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あの日見た流星  作者: カルバリン
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第28話 再びの交戦


「くそっ!次から次に…!」


横から突撃してきたスピアをハルバートで叩き切ったニールが悪態を吐く。


『もうすぐラグラスの防衛部隊と合流出来ますからニールさんはソルシエールの護衛を徹底してください!』


「了解!…だけどこれはキツいぜ。今は動きを見せてねぇあの2機…俺じゃ相手にならない腕だった」


ラグラスが目前に迫った段階で急襲してきた敵の部隊の隊長格らしい2機のアサルトフレームは迎撃に出たニールを軽くあしらって後方に下がり、後から来たスピア部隊がニールと戦闘を続けていた。


「本気で落とす気が無いのかしらねーけど…戦闘に加わって来ないのなら助かるな」


更に接近してきたスピアをショットガンの連射で蜂の巣にしたニールはすぐにその場から離れ…離れた直後その場をソルシエールの主砲が通り過ぎて近くにいた敵のスピアを爆散させた。


「最新鋭の戦艦は主砲もやべぇな。これなら暫くは持ちそうだ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「レムレースが直援の位置へと到達、敵部隊は尚も追撃を続ける模様!」


「突出してくる敵機だけを落とせ。その他には2から6番までの右舷副砲で牽制射撃!」


「了解、副砲"カルバリン"順次3秒間隔で射撃開始」


火器管制官の号令と共にソルシエールの右舷側に計8門搭載されている125㎜ビーム砲"カルバリン"が指示された通り2番から6番まで間隔を空けて発射されていく。


「ラグラス防衛部隊から通信!"西エリアに展開していた部隊が急行中、到着まで凡そ5分"と!」


ラグラス…噂で聞いてはいたが防衛する部隊も中々に練度が高い。今のソルシエールには戦力がレムレースしかない以上助かるのだが…それまであの2機が黙っていてくれるだろうか?


『ソルシエール、聞こえますか?こちらレムレース。装備の弾薬が残り少ないんですが…』


「今は着艦する余裕はない。済まないが後もう少しだけ現状で凌いでくれ」


『…了解。なんとかしてみますよ』


「頼む、後もう少しだ。君には無理を強いるばかりで申し訳ないが…」


『いえ!俺が自分で決めた事ですから。…それよりイリスは無事なんでしょうか…?』


「…ラグラスに到着したという連絡は受けているから心配はいらない、今は我々の方が危ないくらいさ」


だがファントムは暫く戦闘出来ない、と報告があったのだが……この部隊の不審な動きを考えると奴らの目的がファントムである可能性もある…先ほど聞いたフロイト技師の話が真実ならば、だが。


「…もし目的の物が出てこないなら…あの2機も仕掛けてくるか…?」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「…おかしいな。何故あの黒いアサルトフレームは出てこない?防衛に出てきている白い奴のみでやれるとでも思っているのか…?」


『違うと思いますが。ラグラスに向かう目的を考えると…あの機体はラグラスに先行している可能性もありますね』


「ジェーン、君に聞いておきたかったんだが…君はあの機体とそのパイロットに何か心当たりがあるんじゃないか?」


『………』


沈黙か。この間の戦闘での反応は明らかに何か知っているみたいだった…依頼人のアルベルにしても同じだ。


確かにあの黒い奴は尋常でない動きをしていたが…あの機体には何がある?アイツを倒した所で俺の気持ちが晴れる訳もない…


「…出てこない以上母艦を制圧するしかない。最新鋭艦相手に突撃なんてやりたくもないんだが…やるしか無さそうだ」


『……レウスさん、ラグラスの防衛部隊が来ます。我々の部隊では少々面倒ですが…どうします?』


はぐらかされたが…防衛部隊は潰す必要があるな。


「俺が敵艦と白い奴をやる。ジェーンは防衛部隊を片付けてくれるか?残っているスピアを全員連れて行って…」


『必要ありませんね。私一人で充分です……では、行きます』


ジェーンがそう言うとバーニアを吹かして防衛部隊の方へと突っ込んでいった後爆発光が迸る。


「ノーマルスピアでよくやる…!」


さて、考えていても仕方ない。俺も行くとするか…!


