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あの日見た流星  作者: カルバリン
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第21話 気になるデータ


心地よい振動と共にアサルトフレーム特有の駆動音が耳に届く。


「どうかね?一応出来るだけの事はしたのだが…」


アイドリング状態のファントムの腕を上げたりバーニアの展開をしてみると確かに少し動作がぎこちなく感じる部分はあるけど概ね問題無さそう。


「大丈夫だと思います、戦闘の場合はどうなるかは分からないですけど…逃げる位なら問題無いかと」


コックピットから出て近くで端末を操作しているフロイトは頷く。


「今回は戦闘になる可能性は無いと思うがね」


確かに。説明ではラグラスから護衛機が出るらしいし…


「…そういえばこの艦にはシミュレーター訓練が出来る設備があるんですよね?」


「ん?あぁ、イリス君には教えてなかったな。ソルシエールに配属されるパイロットに対して訓練が出来るように私が配備したんだ。レムレースを操縦する為の訓練用としてだ」


へぇ、私は少ししか見てないけど確かにあのレムレースって機体は癖がありそうな感じだったし…


「だが本来のOSより遥かに操作しやすい状態になっている今のレムレースは機体に慣れる為の訓練くらいで大丈夫だろうね、まさかそれをあんな学生がやってしまうとは…私は自信を無くすよ」


アリアに関しては規格外だと思う。

そもそも軍の最新鋭機のOSを組み直して1からシステム構築なんて馬鹿みたいな話だけど…


「アリアはなんというか…天才肌なんだと思います。本人は否定しますけどね」


「まるでリースさんみたいだな、彼女もそんな感じだったよ。まさかアサルトフレームの操作技術まで一流だとは思わなかったが」


苦笑しながらもどこか懐かしむような声音でそう言ったフロイト。


「そんなに凄かったんですか?」


「凄いなんて言葉では足りないさ、イリス君は今正式採用されている機体で1番に性能が良いと言えるアサルトフレームは何だと思うかね?」


1番…だったらやっぱりあれかなぁ。


「ランサーだと思います。機体の拡張性、整備のしやすさ、高度な火器管制システム(FCS)で様々な武装に対応出来るおかげで自由に選択出来るからバリエーションも豊富…機動力も申し分ないし…」


私の答えに満足したのかウンウンと頷くフロイト。


「それを基礎設計したのがリースさんだ。当時は残念ながら彼女が居なくなったので開発は中止になったが…彼女と再び再会した時に知恵を借りて完成まで漕ぎ着けた。…といっても量産出来るレベルまで性能は抑えてあるが…オリジナルである試作機は今も稼働してるぞ」


「もしかして…"ランスロット"では?」


「そう、統合軍のエースパイロットの1人…バサル准将の愛機だ。あの人もリースさんと仲が良かったぞ?彼女がこのファントムを駆って率いた部隊…ナイトメアが所属していた艦隊の司令官だった方だよ」


ランスロットは有名な機体だ、だって私達の通う学院での授業にも出てくるし…何度か学院にも視察に来ていた。


ランサーは確かに見た目に関してはランスロットの面影があると思う。ランスロットは高機動戦闘に特化した機体で射撃兵装はバルカンユニットのみ、腰に装備された剣"アロンダイト"と背中に装備された槍"ガラハッド"で戦う超近接戦闘用アサルトフレームで、それに対してランサーはランスロットから機動力を減らして装甲を増加、武装も流用の利く一般的なライフルやサーベルを装備したランスロットをマイルドにした感じの汎用機だ。


「まぁランスロットを含むエース機は未だに乗っているエースの技量も合わさって戦闘能力が桁違いに高い。…因みにリースさんはその全員をかつて叩きのめしていたぞ?深紅の死神の時も、このファントムに乗っていた時もそうだった。そして…イリス君、君もその素質は継いでいるんだろうと思うぞ」


そう…だったらいいな。

授業で習ったエースパイロット達と互角に戦える様な腕前なら皆を守れる。


「それと、これを渡しておく」


フロイトが手渡してきたのはデータチップだった。


「さっき話していたシミュレーターにインストールすれば訓練相手が追加される。予定ポイントまでまだ暫くかかるからニールと挑戦してくると良い」


訓練相手の追加?…まぁニールとも連携訓練をしないといけないし良い機会かな。


「…ま、所詮はデータ…だが私は君達が勝てるとは思ってないよ。そのデータは限りなく本物に近い偽物だからね」


今はまだ勝てないだろうと思うが…頑張ってみるといいさ、経験は自分を裏切らない。


フロイトさんが予定ポイント付近に来たら呼ぶといってくれたし…ニールとやってみようかな。


それにあんなに自信ありげならどんな相手なのかも気になるし…どうせなら勝ちたいよね?


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