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あの日見た流星  作者: カルバリン
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第36話 動き始める運命


『ハディス、防御よろしく』


『シールド展開』


メガランチャーと敵の艦隊との間に割り込んできた機体がメガランチャーを受け止めた事に驚く。


『私のカレイジャスには通用しない…“ハディス“ハッキング開始』


《了解、敵機へのハックを開始…》


『!?』


コックピットに響く警告…モニターには機体のシステムがハッキングを受けていると表示され見る間に機体の支配権限が書き換えられていく。


《警告、機体システムに異常発生…機体コントロール不能…》


「くっ!?」


イリスは必死にコンソールを操作してハッキングに対抗するが所詮人と機械では対抗すら出来ない。


『最初からこうすれば良かったのに…ロッソは馬鹿だね』


《掌握率86%…》


『それだけ掌握出来れば充分。ハディス、敵機の武装コントロールをこちらへ…まずはあの目障りな戦艦を沈めてもらう』


そう言うと同時にファントムがメガランチャーのチャージを開始、照準をソルシエールへと向ける。


「だ、駄目!言うこと聞いて!」


必死にレバーを操作するがそれを無視してファントムは動き続ける。


『無駄。もうその機体は私の支配下』


やめて…


《充填率62%…69%…78%…》


やめてよ………


《…87%》


ソルシエールには皆が…


《91%…》


『さようなら。これで…おわり』


「やめてぇぇぇぇ!!!」


チャージ完了と同時に放たれたビームは迷わずソルシエールへと向かい…ソルシエールの側面を通過していった。


『な?!』


「え…?」


《機体中枢にエラー、深刻な動作不全を確認…ヴァルハラシステム…起動》


ファントムのカメラアイが赤く不気味に光輝く。


《警告、敵機より強力なジャミングを確認…ハッキング不能》


ゆっくりとファントムが腕を動かす…まるで身体の具合を確かめるかの様に…


『デタラメな…機体の制御を自力で…?…違う!ハディス!!』


《敵機からのハッキング…マスター、防衛にリソースを割くためイージスは使用不可…手動にて操作を》


『嘘…ハディスがそこまで…』


《敵機…来ます》


ファントムが腕を振ってビームソードを展開…一気に加速して迫る。

それに合わせてサーベルを引き抜くとバーニアを噴射してサーベルを振り抜く。


ギィン!!


お互いの剣が接触した一瞬、激しい光を放ったが…

競り合っていたファントムのビームソードが更に輝きサーベルを両断するとそのまま機体の頭部を斬り飛ばし、更に右腕、左足、右足と順に破壊していく。


『あぅぅ!!?』


衝撃でコックピットが激しく揺れる中補助カメラからの映像をみたパイロットの少女は…


『あ…あ、あぁ…』


赤く不気味に輝くカメラアイ…


”絶対に油断するな、対峙しても軽く一当てする程度にしろ、じゃねえと…喰われるからよぉ。乗ってる人間じゃねぇ…あの機体がヤベェんだからな“


出撃前にロッソから言われた言葉…あの時のロッソは真剣な声音だった…それが今になって脳裏に甦る。


「ごめ…ん、ロッソ……私…間違っ……」


『言わんこっちゃねぇ!!』


ファントムがトドメを刺そうと振りかぶった瞬間、横からの攻撃でよろめく。


「…ロッソ…?」


『ああ!無事か!?マーヤ!』


よろめいたファントムへ更に構えたキャノン砲を叩き込んで弾き飛ばすともう胴体しか残っていない機体を背に庇い立ち塞がる。


『ちぃ…バルガスがありゃあ何とかなるが…こんなスピアじゃどうしようもねぇぜ…マーヤ、だから言っただろーが!…もう止められねぇぞありゃ…ジジイ達が恐れていた最悪の事態だぜ』


『え…?』


『あの機体にはちょいとやべぇシステムがあんだよ…それを絶対に発動させんなって命令だったんだがな』


『そんな命令…聞いてない』


『これは一部の奴しか知らねぇ。大体今回は適当に下っ端の、制御出来ねー宙賊連中を減らす予定だったんだよ…だから言った筈だ、軽く一当てする程度にってな』


弾かれたファントムがアサルトライフルをフルオートでばらまいてくるとロッソはそれをシールドで防ぎながら続ける。


『マーヤ、スラスターは生きてるか?!』


『…駄目、完全に死んでる…!』


まじかよ…こりゃいよいよ…


『………と……て……!』


『…?なんだ…?』


『とま…て……!も…いい…………』


『ロッソ…この声…あの機体から…』


変わらずアサルトライフルやバルカンを撃ってきているファントムから聞こえる声…


『もう、良いから…!やめて…!止まってよ…ファントム!』


『…!?あの嬢ちゃんが制御出来てる訳じゃねぇのかよ!』


『ロッソさん!援護射撃を開始します!』


『待て!ちぃ!!』


ファントムへ向かって味方の艦隊が一斉に主砲を発射するとそれを察知したファントムがバーニアを展開、飛来した無数の主砲弾を尋常じゃない加速と変則的な軌道で避けていく。


『あんな無茶苦茶な軌道をあのスピードでやったら…中の奴は…!』


普通なら避けられる筈がないあの砲撃の嵐を急激な減速からの急加速、スラスターによる無理矢理な制御で全て避けていやがる!


『乗ってる人間が耐えられる筈がないのに…まだあの機体は動いてる…』


第2射として無数の誘導ミサイルが発射されファントムめがけて飛んでいくのを見てロッソは我にかえる。


『…今のうちに逃げるぞ!』


ロッソは破壊された機体にワイヤーを繋ぐとバーニアを吹かす。

ちらりとモニターを見るとファントムが迫るミサイルから逃れながらバルカン砲でミサイルを撃ち落としているのが見えた。


『化け物じゃねぇか…あんなのを使って何やらかそうとしてんだあの爺さん共…!』


『どういうこと…?』


『いや、何でもねぇ…それよりも…どうやら逃がすつもりはねぇみたいだな!!』


ミサイルを全て撃ち落としたファントムが真っ直ぐにロッソ達へと突っ込んでくる。


追いかけてくるファントムに再度艦隊からの砲撃が開始され、ロッソもキャノン砲を連射して迎撃するがそれを全て躱して突き進むファントムの更に後方から敵の白い戦艦…ソルシエールの主砲が味方の巡洋艦を沈め、すぐに続けて放たれた砲撃で他の戦艦も次々撃沈されていく。


『あの黒い奴の母艦も相当だな、かなり被弾してた筈だがまだあれだけの火力を出せるのかよ…!それに……もう追いついて来やがった!』


ファントムが更に加速しながらビームソードを展開して斬りかかってきたその瞬間…ガクンと不自然に体勢を崩して逸れていく。


『なんだ…?』

『ロッソ、あの機体…なんだか様子がおかしいよ!』


赤く不気味に輝いていたカメラアイが光を失い、完全に機体が停止する。


『こいつは…止まった…のか?』


目の前の機体は沈黙した状態で漂っているが…


『ねぇ、このまま捕まえたら良いんじゃ…』


マーヤはそう言ってコックピットから出るとホルスターから銃を取り出してファントムへと取り付き素早くコックピットハッチの強制解除を行うと中に入っていく。


『おい!迂闊に…『大丈夫、完全に意識を失ってる。このまま…』


“それは許さない、私の……”


『なんだ!?この声…!』


“おいで…ディステルガイスト”

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