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あの日見た流星  作者: カルバリン
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第15話 一時の安息


戦闘が終了し、被害のチェックを行った結果…航行に支障はないものの深刻なダメージを負った区画も数ヶ所あり、急ピッチで修復作業が行われていた。


ニールはパイロットとして格納庫へと連れていかれたのでアリアとロイが修復作業へ参加することになった。


「じゃあ君達は僕と一緒に第2機関室で作業をしてもらう…と言いたいけど学生だし出来る事は僕達本職の手伝い位かなぁ」


アリアとロイを連れて歩くのはソルシエールの整備班で第3班の班長のハルトという男性で歳も24とアリア達と一番近いという理由でカークス整備長から二人の面倒を見てやってくれ、と頼まれたらしい。


「二人は学校で何を専攻してたんだい?」


「私はAF整備と機械工学を専攻してました!AFの操縦技術は平均より下でしたから同じクラスのイリスと将来的には組むつもりで専攻したんです」


「自分は主に白兵戦闘科です。実家…ではなくただ単にAFの適正も高くないですしアリアみたいに技術関連で優秀という訳でも無かったので」


「なるほど、まぁ学校とは違ってここは本当の戦場だから僕の指示には従ってもらうよ?…大丈夫、無茶な事はさせないから。どちらかと言えば君達の友達…ニール君とイリスちゃんだったかな?彼らの方がよっぽど危険だ」


「「………」」


危険…という言葉を聞いて黙った二人にハルトは続ける。


「でも僕達がやるべき事をしっかりこなしてやれば彼らの危険度も変わる。ソルシエールが撃沈されたら彼らも帰る場所が無くなるからね…出来る事からやっていくしかないよ」


「はい…」


「んじゃ、先ずはその堅苦しい受け答えから変えよう!堅苦しいの苦手なんだ」


「えーっと、分かり…オッケーです!私もあんまり敬語とか得意じゃないんで助かります」


「じゃあ俺も。といっても俺は技術的な話とか出来ないから言われた事をやるだけしか出来ないかな」


二人の返事に頷くとハルトは目的のドアの横にある認証端末を操作して扉を開く。


入った場所は機関室手前にある作業員詰所で、そこにあったロッカーから作業服を何枚か取り出すと二人に渡す。


「サイズが合うものを選んで着替えてね、アリアちゃんはそっちのドアを開けたらシャワールームだからそこで着替えたら良いよ」


二人が選んでいる間に別のロッカーから腰に装着する整備道具ベルトを準備する。


着替えが終わって戻ってきたアリアとロイにベルトを渡す。


「よし、じゃあ行こうか?先に入って作業してる人達もいるから邪魔はしないように僕についてきてね」


何点か注意事項を聞いて3人はエンジンルームのドアを潜った。


「…凄い。これって…バハル型駆動機関四式じゃないですか!?」


目の前には唸りを上げながら稼働する巨大な機関…ソルシエールの推力を支えるエンジンがその存在を主張していた。


「ん?アリアちゃんは詳しいね。でもこれは違うよ…見た目は近いけど中身は別物さ、こいつはバハル社に軍が依頼して開発された最新式駆動機関…正式名称はまだ無いけどね、通称"ファストブルーム"って呼ばれてるよ」


「早い菷?」


「そうだよ、このソルシエールがどこかの言語で"魔女"って意味なんだけど、魔女が移動に使うのって菷でしょ?ソルシエールに搭載する為の新しい機関にはふさわしい名だろうって事でそうなったらしいよ」


本当はまだ軍の機密らしいけど、乗ってる私達には意味が無いから教えてくれたみたい。


「こいつの出力は四式の320000kjを遥かに上回る450000kjでそれが4基搭載されててねぇ、本来のスペック(・・・・・・・)なら海賊ごときには追い付けないんだけど…色々と問題が多いらしくてね、ソルシエール自体急ぎ足での制作だったからエンジンもそれに合わせて問題はあるけど急いでロールアウトしたって訳さ」


それでも巡航速度は今ある軍の戦闘艦より全然速いらしい。


「さて、話は終わり。仕事を始めようか」


「「はい!よろしくお願いします!」」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


アリア達がエンジンルームで作業に入った頃、イリスは格納庫でニールと再会していた。


「イリス!無事だったんだな?!」


勢いで抱きつこうとしたニールを避ける。


「ニールも無事で良かった、アリアとロイは?」


避けられて所在無さげなニールだったがすぐに立ち直り状況を説明してくれた。


「…そっか、二人は別の仕事を任されたんだね。なら今は邪魔しちゃダメか」


「ま、どうせ後から会えるんだし良いんじゃね?アイツらもジークリンデ艦長が来て教えてくれたからイリスが無事だったのは知ってるからな」


「艦長が?」


「おう、戦闘が終わってから俺達の部屋に来てイリスが無事帰還したって教えてくれてさ、それから俺達も仕事以外は自由に中を出歩いて良いって許可を出して貰った」


「そうなんだ、…ってそう!ニール!他の二人には後から言うけどさ!私を助ける為とはいえ無茶しすぎよ!?今回は助かったけど本来なら捕まってたんだからね?!」


「あ、あぁ…ごめんって!あの時はあーするしか無いって思ってさ」


「もしかしたら…あの戦闘で死んでたかもしれないって……そう、思ったら…私は…」


今にも泣きそうなイリスを見て狼狽える。


イリスは多少大人びているが普通の女の子だ、それが人質から戦闘、怪我を負った状態からのまた戦闘…ニールの顔を見て緊張の糸が切れた事で感情が乱れた。


ニールはどうしたら良いのか考え、抱き締めようと近づいた時声がかかる。


「…お二人さんよ、邪魔してわりぃが見えねぇ所でやったほうがいいぞ?馬鹿共が見てるからな」


そういって近くに来たのは整備長のカークスだった。

彼は大声でイリス達を見ていた整備士達を散らすと二人に向き直る。


「邪魔して悪かったな、良いねぇ青春ってのは。ここの奴らはみな独身だからよ、あーいうのは羨ましいんだろうな」


何を言われたのか理解したイリスは顔を真っ赤にしてブンブンと首を振る。


「ち、違います!ニールとはそんなんじゃ…」


「やっぱそう見えます?いやぁ…」


ニールがにやけてそう言った瞬間、イリスはニールへ強烈なボディブローをお見舞いした。

イリスは操縦科だが白兵戦闘科目も成績上位なので身体能力は高く、格闘技能も高い。そのイリスのボディブローが綺麗に決まったニールは崩れ落ちる。


「……馬鹿!もう知らない!!」


イリスが怒って去っていった後、カークス達整備士が集まって来て


「おっかねぇ…あんな綺麗なフォーム見たことねぇよ」


「大丈夫かー?生きてるか?」


「ぶはは!可愛い女の子とのイチャイチャを見せつけた罰だなこりゃ」


と、好き放題だった。


「ぬぐぐ、相変わらず強烈だぜ……ぐふっ」


気絶したニールを見たカークスが肩を竦める。


「誰か、バケツに水汲んでこい!これからレムレースの調整だったんだぞ!叩き起こせ!」


カークスの無慈悲な一言でその後びしょ濡れで作業をすることになったニールだった。


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