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あの日見た流星  作者: カルバリン
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第33話 動き始めた状況



話し合いから1日が経ったその日の夜…アリアは1人格納庫でファントムのコックピットに座って作業をしていた。


「……凄い。ここまで複雑な制御プログラムは見た事無いなぁ」


カタカタとキーを叩く音が格納庫に響く。


「それに機体の基本スペックも高い…いや、高すぎる。製造された時期だと明らかにオーバースペックよねこれ…こんな機体を造れるイリスのお母さんって…」


イリスから聞いた話が本当ならあの深紅の死神がイリスのお母さんだって話だったけど…


「資料には冷酷非道で狂った人物として書かれてた…でもそれは…」


「それは間違いだ。…いや、半分間違いといった所か…アリアちゃん」


アリアが振り向くとそこには…


「デンゼルさん…?」


デンゼルはファントムへと近づくとアリアが作業していた端末を手に取り眺める。


「君は優秀なメカニックだな。リースが造ったこのファントムをここまで調整出来るのだから」


「デンゼルさん、貴方はイリスのお母さんの事に詳しい。今回イリスと私達が巻き込まれているこの騒動…何か隠していますよね?それが何なのか教えて下さい」


「……驚いたな。君の評価を数段上げねばならないようだ。只の学生にしては鋭い…だが…教えてあげる事は出来ないんだ。教えればイリスは間違いなく……死ぬ」


「……?!!」


「アリア君、キミにこれを…これが今の我々に出来る精一杯だ」


そういってデンゼルが手渡したのは1枚の紙…


「これは?」


受け取って開く…そして…


「…………何故私にこれを?これこそイリスに…」


「駄目だ。それは絶対に駄目なんだ…アリア君、君ならそれが何なのか分かるだろう?もしもイリスが危機に陥ったなら…頼む。今がその時だ、と思ったならば…君ならそれが出来ると信じている」


そう言ってデンゼルは去っていった。


「……」


受け取った紙を丁寧に折り畳んで仕舞うとアリアはため息を吐く。


「私は私に出来る事をするだけ…絶対にイリスを死なせたりするもんか…!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


統合軍総本部"トレイデン"


統合軍の中枢であるこの場に突然の緊急召集で統合軍の将が集められていた。


「まさかバサルのジジイの所から離反者が出るとはな!しかもそれがダリウスとはよぉ!!」


「デリス五月蝿い、静かにして」


「お前もだぜ?マリーネ!!お前の艦隊…たった1機のAFに突破されたって報告されてただろ。こりゃあ責任重大だよなぁ?」


…面倒臭い。こんな男が同僚なんてとても面倒。


「…お前今こいつ面倒だなって思っただろ?」


「それが何か?事実でしょ」


「ちっとは隠せや!……まぁいいさ。今回の召集…俺に指令が出るだろうな…楽しみだぜぇ、ダリウスの野郎は俺が…」


「ダリウスを捕まえるのは俺だ。俺の艦隊から離反したんだ俺が始末をつけるのが道理だろうが」


「…ジジイ、追撃部隊も壊滅させられてよくそんな事が言えるじゃねぇか」


「ありゃあダリウスとは関係無い勢力の仕業だ。どこぞの奴が雇ったとか噂の傭兵じゃねぇか?なぁデリス?」


「…っ!どっからそんな噂が…!俺はそんな馬鹿みてぇに分かりやすくやらねーよ!」


馬鹿じゃろ。それならば少しの動揺すら見せるな。


「…それにな、俺の知らない所で勝手に身内を巻き込んだ馬鹿もいる訳だが…まさかお前らじゃねぇよな??ダリウスが離反した理由…知らないとは言わせねえぞ」


鋭い眼光を突き付けるバサルに二人の雰囲気が一気に引き締められ冷や汗を垂らす。


「まさか…イリスちゃんが関わってるの??」


「…!?おい…そりゃ洒落になってねぇぞ」


二人の反応を見てバサルは雰囲気を和らげる。


「そうだ。ダリウスが離反したのはイリスが統合軍の戦闘艦に乗せられたまま行方不明になっている件から続く上層部への不審からだ。俺やお前たちにすら秘匿されている任務があるみてぇだからな」


