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あの日見た流星  作者: カルバリン
12/43

第11話


『また湧いて来たのね…ゴミ共がぁぁぁぁ!!』


お前が、お前がデルフィーノを!!


あの深紅の機体…忘れもしない。


『邪魔をするなら…死んでよぉ!!!』


深紅の機体がビームソードを抜き払って接近してくるのに合わせて自分もサーベルを抜き放つ。


『お前達が!私の大事な人も!子供も!奪ったのだから復讐して何が悪い!!』


『俺の親友を殺したのはお前だ!アイツは良い奴だった…!皆から慕われて…』


交差する2機のAF。


『許さない…私はお前達の全てを許さない。このディステルガイストもお前達を殺し尽くすまで止まらない…!止まれない!』


深紅の機体が振ったビームソードはサーベルごと切断してしまう。

すぐにサーベルを投げ捨てライフルに持ち変えトリガーを引く…連続で発射された対AF用徹甲弾が深紅の機体へ次々と着弾した。


『やったか…?』


いくら重装甲といえ徹甲弾をあれだけ喰らえば無事ではすまない。


『まだ…まだよ…そうでしょう?…まだアイツは生きている……何でアイツが生きていてダンと子供は死んで……アアアアァァァァァ!!!』


煙が晴れて見えた先にはほぼ無傷の深紅の機体…通信機から聞こえてくる声は先程から明らかにおかしい…


『ねぇ?教えてよ?何であの男は生きている?今も息をしてる?ねぇ!?』


狂気、その一言。


『狂ってやがる…さっさと…死ねよ!お前がデルに出来る償いはそれだけだ!』


『…殺す?私を…?それは無理、だって私があなたを殺すもの!!』


深紅の機体が背中からスライドしてきた装備を構えると同時に変形しリニアライフルの様な形になった。


『まだ死ねない。アルベールを八つ裂きにして粉々にして生きている事を後悔させてから殺すまでは!』


大丈夫だ、ライフル弾は避ける事が出来る。


しかし…放たれたのは赤い奔流…戦艦クラスが放つビーム砲より更に太いビームだった。


『うぉぉぉぉぉぉ!?何だよこれは!!?』


急制動をかけて回避するが……鳴り響くアラート、右腕を消し飛ばされ機体が吹き飛ばされる。


『まだ…』


咄嗟に残った左腕で予備のサーベルを引き抜こうとしたが…


『無駄よ!!』


目の前へ迫った深紅の機体がビームソードで左腕を切り飛ばし、残った胴体を両断する。


『あはは!あなたを殺してもうすぐ終わる!あぁ…もう少し、もう少しで……私も……あはは!!行くよ!ディステルガイスト!私の恨み、あなたの恨み…晴らしにさぁ!!』


狂った叫びを聞きながら破壊されていくモニターに映された光景…焼けて半分が溶けたフェイスガードの下はAFの頭部フレームが剥き出しでさながら骸骨のようで……


『はは…エン…ブレムも…し…にが…み……かよ』


最後に目に入ったのは肩に描かれた死神が首を苅る様を描いたエンブレムだった……


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「っは!!?…………夢か」


嫌な夢だ。

あんな昔の夢をみるとは…


「あの黒いAF…あの時の死神と似ていたな。アイツのせいで悪夢を見るとは」


移動中の仮眠の筈だったが…予定外の戦闘で疲れていたらしい…時計を見れば仮眠に入ってから既に五時間も経っていた。


オストローデン襲撃は失敗、奪取するべき標的は戦艦、AF共に奪取出来ず…


「想定外の出来事が多すぎだ」


『レウス殿、至急ブリーフィングルームまでお越しください』


まぁ、恐らく今回の失敗に関してだろうが…この状況で文句は言わせない。

依頼を受けるにあたって情報がここまで食い違うなどあってはならない事だ…海賊共の情報だから細部は食い違う事もあるだろうと覚悟はしていたが。


ブリーフィングルームに到着すると待っていたのはこの艦の艦長で宇宙海賊団ローレライの頭目バースだった。


「レウスさんよ、俺が言いたい事は分かってるな?」


「さてな。今回の依頼に関しての事なら文句は受け付けん」


「…テメエ、依頼を失敗しておいて…」


「なら言わせて貰うが…情報では奪取対象のAF2機はどちらも稼働出来ない状態だと聞いていたが2機共に動いていた。更にオストローデン内にはレッドライトニングの部隊が展開して追撃を受け、レムレースを捕獲出来る段階まで追い詰めたにも関わらず貴様の無能な部下がそれを台無しにして返り討ち…ここまでで何か言いたい事はあるか?無いなら契約は破棄だ」


