が行方不明になる前に渡されたペンダントで起動キーのような形をしている。


「うん、これはお母さんから貰った形見…かな?行方不明だから形見って言い切っちゃうとお母さんが死んだって認めたみたいで嫌だから形見?ってなるけど…」


確かに親が娘に送るペンダントにしては形が歪というかなんというか…やっぱり鍵?なのかな…何の鍵かは分からないけれど。


「ま、私の勘違いかもだから気にしないで?…そろそろ私の番だから行ってくる!この後のAFフィッティングで良い機体を貰えるように良い結果を出したーい!!」


AFフィッティングは適正がある人の中でも優秀な人に政府から特別援助という形でAFが支給されるのだけど、それは本当に一握りだと言われている。


ほとんどはここ、オストローデン内にあるジャンクステーションで状態の良い機体を探してそれを買い取るのが通常だ。


「頑張ってね!私も頑張るから!」


お互い手を振ってそれぞれの部屋へと向かう途中…


「…なぁ、あれ!あそこでなんか光ったぞ?」


近くにいた男子生徒がなにかを指差していた。


…光った?このオストローデンの中でも奥にあるこの場所で……?


指差した方向を見たとき…


「………あれはAF?こっちに向かってくる……?」


次第に明らかになるその姿は確か授業に出ていた機体…


「AG03ランサー?でもこのオストローデンにランサーなんて配備されてる訳が…」


ランサーはスピアの後継機で量産型AFだ。外観は中世の騎士に似せて造られたスピアより更に洗練されたフォルム、整備性を向上させる為に簡略化されたブロックユニットシステムなど量産型として完成されたAFだ。


訝しげに見ているとランサーは右手に装備されたマシンガンを向けるのが見えた。


「みんな!離れて!!」


咄嗟に走って物陰へと隠れた瞬間…


物凄い轟音と共に窓ガラスが吹き飛び、壁が破壊されていく。


「!?!」


なんで?!いきなり発砲するなんて!


『全員その場を動くな。ここは我々"ローレライ"が占拠する!繰り返す、全員その場から動くな』


ローレライ…最近よくニュースになってる宇宙海賊だ……。


言われた通りその場で動かずにいると奥から更にもう1機ランサーがやって来てコックピットハッチが開く。


「誰も死んでねぇな、オーケー。君たちには少しの間人質になってもらう。…大人しくしていれば殺しはしない、我々の目的が達成されればすぐに解放すると約束しよう」


こういう時大抵は嘘だろうけど…


『バルト、ロンメルが突破されたらしいぞ!相手は2機、赤いカスタム機と青いスピア改!ダリウスとハロルドだ!』


え?!


「…お父さんが?」


「あ?…お前、今何て言った?」


私の呟きを聞きつけた男が近くにきて私の顎を掴む。


「……似てねえ。だが"どっち"の子供だ?ダリウスか?ハロルドか?言わねえと…」


銃を突き付けられてそう脅される。


言いたくない、私が捕まればお父さんは…


それならいっそ…ここで…!


「イリス!…その子の父親はダリウスさんです!」


アリア!?


「…そうかそうか!レッドライトニングの!こりゃあ良いねぇ、思わぬ所で切り札が手にはいったぜ」


男に引っ張られて立たされるとそのままAFの所まで連れて行かれる。


『おい!作戦外の事をするな!"お楽しみ"は今回は無しだって言っただろうが!』


「ちげーよ!こいつ、ダリウスの娘らしいぞ。人質としてこれ以上有用な人質も無いだろ?」


『……分かった。だが、必要以上に手を出すな。もし子供に何かあった時…レッドライトニングが地獄まで追いかけてくるなんざごめんだからな?目的のAFさえ回収出来たらそれで良いんだ、もうこんなチャンスは二度と無いと思え』


「了解、…お嬢ちゃん、ま、そういう訳でちっと付き合ってくれや」


「………」


「そんな警戒しなさんな、こんな狭いコックピット内じゃなんも出来やしねぇよ」


どうしよう………。




「おい、アリア!イリスが捕まったじゃねーか!どうすんだよ…?」


ニールがアリアに詰め寄るがアリアはニールを払い退ける。


「分かってるけど、あーでもしないとイリスは多分殺されてた…っていうより足を引っ張らないように自分から…とにかく、私だって考え無しに言った訳じゃないよ!」


「すまん、焦ってもしかたねぇ。この状況をなんとかしないとな、誰か…協力してくれそうな奴は…」


辺りを見回すニールだが周りは皆抱き合って泣いていたり怯えて縮こまっていたり、先程の銃撃で怪我を負った生徒…まともに戦えそうな生徒はほぼ居なかった。


…こっちだ。


「…?」


左の壁を見ろ、そこに居る


「…壁?……!ロイ!?」


静かにしろ、バレるだろうが!


「……何でそんな所にいるんだ?」


適正検査を受けてたら衝撃が来てドアがロックされちまったんだよ。だから通気孔から脱出してここまで来たんだ。

それより…ちょっと付き合え、イリスを捕まえた奴らに一泡吹かせられるかもしれないぜ?


「なるほど、…俺もそっちにいく…アリアはここで待っててく…」


「嫌、私も行く!」


分かったから!騒いだらバレる!どのみちアリアにも来て貰わないと困る


二人は男達が目を離した隙にロイのいるダクトへと隠れる。


「よし、バレてないな」

「…んで?どうすんだよ?相手はAFだぞ?」


「分かってるさ、相手がAFなら俺達もAFを使えばいいだけだ。その為のアリアだ」


「??」


「ここに来る途中で偶然見つけたんだよ、多分最新型のAFをさ」


「ええ……?それを使うって事?ヤバいんじゃない??そんなことしたら後から…」


「…いや、それで行こうぜ。後から後悔するくらいならどうにでもなれだ」


「ニールならそう言うと思ってたぞ。アリアはどうする?起動準備とかをアリアに頼めたら楽なんだが…」


渋い顔をしていたアリアだったが諦めたように溜め息を吐くと頷く。


「…いいよ、あのまま大人しくしててもどうなるか分かんないからね…でも、やる以上はイリスを絶対助けるつもりでいくよ!」


「「おう!」」


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