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あの日見た流星  作者: カルバリン
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第34話 戦闘開始



「……そうか、統合軍もようやく動き始めたか」


「ええ、もう間もなくこのアルテミスへ接近するかと」


「宙賊だの海賊だのもういいっすかね?見境なく傘下に入れるんでもう統率が執れねぇのが多々出てきてるんすよ」


「わかっている。…それで?アルベルトに動きは?」


「はい、アルベルトが所有する贋作が例の少女と接触…どうやらそれに伴いあの女も動き始めたと」


「忌々しい。カタリーナ…アレイストの亡霊め。あの頑固女がいなければ今頃我々がディステルガイストを…」


「さらに我々が保護している彼女にも変化が…」


「……それは本当か?!」


「はい、アルベルトから受けた傷など全て完治しているにも関わらず意識が戻らない状態でしたが…一度だけバイタル反応が強い反応を示しました」


「完全に回復するにはやはり…」


「…ボス、私は例の少女に託した方が良いのではと」


「…駄目だ」


これ以上計画に遅れを出す訳にはいかぬ。


「では接近中の例の戦闘艦…確実に敵対しますが…それで宜しいですか?」


今はまだ…我々が動くべきではない。


「…傘下のロクデナシどもに当たらせろ。今本隊の戦力を消耗する訳にはいかない…奴ら程度なら撃破される心配もない」


「了解しました。…聞いていただろうロッソ?増えすぎた馬鹿共を減らす機会だ」


「……へいへい。んじゃ俺が率いて一当てしてくらぁ!」


男がそういって立ち去ろうとした時…


「ロッソ、妙な真似はするなよ?お前がコソコソと何をやっているかは知らんが…牙を剥いた瞬間に貴様は終わりだということを忘れるな」


「………あいよぉ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「どうするね?ファントムに装着するかそのままディステルへと装着しておくか…イリス君次第だが?」


「ケルベロスⅡはそのままにしておいて下さい。ファントムにはまだ必要ないですし…ディステルも稼働させるならケルベロスⅡはディステルで運用した方が良いと思うんです」


「まぁ確かに。近距離戦闘しか出来ないよりはいいかもしれんが…ディステルには誰か乗る予定があるのかね??」


「一応考えてはいるんですけど…本人があまり乗り気じゃないというか…」


「……そうか、ならば動かせるようにはしておくとするかね」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「え?俺に?それは……」


「ロイ、あなたなら使いこなせるんじゃない?私はファントムがあるしニールもレムレースがあるからね」


「それはそうだが…俺は成績も下から数えたほうが早いし…」


「それなんだけどさ……ロイが成績悪いのってわざとだよね?明らかに手を抜いてた時あったしさ」


学院での成績は確かに下から数えたほうが早い、だけど私はロイが本当にそうだとは思わない。


「………すまない、無理なんだ」


「…そっか。大丈夫、駄目元で言っただけだったしなにか事情がありそうだね…ごめん」


「…いや、大丈夫だ」


「じゃあ私は出撃だからいくね」


イリスが行った後一人残されたロイは呟く。


「俺には…そんな資格…ないからな」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「艦長、前方300に敵アサルトフレーム、艦隊多数展開中!さらに周辺宙域からも多数接近中!」


「厳しい戦いになるだろうとは思っていたが…こうまで戦力に差があるとはね…味方の艦隊はどうなっている?」


「統合軍第2艦隊より戦艦"スパイア"及び戦艦"スローネ"の2隻を旗艦とした艦隊が我々の左舷前方1600にて展開中です」


第2艦隊が周辺の敵を食い止めてくれるか…?


「エイミー、アサルトフレーム発進と同時に前方へ主砲斉射、全ての兵装を叩き込め!」


「了解!全兵装起動、アサルトフレーム各機は順次発艦してください」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ニール、今回は油断しちゃ駄目だからね?」