いつでも抜けるように腰のガンホルダーに手をかける。


「こっちも想定外だった、だが部下を何人も失った挙げ句に失敗しましたじゃあこっちも納得できねぇ」


「呆れて物も言えんな…部下が死んだのは貴様らの練度の問題だろうが。おまけに俺は貴様らの要請があったから自分の機体で出撃出来なかったんだぞ?そんな不利な状況でも残りの団員共を回収してきたんだ感謝されはしても文句を言われる筋合いは無い」


まだ文句を言うなら本気で依頼を破棄するか。と決めた時、ブリーフィングルームのドアが開く。


「そこまでにしてはどうかね?バース殿、黒狼殿は十分働いた…いや十分以上に働いたと私は思うのだがね。黒狼殿もあまりバース殿を責めてはいけない、彼も大事な部下を失って冷静では無いのでしょう」


ブリーフィングルームに入ってきたのはどこかの貴族かと思える雰囲気を纏っていた。

綺麗に撫で付けオールバックにした髪に軍服を思わせる服…貴族、にしては控えめだが…問題は本人よりも後ろに控えている護衛だな。


オールバックの男の後ろに立っている女が放つ雰囲気がヤバい…金属の仮面を着けた青髪の女だがこの部屋にいる誰よりも死の雰囲気を纏ってやがる。


「…失礼、黒狼殿とは初対面だったね?私はアルベルと申します…訳あって家名は名乗れませんがね。こちらの女性はジェーンです私の護衛でとても優秀な女性ですよ」


紹介されて少し頭を下げるジェーンだが全く隙がない…厄介な女だ。


「アルベルさん、今回は失敗しやしたがもう一度襲撃をかけますんで次こそは必ずご依頼の件を…」


「勿論、期待していますよ?…ふむ、部下を多数失ったのでは戦力が心許ないでしょう…今回はこちらのジェーンも参加させてはどうですか?」


「俺は構わない、どのみちこの艦に残っている戦力ではあの新型艦を落とすには厳しいだろうからな」


「…癪だがレウスの言う通りだ、残った戦力だと余裕が無い。アルベル殿のご厚意に感謝します」


「いえいえ、私としても手に入れたい物ですから。…私は自分の艦へ戻りますのでジェーン、後は頼みますよ」


「分かりました、マスター」


凛とした声が響く。…だがこの声…何処かで…


「…よろしく、俺はレウスだ」


手を差し出すと握り返してきたが、義手…か?


手袋をしていて気がつかなかったが握ると金属の様な感触があった、義手にしては動きが良すぎる気がする。


「よろしくお願いします、レウスさん」


「………」


「なんですか?」


「いや、普通に喋るんだな…と」


見た目や雰囲気から無機質なイメージだったが意外と意志疎通は出来るらしい。


「意味が分かりません」


「いや、気にしないでくれ」


それからはバースと打ち合わせをして格納庫へと向かう。

今回は自分の機体で出撃するからだ。


「…待たせたな、やはりお前が一番だ」


目の前に鎮座するのは愛機シャムシール。


昔派手に壊されたがこいつのお陰で生き残ったと思ってずっと改修に改修を重ねて使い続けている。

シャムシール型は第2世代のアサルトフレームでスピアよりも機動性、射撃能力、格闘能力が平均的に強化された機体だ。

スピアもそうだが基本AFは個人の趣味や趣向、運用の方向性で様々なカスタムがあり、見た目は型遅れでも中身は別物なんて事はざらにある。このシャムシールもそれだ、見た目はほぼ原型だが中身は今の第3、第4世代型に劣らない性能になってる。


「…良い機体ですね、大事にされているのが良く分かる」


後ろから声がかかる…そこに居たのはジェーンだった。


「…そりゃどうも、あんたも出撃するのだろ?自分の機体の所に行かなくて良いのか?」


全く気配を感じさせずに背後に来た事に対する抗議も含めてぶっきらぼうに言い放つ。


「私は…アルベル様からの指示でアレに乗る予定です」


ジェーンが指を差した先には海賊共のスピア…しかもあれは何の改造もしてないノーマルのスピアだ。


「…正気か?あれは何の改造もしてないノーマルだぞ?」


「命令ですので。武装さえあれば問題ありません」


「…それで良いなら良いが…足を引っ張ってくれるなよ…」


「善処します」


良く分からん女だ。だが話していると何故か心がざわつく。


「…お前とは何処かで会ったことがあるか?」


「いえ、無いと思いますが…分かりません」


???


「無いなら無いと言えばいいだろ」


「…そうですね。無いでしょう…私の記憶(・・)に貴方は居ませんから」


…変な女だ。


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