スロットルレバーを一気に押し込んで加速したシャムシールは前方に展開していた味方スピアを追い抜いて白いアサルトフレームへと迫る。


「俺が白いのを引き受ける!お前らは母艦を制圧しろ!」


「「「へい!!」」」


シャムシールに遅れて残っていたスピアが全機ソルシエールへと攻撃を始める。


「少しはやるようだが…あの黒いの程じゃあない!オストローデンでは逃がしたが…今回は落とさせて貰う!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『各防衛部隊に告ぐ。海賊は現在統合軍所属の戦艦を襲撃中、速やかに排除してください』


「こちら西エリア防衛隊、了解した!敵機の情報を求む!」


通信を聞いて東エリアへと駆けつけた西エリア防衛隊の隊長はそう返すと武装のセーフティを解除する。


『敵機は量産型のスピア12機、形式不明のカスタムタイプ1機、狙撃戦闘仕様と思われるスピア1機……なお、後述の2機に関しては統合軍から要注意機体、との報告が来ています』


「了解した、…全機聞こえてるな?先ずは統合軍の戦艦を助けに行くぞ!」


隊長が駆るアサルトフレームはラグラス防衛部隊用にカスタムされた隊長機専用ランサーでスタンダードな中型のカイトシールドと対AF用アサルトライフルを装備している。

ラグラスの防衛部隊は統合軍の一般兵よりも充実した装備の上に経歴も軍隊上がりという者も少なくないし、今まで攻めてきた者達全てを難なく撃退してきた。


だが…それ故の油断。


コックピット内に響くロックオン警告に対応しようとした隊長は優秀だったのだろう。


「無駄ですよ…!」


その一言と共に撃ち出された対艦ライフルの弾頭は正確に隊長機のコックピットを貫いて爆散させる。


『隊長!?う、撃てぇ!!相手は1機だぞ!』


隊長機を落とされた防衛部隊がジェーンのスピアへと一斉にライフルを撃ち始める。


ラグラスの防衛部隊…手強い相手だと聞いていたのですが…ガッカリですね。


小刻みにスラスターを吹かしながら絶妙に機体をコントロールして弾幕を掻い潜るとターゲットサイトを1機に合わせ…トリガーを引く。また1機落としたジェーンは更に加速してライフルを撃ち続けている敵に肉薄してすれ違い様にブレードを煌めかせると連続で防衛部隊の爆発と断末魔が響き渡る。


「こちらは問題なさそうですよ、レウスさん」


『だろうな、だが油断はするなよ?防衛部隊にはデンゼル社長直属の護衛部隊がいる…彼らはスペシャルだ』


「心配は無用です、終わり次第そちらに…っ!?」


アラートが鳴り響いた直後、ジェーンのスピアが先ほどまで居た場所をアサルトライフルとは比較にならない弾丸の嵐が通り過ぎた。


『どうした!?』


「…あ、あぁ………!」


モニターに映る姿……本体の鮮やかな青に映える肩の装甲に施された赤い狼のパーソナルマーク。


何故…あの機体が……あの機体?…知らない、私はあんな機体を見た事なんて無い………だけど…


『ジェーン!!っクソ!?…すぐにこの白い奴を片付けて行く!それまで…』


通信が切れた事すら頭に入ってこない。ジェーンはモニターに映る機体…ディステルを見た瞬間頭を殴りつけられた様な衝撃を受けていた。


鮮やかな青色の機体を見た瞬間から沸き上がるこの感情……なんだこれは…


レバーを握る手がじっとりと汗をかいている事に気が付いたジェーンは無理矢理意識を戻す。


「くっ!とにかく…今は、アレを…落とす!」


スロットルレバーを押し込み、右足のフットペダルを踏み込むとジェーンのスピアはスラスターを吹かしつつ青い機体の右側へと逃げる。


あの機体は左手にガトリングガンを装備している以上、左側に移動するのは危険だった。


その動きに気付いたのかすぐに青い機体も旋回しながらジェーンを追いかけてくる。


あの武装は危険…あれをレウスさん達の所へ行かせてしまったら味方部隊は壊滅する恐れがある…ならば…


「あの黒い機体といい…何故こんなにも私の心を乱す……!」


振り返りながら対艦ライフルを撃つが青い機体はそれをガトリングガンに装備してある盾を少し動かして受け流し、更に加速してくる。


「距離を詰めてくる?!自ら有利な距離を捨てるというのですか…!」


ジェーンのスピアよりも推力が(まさ)っている青い機体は見る間に迫り、ジェーンは対艦ライフルを肩のマウントへと戻してサーベルを引き抜く。

それに合わせて青い機体も右手に装備した見慣れない無骨な杭を持った武装を構え…


2機のアサルトフレームが交差した瞬間…スピアのコックピットに警告音に紛れて響いた声。


『今度は…逃がさない!ここで…落とします!!』


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