『わかってるって!イリスこそ油断すんじゃねーぞ?』


「勿論、そんなつもりはないし…落とされる気もないよ」


『へへっ…だよなぁ。んじゃ俺からいくぜ?…レムレース、出るぞ!』


レムレースがカタパルトの上を加速して発艦していった後イリスもファントムをカタパルトへと進める。


『今回の戦い…恐らく以前のカスタム機とイリス君が交戦したスピアも来るかもしれん。警戒してくれ』


「ええ、あの2機は私達を狙ってきてました…警戒はしておきます」


何が目的なのかハッキリ分からない以上考えても仕方ない。


ゆっくりとスロットルレバーを押し込みながらフットペダルを踏み込む。


「出力上昇…各部異常無し、ファントム…行くよ!」


カタパルトで一気に外へと押し出されると同時にスロットルを全開まで押し込みバーニアを吹かすと先に出ていたニールと合流する。


『で?俺達はどうする?』


「暫くはソルシエールの周りで護衛してた方がいいんじゃないかな?統合軍が討ち漏らした敵が来ると思う………こんな風に!」


統合軍のアサルトフレームが爆散してその閃光の中から飛び出してきた敵機に向けてライフルを構えてトリガーを引くイリス。


ライフルの弾丸が敵機を貫きよろけた所にイリスは続けざまにヒートナイフを投げつけ敵を沈黙させた。


「すげぇ……」


「ファントムが完全に修復されたからか動きにラグが無くなったし…何とかやれそうだよ」


「ファントムって元はかなり昔の機体なんだよな?改造でもしたのか?」


「してないよ?そんな時間も無かったし修復して元の性能に戻っただけってフロイトさんは言ってたね」


『スゲーな…』


「うん、実際凄いよ。今なら分かる…フロイトさんがスピアとは比べ物にならないくらい性能だって言っていた意味が」


『……っと、こっちに流れてきた敵がくるぜ!』


「了解、ニールはソルシエールの護衛を、私が前に出る!」


『わかった!任せろ!』


レムレースがバーニアを吹かして下がったのを確認してからイリスは対AF用アサルトライフルのロックを解除する。


「アリア達がいるソルシエールには近付かせない…!」


前方から向かってきたランサーとスピアへアサルトライフルを放ちスピアを撃破しそのままサーベルを抜き放ってランサーを切り伏せる。


「次は……っ!?」


『おー、派手にやってる奴がいんなぁ!!こっからは俺が相手してやるよ!』


突っ込んできたアサルトフレームがブレードを引き抜くのを見たイリスもファントムの腕を振り抜きソードを展開する。


『ビーム兵器かよ!?だがよぉ…そんな動きじゃ俺はやられねぇぞぉ!!』


振り抜かれたブレードを受け止めるイリスだったが受け止めたファントムの腕は関節部から悲鳴を上げてアラートを発する。


「くっ!?!なにこの機体…!パワーがファントムよりも上って事?!」


『俺の相棒はパワー自慢話でなぁ…そっちもパワーは中々のもんだがこの"バルガス"には及ばねぇ』


更に押し込まれるブレードが少しずつファントムへと近づく。


『粘るねぇ!バルガス相手にここまで…「うるさい!」』


ファントムのバルカン砲が唸りながら発射されてバルガスの装甲に弾かれていく。


『無駄だな、こいつの装甲はそんな豆鉄砲じゃ傷1つつけらんねぇさ!』


ファントムの残弾表示が0を示してカタカタと空撃ちしたと同時にイリスはスロットルレバーを最大まで押し込みバーニアを噴射する。


「単純なパワーは負けてても…推進力はどうかしら!!!」


『なんだ!?』


スロットルレバーを一気に押し込むとファントムが応えるようにバーニアを展開して炎を吐き出す。


激しい押し合いの中…イリスはすぐにフットペダルを踏み込みファントムの脚部からスラスターを噴射してバルガスの胴に膝蹴りを入れて体勢を崩させると腰のマウントからアサルトライフルをスライドさせて構える。


「バルカンが駄目なら…これならどう?!」


装填されているのは対アサルトフレーム用22.5㎜炸裂徹甲弾40発…!


「全弾、喰らってみなさいよ!!」


トリガーと同時にアサルトライフルから弾丸が発射されてバルガスの装甲に穴を穿つ。


『っの野郎!!』


バルガスは火花を散らしながらもブレードを引き抜いてファントムの右腕を斬り飛ばして距離を取る。


腕はやられたけどまだ致命的なダメージじゃない…!


「ファントム!まだ行けるよね?!」


『機体損壊率37%…稼動出来るダメージまで43%。戦闘継続可能』


やっとまた喋ったわね…だけど今はどうでもいい!


「畳み掛ける!」


残った左腕でバルガスを殴り付けるファントムに対してバルガスも拳に装甲を纏わせ殴り返すとファントムは弾き飛ばされるがスラスターを吹かして再度殴り掛かる


…何度も殴り合いを続けていると周囲から敵の増援部隊が集まってきてファントムに攻撃を開始する。


『残念だったな、時間切れだぜ…嬢ちゃん』


周りを囲まれたファントムに対して全ての機体が武器を構える。


「………はぁ、はぁ……」


どうする…?


『さて、これ以上戦っても死ぬだけだと分かるよな?大人しく投降しろ。なぁに悪いようにゃしねぇさ』


イリスが黙っているとレーダーに反応、急速に接近する1機のAF。


『やらせんよ!』


その機体は接近しながら流れるようにアサルトライフルで周りの敵機を破壊してバルガスへと近づく。


『てめぇ!!裏切るのか?!』


『さてな。だがまぁこの黒い奴をお前らに渡すのを俺の雇い主が嫌ってるんでな』


言いながらサーベルを引き抜くのは…黒の塗装に所々赤のラインが引かれたアサルトフレーム…さらにバルガスの装甲を抉る1発の弾丸。


『これで貸し借りは無し、ですね』


対艦ライフルを構えたスピアから聞こえた声にイリスは驚く。


「…………お母さん…?」


あまりにも似ていた為にイリスが呟くがそれを掻き消す用にイリスの後方から戦艦の砲撃が通過して周りに残っていた敵のスピアを爆散させていった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「敵機の大多数を撃破、メテオ1は損傷している模様。残りの敵機へ攻撃を再開…「いや、少し待ちなさい」」


『いい判断だ、こちらを攻撃した瞬間に我々はそこの黒いAFへ攻撃する』


「だろうね。だがそうしないのは理由でもあるのかな?」


ジークリンデの問いにはジェーンが答える。


『ただ借りを返しただけです。もう借りは返したのでこれより先は敵同士に戻るだけですので』


『そういうことだ。……それと…賊どもには気をつけろ。一部の統合軍と何か企んでいるからな』


「忠告感謝する、だが我々も目の前の事を片付けていくしかないのでね」


『…では俺達は失礼する。まだやるべき事があるんでな』


「待って!!スピアの人!あなたは…」


『………』


イリスの問いに答える気は無かったのかそのまま飛び去る2機のAF


『イリス君、一旦戻りたまえ。またすぐに次が来る』


「…了解です」

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