「…バサル、それは"私の艦隊"を動かす必要があるんじゃない?」


「マリーネ、それはまだ分からん。だがいよいよ怪しくなってきたら…俺は動くぞ」


「…了解。デリスはどうするの?アンタが一番…」


マリーネの言葉を遮るかのようにデリスが机に拳を叩きつける。


「分かりきった事聞くんじゃねぇよ…何で俺が今の場所に居座ってると思ってやがる…!あの子が巻き込まれただぁ?ダリウスやジジイがいてただ見てただけってか?!……上等だ、俺達第5艦隊は…」


「馬鹿たれ!安易に動くんじゃねぇよ。それより今までダリウスにちょっかい出してたのはお前じゃねぇんだな?」


「いや俺だ!!俺はまだ納得してねぇからな!何でこんな重大な任務をあの野郎に……」


「あっさり白状したわね…そんなに気に入らないの?デリス"おじさん"?」


「俺だってバサルおじ様としか呼ばれてねぇんだぞ!我慢しろ!」


「ジジイと何で同列なんだよ…バサルはお爺様とかで充分だろ!」


「…良い歳した男どもが情けない言い争いしてる。それより…そろそろ時間よ。他の奴らが集まってくるわ」


「…あぁ。どんな話になるのか知らねぇが…」


「首謀者にはキッチリ落とし前はつけてもらうぜ」


「…はぁ。大丈夫かしら…?」


イリスちゃん…ダリウスも無事だと良いけど…


この後始まった統合軍本部での会議…それが後の大戦を引き起こす分岐点となる事態へと発展する事となるのだった……。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ソルシエール、メインエンジン出力安定!ドッキング解除!」


『第2ポートよりドッキング解除。ガイドビーコンに従って発進どうぞ』


「了解、出力30%…ソルシエール発進!」


『ソルシエール、御武運を』


「…行ったか。ラウラ君、例の物の準備を急がせてくれ」


「…はい、しかし社長…」


「君が言いたい事は分かっている。"だが俺達大人がケリをつけなきゃならねえ事だ"…昔言っただろう?」


「失礼しました。ただ…昔の社長には苦労させられましたが。今でこそ丁寧な…」


「…勘弁してくれないか、君の小言は中々私に突き刺さるからね」


「ならば言わせないで下さい。それと…私はどこまでもお供致しますので。お忘れなく」


「それが地獄でもかい?」


「それが地獄でも、です」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


オストローデン内第2居住区14番倉庫…ここに着いたダリウス達は皆唖然としていた。


「ねぇ…私みたいな傭兵を拾ってくれたのは感謝するし、雇い入れてもらった身からすると非常に言いにくいんだけどさ…アンタ達海賊にでもなるのかい??」


「隊長…色々と気になる事はあるんですがね…こいつはなんなんですかい??バサル准将はこれをご存じで?」


ダンの問いにダリウスは分からん。と一言。


「あはは~!これヤバいっしょ!この"マーク"海賊に間違えられても仕方ない、みたいな?さすがリースさんって感じ?」


「こんな場所に戦艦があるのも驚いたが…旧型の艦船タイプの船体に髑髏のマーク…これは…」


驚いていたダリウス達だったが…中へと乗り込んで更に驚くことになる。


「隊長!一通り艦内を調べたんですがね…こりゃとんでもねぇ代物ですぜ?」


「…あぁ、俺も驚いている。ハロルドなんてさっきからあんな調子だぞ?」


ダリウスが指先した先には…


「そんな?!まさか…旧型の見た目に反して性能は現行艦より上なんて!!?…しかも武装に関しては明らかにおかしい…主砲は艦前方に集中配置された大口径3連装衝撃砲3基、艦尾には連装ビーム砲2基…各所に配置されたミサイル発射管に近接防御火器類…主機に至っては幻の"スピットチャージ改"を2基も!?それに良く分からない設備に装甲は…こんな材質見たことがない!!」


「…副長のあんな姿初めてでさぁ」


「…まぁ暫くすれば元に戻るだろう。それより…機体は格納出来たか?」


「俺とフリッカの機体は格納完了しましたぜ、サーリャは今やってるかと。それと…隊長に見せなきゃなんねぇ物が…」


そうしてダリウスはダンと共に格納庫へとやって来たのだが…


「これは…」


格納庫に入ってすぐに目に入ってきたアサルトフレーム…オレンジと赤が混ざりあった塗装の施された機体が駐機状態で佇んでいた。


「こりゃ相当カスタムされてますぜ?フリッカの話じゃ機体に刻まれたシリアルナンバーは"00"だったそうでさ」


"00"……試作機か。


「隊長、コイツを起動してみちゃどうですかい?起動キーはそこにあったこれみたいですがね」


渡されたキーには"ボルケーノ"と刻まれている。


「しかし起動するのか?バッテリーもチャージしてない筈だが…」


「たいちょー!それなら問題ないとおもいまーす!この子…ちょっと違う感じがするんですよ~」


機体のコックピットから身を乗り出したフリッカがそう叫ぶ。


「ふむ、フリッカがそう言うのなら確かめてみるか…こういう時のフリッカは間違いないからな」


ダリウスが軽快な動きでコックピットまで上がるとフリッカはコックピットから出てダリウスと入れ替わる。


「フリッカ、何か分かったのか??」


ダリウスの問いにフリッカは頷く。


「この子…多分ですけどランサーやスピアとは完全に別系統の機体ですよぉ。アサルトフレームって大体元の機体をカスタムするとかだと思いますけど…シリアルナンバーも00だし、何て言うか…それ専用に造られた実験用の機体ぽいんですよねぇ。コックピットにあった資料がこれなんですけど…」


フリッカから渡された紙束には"ディステルガイスト""システム機改良案""携行火器パターン"…"オルカレイコス""多重装甲試作"等の走り書きが見てとれた。


「…リースの筆跡だな。ディステルガイスト…やはりリースはバサル准将の話通り"深紅の死神"だったのか…」


「えぇ…?深紅の死神ですか?」


「あぁ。フリッカはリースの過去を知って何か思う所があるかい?」


フリッカは暫く考え込んでいたが顔を上げると


「別に何とも思いませんね、リースさんは私に優しくしてくれたし、色々な知識を教えてくれた。私…今まで生きてこれたのはリースさんが私にアルテューレを預けてくれたからだと思ってます…それと隊長に引き合わせてくれたのもリースさんだったし!」


「…そうだったな。懐かしいよ」


いきなりリースからフリッカを預けられた時は驚いたが…フリッカとアルテューレは最古参のメンバーだ。戦場でも幾度となく助けられた。


「リースさんが居なくなってイリスちゃんを引き取った上に私も暫くお世話になって…それ以来イリスちゃんは私の妹だと思ってるんです…リースさんが造ったこの子でイリスちゃんを助けましょ?その為にリースさんはこんな船を隠してたのかも知れないですし」


「そうかもな。…というかフリッカ、いつもそういう風にしてればダンもフリッカを子供扱いしないんじゃないか??」


真面目な口調で話すフリッカに面食らっていたダンを指差して笑うダリウスにフリッカはポンっと手のひらを叩く。


「成る程!…でも恥ずかしいんでヤです」


そうか、とダリウスが言うとフリッカは機体から離れていく。


「…必ず起動しますよ。その子はそれを望んでますから」


フリッカの一言にダリウスは頷く。


「不思議な奴だ…昔からアサルトフレームに語りかけていたが…まるで」


アサルトフレームの声が聞こえてるみたいだ。


本当に聞こえてるのならば俺も聞いてみたいものだ……


そう思いながら起動キーを差し込んだダリウスは目を見開く。


『やっと……』


一瞬響いた声に驚くダリウスだったがそれを他所に機体が小刻みに振動しながら唸りを上げて起動していく。


「なんなんだ…さっきのは…いや、それよりもこの機体…!」


『ちょっ!?なんなんだい!そのデタラメな出力のアサルトフレームは!?』


機体を格納していたサーリャが慌てて叫ぶ。


『システム起動…エーテルリアクター正常起動確認……オルカレイコスへのエネルギー供給…確認"ボルケーノ"パイロット登録…完了。起動シークエンスオールクリア』


モニターへと次々に表示されていく情報に驚いていたダリウスだったがすぐにサーリャへ問題ない、と手を振る。


「リース…まさかこんなモノを残していたとはな」


モニターには機体の状態が表示されているが見た限り問題は無さそうだ…しかし…


「コイツの動力はどうなってるんだ?エーテルリアクターなんて聞いた事ないが…」


「ダリウスさんよ、コイツはなんなんだい?シルフィードの計器に訳分からないエネルギー反応が出てんだよ…それも装甲全体がエネルギーの塊みたいな感じさね」


「わからん。だがこれからの事を考えるならこの機体は戦力として戦えそうだ。…だがまぁ一度性能を試してみないと何とも…」


「たいちょー、武装とか色々調べるなら模擬戦でもやりましょ~?」


「それもそうだな…しかしその前に重大な問題がある」


「?」


「この船…どこから発進するんだ??」

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